路地裏のバーのカウンターから見える「偽政者」たちに荒廃させられた空疎で虚飾の社会。漂流する日本。大丈夫かこの国は? 

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【社説】:沖縄慰霊の日 悲惨な歴史、共有したい/06.24

2021-06-30 06:49:55 | 【終戦・敗戦・第二次世界大戦・旧日本軍・広島、長崎原爆投下・原水爆禁止

【社説】:沖縄慰霊の日 悲惨な歴史、共有したい/06.24

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:沖縄慰霊の日 悲惨な歴史、共有したい/06.24 

 沖縄はきのう、戦没者を追悼する慰霊の日を迎えた。太平洋戦争末期の沖縄戦では、日米合わせて20万人以上が犠牲となり、沖縄県民の4人に1人が命を落としたとされる。

 沖縄は新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言下にある。追悼式は昨年と同様大幅に縮小された。

 集まることが難しい状況が続く一方、沖縄戦を体験した人たちは高齢化し、年々減り続けている。悲惨な戦争の記憶を語り継ぎ、非戦の誓いを新たにすることが、私たちの責務である。

 玉城デニー知事は追悼式で、「沖縄戦の実相と教訓を次世代に伝え続け、国際平和の実現に貢献にできる島を目指す」と述べた。宮古島市の中学2年生上原美春さんは「平和の詩」を朗読し、「過ちを繰り返さないよう、未来に伝えつなぐことが今を生きる私の役目」と訴えた。

 一方、菅義偉首相はビデオメッセージで「沖縄の方々には米軍基地の集中による大きな負担を担っていただいている。この現状は何としても変えなくてはならない」と述べた。だが、この言葉が、沖縄の人々の心にどれだけ響いただろうか。

 76年前、沖縄は本土防衛の捨て石にされ、戦後も27年間にわたって米軍の施政権下に置かれた。米軍が次々と土地を強制収用し、国内の米軍専用施設の7割が集中し、現在も県民を苦しめている。

 多くの県民の反対を押し切る形で、米軍普天間飛行場(宜野湾市)の移設に伴う、名護市辺野古沖への新基地建設を強行している。

 菅氏は官房長官時代の2015年、当時の翁長雄志(おなが・たけし)知事との協議の場で「私は戦後生まれなので、(沖縄の歴史は)分からない」と言い放ったという。沖縄の歴史や県民の思いを踏みにじるような政権の姿勢は看過できない。

 辺野古の新基地建設では、許しがたい計画が持ち上がっている。軟弱地盤を改良するために使う土砂の採取地に沖縄本島南部を加えたのだ。沖縄戦では、日本軍の撤退に伴い激戦地となった。海岸線には、住民が逃げ込み命を落としたガマと呼ばれる自然壕(ごう)が点在し、多くの遺骨が眠っている。

 その土砂を県民の多くが反対する新基地建設に使おうとする無神経さにはあきれるしかない。県民から激しい怒りと反発を買うのも当然だ。

 国が理不尽な態度を改めない限り、沖縄県民の国への不信感が拭い去られることは決してないだろう。

 ヒロシマやナガサキと同様に、沖縄の地上戦を体験した語り部は高齢化している。その記憶の継承が課題となっている。若い世代に歴史を学んでもらうことが重要になる。慰霊の日のさまざまな行事は、重要な役割を果たしてきたが、コロナ禍の影響でできなくなった。

 沖縄戦に動員された女子学徒隊の被害を伝える「ひめゆり平和祈念資料館」(糸満市)などの施設もコロナ禍の影響で来館者が激減し、苦しい運営を強いられている。かつてない事態と言えよう。

 来年は沖縄の本土復帰50年を迎える。沖縄の人々が味わってきた痛みが私たちの痛みとなるよう、幅広い国民が沖縄と思いを共有できるようにしたい。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2021年06月24日  07:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【天風録】:一碁一会

