僕は、常々思ってることですが、アーティストは、固定化されたイメージを嫌うものだ。それは、自らの成長を止めることにつながっているから。
ピカソと言えば、一般的にはキュビスムのイメージが強いと思います。しかしながら、青の時代やバラ色の時代の20代に描かれた作品が好きな美術ファンが多く存在します。
僕も青の時代のピカソが一番好きで、その写実的な技法の中にある深い思想性に惹かれる人も多いかと思います。
今回愛知県美術館で開催されいる「ピカソ、天才の秘密」は、絵画の革新と言えるキュビスム以前のピカソの少年期から青年期の青の時代、パリでの画家たちに交流による花ひらくバラ色の時代の作品を中心にした、ピカソ前期にスポットを当てた初の展覧会です。
美術教師の父の元で薫陶を受けたピカソの少年期のデッサンなどの作品は、細緻な描写力と主題から垣間見えるセンスの良さは天才の片鱗がうかがわれます。
貧しき者たちへの悲哀の中に包み込むよう青の時代の作品は、ピカソが重い病気での静養と親友の自殺など、青春時代に味わったであろう苦悩の日々の中で、同じ苦しみを味わう貧しき者たちへの悲哀と慈愛を共有するように青の画面の奥に包み込むような温かさを感じ取れます。
そして、パリに渡り集合アトリエ洗濯船での若き画家たちとの交流の中で才能が一気に開花したバラ色の時代では、一転して薄紅を帯びた明るい画面と人々の息遣いを感じる情景へと変化し若いピカソの情熱があふれています。
ピカソのキュビスム以降は、画風の変遷はあっても描線の簡略がなされ、そのことがギネスでも記録されている多作の巨匠となったのではと個人的には思います。
今回の展覧会は、前期の時代の画風の確立した青とバラ色の時代があって、キュビスム以降のピカソの革新と創造がはじまったのだと、今回の展覧会は語っていると思います。