2021-06-30 06:49:50 | 【社説・解説・論説・コラム・連載】

【天風録】:一碁一会

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録】:一碁一会

 米大リーグの大谷翔平選手には及ばぬものの、日本の囲碁界にも「二刀流」がいる。24歳の一力遼(いちりき・りょう)二冠だ。いま最も勢いのある注目の棋士のもう一つの顔は、駆け出しの新聞記者である▲東北の地方紙、河北新報の創業家に生まれた。新聞社に入社した昨年、あと一歩で届かなかった七大タイトルのうち碁聖と天元を手にした。同紙は碁聖戦の主催社の一つ。「碁聖を取って自分で自分に賞状を渡す」が子ども心に抱いた夢だったとか▲同紙と中国新聞セレクトなどに囲碁のコラム「一碁一会(いちごいちえ)」を書くが、いまは囲碁中心だ。「両方やることで自分を高める」と覚悟を決めて、飛躍した。あさって、初防衛戦となる碁聖戦5番勝負の第1局に臨む。舞台は倉敷市真備町である▲町名の由来でもある遣唐使の吉備真備(きびのまきび)は、囲碁を大陸から伝えたとの説もある。その名を冠した大会も開かれている。真備は学者と政治家の「二刀流」で活躍した。不思議な縁を感じる▲3年前の西日本豪雨で真備町は3割が浸水被害を受け、いまも生活再建の途上にある。挑戦者の井山裕太棋聖は史上初の七冠を達成した強敵だ。ワクワクする好勝負で、「囲碁のまち」の復興を後押ししてほしい。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】  2021年06月24日  07:01:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:五輪まで1カ月 誇れる大会にできるか/06.23

2021-06-30 06:49:45 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説】:五輪まで1カ月 誇れる大会にできるか/06.23

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:五輪まで1カ月 誇れる大会にできるか/06.23 

 東京五輪・パラリンピックの開幕がいよいよ1カ月後に迫った。新型コロナウイルスが世界的に流行する状況下で迎える五輪だが、機運も少しずつ高まってはいるようだ。

 多くの競技で日本代表選手が続々と決定している。各国選手団も事前合宿に来日し始めた。

 だが国民の盛り上がりはいまひとつと映る。これほど中止や延期を望む声の高い五輪がかつてあっただろうか。誇れる大会にできるかどうか疑問だ。

 各国の選手団にも事前キャンプを中止するところが相次いでいる。自治体側から中止を申し入れたケースもある。

 そんな中、政府や大会組織委員会、国際オリンピック委員会(IOC)などの5者協議が、五輪会場の観客数上限を原則的に定員の50%以内で最大1万人とすると正式決定した。

 「無観客が望ましい」と、専門家が提言したにもかかわらずである。「安全安心の大会」が本当にできるのだろうか。

 観客数を制限するというが、実際にはそれを超える人が集まる会場も出てきそう。IOCや五輪スポンサーなどの関係者は「観客ではない」として、別枠にするため。つまり多額の協賛金を出すスポンサーなどの関係者は「特別扱い」するというのだ。五輪が商業イベントに成り下がっていることと、その弊害を如実に示している。

 会場での酒類販売も認める方向で検討されていたという。感染防止のため観客に「直行直帰」を要請しながら、感染拡大を招きかねない。アルコール系飲料のスポンサーへの配慮か。ちぐはぐ感が否めない。

 各国選手団など海外からのウイルス流入に、政府は厳重な対策を講じるという。だが早速、対策の緩さを露呈した。

 来日したウガンダ代表選手団1人が成田空港でのPCR検査で陽性と判明した。感染者が出たことは仕方ないが、空港検疫で陰性だった残り8人について濃厚接触者かどうかの判断がされないまま大阪府の事前合宿地へ移動した。こんな体たらくで水際対策が十分とは言えまい。

 選手団などの行動範囲を制限し、管理するというが、徹底できるのか。合宿地や会場の周辺住民は不安に違いない。

 問題続きで国際社会から冷ややかに見られてきた東京五輪。招致の際、当時の安倍晋三首相は福島第1原発の汚染水問題を「アンダーコントロール(管理下)」だと強調して批判された。

 そのほか大会エンブレムの無断転用問題や新国立競技場の建設計画見直しがあった。招致を巡る贈賄疑惑で日本オリンピック委員会(JOC)会長が退任し、開会式の演出で不適切な提案をした責任者も辞任。森喜朗元首相は女性蔑視発言で組織委会長を辞任した。

 1年延期を決め、「コロナに打ち勝った証しとして完全な形で開催する」と前首相の時から強調してきたが、実際は程遠い。

 それでも菅義偉首相は五輪開催を政権浮揚につなげたいらしい。だが盛り上がらない原因は五輪開催の是非やコロナ対策を問われても、はぐらかし、答えずにきた姿勢にある。

 アスリートが躍動し、感動を呼ぶ五輪へ、1カ月で問題点を払拭(ふっしょく)する必要がある。まずは国民に向け、首相が開催の意義や感染対策を語るべきだ。 

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2021年06月23日  06:37:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【天風録】:五輪1カ月前の今昔

2021-06-30 06:49:40 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【天風録】:五輪1カ月前の今昔

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録】:五輪1カ月前の今昔

 北海道で折り返した聖火リレーは、きょうから静岡県、東海道に飛ぶ。だが、ワクワク感に火をつけるはずだった「導火線」は、不運にも忘れられたかのようである。開幕1カ月前に、これほど不振をかこつとは▲57年前にあった前回の東京五輪では聖火リレーを始めた日が1カ月前だった。その日、本欄が取り上げた話題は「交通戦争」。マイカーブームで犠牲者が毎年1万人台に乗り、交通禍の方がよほど関心事だったようだ▲他の紙面も意外なほど、お祭りムードはうかがえない。むしろ戦後の影に気付く。沿道で日の丸の小旗が打ち振られる聖火リレーの光景に、同じようにして戦場に送った戦時の行列がよみがえったと書く記者までいた▲半世紀ほど時計の針が進んだ今回は、新型コロナ禍という暗雲が垂れ込めている。犠牲者も時々刻々、増えている。米国の大学によると、死亡者数の累計は世界全体で、きのう午後の時点で390万人に迫りつつある▲五輪の開会式まで残り30日。あと62日でパラリンピックも開幕を迎える。残日計が進めば、期待も高まってくるだろうか。感染を巡る、選手のヤキモキ、ハラハラの種はせめて取り除いてやりたいものだが。 

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】  2021年06月23日  06:38:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:「女性政治参画」法改正 追い風生かし障壁崩せ/06.22

2021-06-30 06:49:35 | 【女性が輝く社会・女性の社会参画・女性差別・女性を取り巻く諸問題】

【社説】:「女性政治参画」法改正 追い風生かし障壁崩せ/06.22

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:「女性政治参画」法改正 追い風生かし障壁崩せ/06.22 

 政治分野における男女共同参画推進法が改正された。女性議員を増やすため、セクハラやマタニティーハラスメント(マタハラ)防止対策が、国や地方自治体に義務づけられる。

 世界経済フォーラムの男女格差報告によると、日本は政治参画分野で156カ国中147位と国際的にも立ち遅れている。今回の改正を政治分野のジェンダーギャップ解消に向けた「追い風」にしなくてはならない。

 2018年に超党派の議員提案で成立した推進法は、国政選挙や地方選挙の候補者数を「できる限り男女均等」にするよう各政党に促す。しかし国会議員の女性比率は衆院で9・9%、参院で23%にとどまる。都道府県議会では11・5%、市区町村議会も15%に満たない。

 次期衆院選の立候補予定者を見ても、自民党で約9割、立憲民主党で約8割が男性で推進法が目指す「均等」には程遠い。

 今回の改正では、セクハラやマタハラを防ぐため議員への研修や、候補者の相談体制整備などの対策を、国や自治体に義務付けた。ハラスメントは、女性が議員活動や選挙活動を続けるのを阻む壁の一つとされる。加害者が有権者や支持者の場合、被害を公にしづらく、泣き寝入りするケースも多いようだ。

 地方議会の女性議員を対象にした内閣府の調査によれば、約6割が有権者らから何らかのハラスメントを受けた経験があった。特に目立つのが、性的な言動やネット中傷である。

 調査では、女性が出席しにくい議員活動として宿泊を伴う出張や夜の懇親会なども挙がった。ほかにも供託金や選挙運動に費用がかかることや、家庭や仕事との両立が難しいことなど壁は複数ある。女性の政治参画を阻む要因を丁寧に点検し、環境を整える必要があろう。

 そうすることで、性別や財力にかかわらず、社会を構成するあらゆる立場の人の政治参画を促すことにつながるのではないか。なり手不足が言われる地方議会にとっても、解決の糸口になるはずだ。

 改正法は政党に対し、ハラスメント対策に加え、候補者の選定方法の改善や人材育成など自主的な取り組みを求めている。

 ただ、これで女性議員が増えるかどうかには疑問が残る。改正に当たり、超党派の議員連盟は政党ごとに女性候補者数の目標を公表させる規定も検討していたが、結局見送った。衆院選を控え、及び腰の政党があったという。選挙の際にこそ取り組まず、いつ増やすのだろう。

 無論、数さえ増やせばいいのかとの見方もある。女性というだけで議員になられては困るという懸念だろう。だが適性が問われるのは男性も同じである。

 社会の半数を占める女性の声を政治に反映するためには、男性が圧倒的多数を占めている政策決定の場に女性議員を増やし、一般社会と同じ均等な状態に近づける必要がある。女性が増えれば、男性なら気付きにくい「生理の貧困」のような問題に、政治が目を向けることにつながるのではないか。

 今回の改正にとどまらず、強制力のある規定や、候補者や議席の一定数を女性に割り当てる「クオータ制」の導入なども検討すべきだろう。女性の政治参画を阻む分厚い壁を壊すには、制度の後押しが不可欠だ。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2021年06月22日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【天風録】:夏至の影は短くて…

2021-06-30 06:49:30 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【天風録】:夏至の影は短くて…

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録】:夏至の影は短くて…

 一年のうち最も夜が長い冬至にはカボチャを食べ、ゆず湯に漬かる。一方、同じ二十四節気なのに、最も昼が長いこの日ならではの風習は、不勉強にして聞いたことがない。きのうの夏至である▲昔から田植えの農繁期に当たり、農家はそれどころではなかったようだ。ほぼ10日後の半夏生(はんげしょう)でひと息つき、豊作祈願のタコを食する地域もあるらしい。なぜかわが家では、7月下旬の夏祭りまでお預けだったけれど▲梅雨の晴れ間が広がったきのう、子どもの頃の遊びも思い出した。影踏み鬼。一年で最も天高く太陽が昇る分、影は短く、鬼から逃げ回るには格好の季節である。影が伸び切って薄れる日暮れまで遊ぶと親から叱られた。「何時だと思ってるの」▲1人置きに座れば隣人の影を踏むこともない―。東京五輪の観客数上限がきのう、会場定員の半分以内で最大1万人と決まった。無観客を検討するよう促してきた専門家の懸念も、いずれは影を潜めると踏んだようだ▲さらに五輪のスポンサーたちは、上限とは別枠の関係者扱いで開会式に入場できるという。夜間のセレモニーでもあり、影というよりはむしろ、商業主義が生んだ「陰の観客」とでも呼びたくなる。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】  2021年06月22日  06:00:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【社説】:医療的ケア児 支援を社会の「責務」に/06.21

2021-06-30 06:49:25 | 【医療・病気・地域・オンライン診療・診療報酬・熱中症・薬価・医療事故・医療過誤】

【社説】:医療的ケア児 支援を社会の「責務」に/06.21

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:医療的ケア児 支援を社会の「責務」に/06.21 

 人工呼吸器の装着や、たん吸引などを日常的に必要とする「医療的ケア児」が健やかに学べてこそ、多様性を尊重する社会と言えるのではないか。

 医療的ケア児や家族に対する支援法が今月、成立した。2016年に改正された児童福祉法に医療的ケア児が記載されて5年。超党派の国会議員グループが議員立法としてまとめた。

 国や自治体の対応を児福法は「努力義務」としていたが、支援法は「責務」と明記。罰則や規制はないが、社会全体で適切な対応を取るよう求めている。

 厚生労働省の推計では、対象の子どもは約2万人。この10年間でほぼ倍増しているという。医療の進歩で、病気や障害のある子どもの命が救えるようになったことが背景にある。

 ただ支援体制は十分ではなかった。担い手はほぼ母親。ケアを断られることも多く、全てを犠牲にして、わが子を守らざるを得ないケースも少なくなかった。子どもたちが自ら望む教育を受けられ、ケアする家族の負担が軽減できるよう、支援法の成立を機に、受け皿の整備を急がなければならない。

 必要とされるケアは多岐にわたる。胃に管を入れての栄養補給や人工呼吸器の使用、気管切開部の管理などである。重度の障害が複数あり、在宅で学ぶ子どもがいる一方で、酸素吸入すれば健常児と変わらない学校生活を送れる子どももいる。しかし自治体間では情報把握や意識に大きな差があるのが実情だ。

 山口県は2年前、福祉部門が学校教育部門、市町村と連携して調べ、20歳未満の対象の子どもが150人いることを突き止めた。実態調査もし、たん吸引と経管栄養をほぼ半数が受け、日中を自宅で過ごす子どもが半数であることも分かった。

 一方、広島市は対応するプロジェクトチームを昨年度に立ち上げたが、対象者がどれだけいるかの情報共有も「これから」という。未就学児が福祉部門、就学後は教育部門と窓口が分かれ、組織横断的なチームなのに縦割り行政の弊害を抜け出せていない感が強い。

 現実は過酷だ。山口県の調査では、学校や通所支援事業所など、希望する場所で日中を過ごせないと答えた子どもが4割に上る。「対応できる職員がいないため」が理由の半数を占める。「サービスを提供してくれる事業所がない、少ない、遠い」は6割近かった。3分の1が「医療的ケアが必要なことを理由にサービス利用を断られる」ケースに直面している。

 母親など介護を担う人も同様だ。半数以上が1日6時間に満たない睡眠しか取れず「就労したいが介護のためにできない」人も半数近くになっている。

 子どもたちの命を預かることに、学校や施設が及び腰になるかもしれない。ただ、支援のための医療技術は進歩している。受け入れる側が意識を変え、知識や技能の習得を重ねるよう求めたい。政府や自治体による財政的支援や、必要な人員の確保なども必要になろう。

 教職員たちが行う「医行為」に柔軟に対応する仕組みも不可欠だ。クラスメートにも医療的ケア児との接し方をしっかり教えなければならない。

 支援法の対象は子どもたちに限られている。成人後の支援策の検討も忘れてはなるまい。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2021年06月21日  06:51:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【天風録】:番狂わせ

2021-06-30 06:49:20 | 【外交・外務省・国際情勢・地政学・国連・安保理・G7サミット・G20】

【天風録】:番狂わせ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録】:番狂わせ

 番狂わせで当選すると「トンデモ発言」を繰り返した。イラン大統領を2005年から8年間務めたアハマディネジャド氏も、その一人だろう。極め付きは、ナチスのユダヤ人大虐殺は欧米がでっち上げた、というものだ。そんな暴言で国際社会をかき乱した▲その二の舞いを踏まないか。同じ反米保守強硬派のライシ師が次の大統領に選ばれた。ただ今回は最高指導者ハメネイ師のお墨付きらしい。自らの後継含みで出来レースをお膳立てしたようだ。圧勝にも意外性はない▲ライバルと目された穏健派や改革派の有力者は事前審査で軒並み失格になった。しらけた若者らがそっぽを向くのも無理はなかろう。投票率は50%を切り、過去最低に▲米国のトランプ前政権がぶち壊した「核合意」に薄日が差してきたのに、再び暗雲に覆われかねない。敵対を続けるイスラエルは即座にイランを非難した。「ハメネイ氏の実質的指示で史上最も過激な大統領を誕生させた」と。もともときな臭い上、新たな火種で中東はどうなる▲ライシ師の就任まで40日余り。穏健派大統領のうちに、米国と核合意を結び直せるだろうか。そんな「番狂わせ」なら、国際社会も歓迎だろうに。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】  2021年06月21日  06:52:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【社説】:五輪観客「1万人」 リスクをもっと顧みよ/06.20

2021-06-30 06:49:15 | 【感染症(1類~5類)・新型コロナ・エボラ・食中毒・鳥インフル・豚コレラ】

【社説】:五輪観客「1万人」 リスクをもっと顧みよ/06.20

『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【社説】:五輪観客「1万人」 リスクをもっと顧みよ/06.20 

 政府は、東京五輪・パラリンピックの会場に入れる観客数を上限1万人とする方針だという。新型コロナウイルスの感染拡大リスクをどれほど考慮した上の数字なのか。

 「無観客が望ましい」。政府の新型コロナ対策分科会の尾身茂会長らが、そんな提言を提出したばかりでもある。

 五輪成功を政権浮揚につなげたい思惑が、菅義偉首相にはあるのかもしれない。感染リスクと、てんびんにかけるようなことではあるまい。

 きょう、緊急事態宣言が解除される。しかし、感染の「第5波」が到来し、五輪開催中に再宣言を出す事態になるという専門家の試算もある。すでに首都圏では人の流れが増加しており、7月に感染が再拡大する恐れもあるという。

 五輪の開催、観客の有無や規模が、国民の生命を脅かしかねない。専門家の指摘を重く受け止め、考え直すべきだ。

 観客数の上限はあす、政府や東京都、国際オリンピック委員会などの5者協議で正式決定される。宣言とまん延防止等重点措置の解除後は1カ月程度、大規模イベントの観客数は定員の50%以内であれば1万人が上限となる。その目安に合わせた決定ということらしい。

 無観客としないことについて、政府はプロ野球やJリーグの事例を挙げ、クラスターが発生していないことを強調する。だが専門家の提言にあるように、五輪は規模が全く違う。

 多くの会場で一斉に競技がある上、夏休みやお盆の時期とも重なる。観客を入れるにしても、「より厳しい基準が必要」とする専門家の指摘はうなずける。ほかにも、観客は開催地の人に限り、感染拡大の予兆があればすぐ無観客にすることなどを求めている。いずれも、耳を傾けて当然の内容である。

 専門家の提言は当初、開催の有無も含めて検討を求めるはずだったという。ところが、先進7カ国首脳会議(G7サミット)で菅首相が開催を表明したため、開催を前提とする内容にせざるを得なくなった。

 開催ありき、観客ありきで進めてきた菅政権の姿勢には、不信感が拭えない。なぜG7サミットよりも先に、国民に対して開催の理由や感染抑止策を説明しなかったのか。

 都合のいい時だけ、専門家に助言を求める姿勢も疑問である。提言を出すという尾身氏の意向に閣僚は冷ややかな反応を示し、提言の前日には首相が観客を入れることを明言した。五輪開催に水を差されることへの警戒感から、動きをけん制し、機先を制したようだ。

 パンデミック(世界的大流行)という異常な状況下の五輪となる。専門家を政治利用している場合ではない。万が一、国民の生命や健康を危険にさらし、国内外で感染再拡大を招けば、誰が、どう責任を取るのか。

 最悪の事態を避けるため、提言を尊重し、早急に対策を練り上げる必要がある。

 「復興五輪」「コロナに打ち勝った証し」と、うたい文句を安倍晋三前首相と菅首相は掲げてきた。今となっては、むなしく響く。世論調査では中止や延期を望む声が半数近い。コロナ禍の中、五輪の意義とは何か。感染拡大時の対応策とともに、内外への説明が欠かせない。 

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【社説】  2021年06月20日  06:47:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

 

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【天風録】:金権と決別するための「保存版」

2021-06-30 06:49:10 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【天風録】:金権と決別するための「保存版」

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【天風録】:金権と決別するための「保存版」

 ずらり40人の顔写真が並ぶ。きのうの本紙中国わいど面に目を留めた読者も多かろう。おととしの参院選広島選挙区を巡り、選挙買収のカネを受け取った―。おとといの判決が断じた地方政治家の面々▲渡した張本人で法相まで務めた河井克行被告の公式サイトに、こんな文章が見える。<お金で人の心を「買える」と考えた自らの品性>。候補者だった妻の当選は後に取り消されるが、「買えた」結果を鼻で笑っていたのだろう。よくも社会正義の要たる法相に就いたものである▲恥を恥と思わぬ面の厚さを例えて、鉄面皮という。今回、化けの皮が大きく剥がれた。だが、知らん顔をしている鉄面皮はまだ他にいる▲河井被告の妻に肩入れをし、破格の1億5千万円を自民党本部から差し入れたのは一体誰なのだろう。選挙の指揮を執るのは本来、幹事長である。「二階から目薬」ならぬ鼻薬とからかう声も聞こえる。選挙区に鼻薬をきかせるカネではなかったか▲本紙は事件を掘り下げる連載に「決別 金権政治」と掲げている。単に政治家の問題ではなく、金権体質を許してきた1票との決別でもある。例の紙面が願わくは、その日のための「保存版」になれば。

 元稿:中國新聞社 朝刊 主要ニュース 社説・解説・コラム 【天風録】  2021年06月20日  06:47:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【決別 金権政治】:歳費法改正へ8月に与党案 自公がPT初会合

2021-06-30 06:48:20 | 【国会(衆議院・参議院・議運 ・両院予算委員会他・議員定数・「1票の格差」...

【決別 金権政治】:歳費法改正へ8月に与党案 自公がPT初会合

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【決別 金権政治】:歳費法改正へ8月に与党案 自公がPT初会合

 自民、公明両党は29日、選挙違反で当選無効となった国会議員の歳費返還を可能にする歳費法の改正に向けた与党の検討プロジェクトチーム(PT)の初会合を国会内で開いた。

歳費法改正に向けた与党PTの初会合であいさつする柴山氏(右)と西田氏

 8月に与党案を固め、次の臨時国会で成立を目指すことで合意した。

 ▽成立「次の国会で」

 (ここまで 124文字/記事全文 549文字)

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 元稿:中國新聞社 主要ニュース コラム・連載・特集 【決別 金権政治】  2021年06月29日  23:48:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【決別 金権政治】:1億5000万円問題、党の説明は選管提出後に

2021-06-30 06:48:10 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【決別 金権政治】:1億5000万円問題、党の説明は選管提出後に

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【決別 金権政治】:1億5000万円問題、党の説明は選管提出後に

 自民党の二階俊博幹事長は29日の記者会見で、2019年参院選広島選挙区の大規模買収事件に関連し、公示前に党本部が元衆院議員の河井克行被告(一審実刑、控訴)と妻の案里元参院議員(有罪確定で当選無効)の党支部に提供した計1億5千万円について、検察に押収された資料が克行被告側に返還され、両支部の政治資金収支報告書が県選管に提出された後に詳細を説明する考えを示した。

          二階氏

 (ここまで 181文字/記事全文 348文字)

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 元稿:中國新聞社 主要ニュース コラム・連載・特集 【決別 金権政治】  2021年06月29日  23:05:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【決別 金権政治】:<第9部 教訓>(6)私たちの1票、変える力 慣習脱却へ意思示そう

2021-06-30 06:48:00 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【決別 金権政治】:<第9部 教訓>(6)私たちの1票、変える力 慣習脱却へ意思示そう

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【決別 金権政治】:<第9部 教訓>(6)私たちの1票、変える力 慣習脱却へ意思示そう

 「まさか自民党が負けるとは」。自民党を支持する広島市安佐北区の70代男性が4月にあった参院広島選挙区の再選挙を振り返る。

矢印形のメッセージ板を手に広島市中心部を練り歩き、再選挙への投票を呼び掛ける大学生たち(4月18日)

 再選挙は、大規模買収事件で有罪が確定した河井案里(47)の当選無効に伴って行われた。自民党は政治不信の広がりを認識しつつも「勝算はある」と判断し、元官僚を擁立した。結果はしかし、野党が推す新人に敗北。自民党は有権者の怒りを見誤っていた。

 再選挙の「政治とカネ」の論戦で与野党の両候補が訴えたのが議員歳費の問題。案里と、夫で元衆院議員の克行(58)=実刑判決を受けて控訴中=が逮捕後も歳費を受け取り、返還させる法の規定がないことへの批判が高まっていたからだ。

 ▽SNS 動く若者

 (ここまで 300文字/記事全文 1265文字)

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 元稿:中國新聞社 主要ニュース コラム・連載・特集 【決別 金権政治】  2021年06月27日  22:40:00  これは参考資料です。 転載等は各自で判断下さい。

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【決別 金権政治】:<第9部 教訓>(5)問われる報道の「責務」 選挙疑惑、端緒は週刊誌

2021-06-30 06:47:50 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【決別 金権政治】:<第9部 教訓>(5)問われる報道の「責務」 選挙疑惑、端緒は週刊誌

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【決別 金権政治】:<第9部 教訓>(5)問われる報道の「責務」 選挙疑惑、端緒は週刊誌

 2019年7月の参院選広島選挙区で初当選した河井案里(47)の陣営を巡る疑惑は、週刊文春の報道から始まった。

 参院選で案里陣営が車上運動員に法定上限の2倍の報酬を払っていた―。同年10月末、同誌がこう報じた直後、夫の克行(58)は法相を辞任した。

「大事なのは論よりファクトです」と語る週刊文春編集局長の新谷

 「文春砲」との言葉が生まれたようにここ数年、「政治とカネ」の疑惑で週刊文春の存在感は際立つ。同誌の編集局長、新谷学(56)は「情報がいつ、どこから提供されたかは言えない」としながらも、取材の舞台裏を語った。

 ▽週刊文春にもたらされた情報は…

 (ここまで 245文字/記事全文 1263文字)

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【決別 金権政治】:<第9部 教訓>(4)収支報告、HP全公開を 広島など6県は要旨のみ

2021-06-30 06:47:40 | 【選挙・衆院選、参院選、補選・都道府県市町村長・地方議会・公職選挙法・買収事件】

【決別 金権政治】:<第9部 教訓>(4)収支報告、HP全公開を 広島など6県は要旨のみ

 『漂流する日本の羅針盤を目指して』:【決別 金権政治】:<第9部 教訓>(4)収支報告、HP全公開を 広島など6県は要旨のみ 

 国民の監視の下で政治活動が行われるようにと、国会議員や地方議員の政党支部や後援会などの政治団体が毎年作成し、公開される政治資金収支報告書。

広島県選管が作成し、公開している政治資金収支報告書の要旨(左)。ほとんどの選管は収支報告書(右)そのものを全て電子化し、インターネットで公開している(画像を一部修整しています)

 デジタル時代に入り、インターネットで全報告書を公開するのが全国の主流だが、広島を含む6県は「要旨のみ」の公開にとどまる。

 ▽寄付先記述省く
(ここまで 139文字/記事全文 1252文字)

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