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ピアニストを撃て ’60 フランス

2008-09-06 | 文芸
相手を不幸にしてしまう性分というのは、自分ではどうにもならないもの。
自身を呪うしかないのだろう。
本作品の主人公シャルリが愛した妻テレザと、後に恋人となるレナ。
二人は無常にも命を絶たれることとなる。

ピアニストとして大成し、名声を得たシャルリ。
だが、成功したと同時に妻のテレザは殻に閉じこもるようになる。
やがて苦しみの果てにテレザは、夫に罪の告白をする。
「あなたが成功したのは、わたしが身を犠牲にしたからなの。 汚れたわたしにはもう触れないで」
シャルリは心の中で思う。
「彼女を許せ。 ひざまずくんだ」
しかし臆病者は、黙って部屋を出てしまう。
すぐに部屋に戻ってみたが、時すでに遅し。
テレザは、アパルトマンの6階から身を投げていた・・・

酒場でピアノを弾くシャルリ。
しがない仕事ながらも、彼のピアノで店も繁盛。
そこに、シャルリを慕い続ける女給士レナがいた。
「エレーナがエレナ、そしてレナ、よ」と自分の名を言う。
ふたりが寄り添うのに、そう時間はかからなかった。
レナはシャルリの過去を知っていた。
有名だったピアニストが、何故ここまで落ちぶれてしまったのかを。

酒場の店主とのトラブルや、ギャングたちから逃げ続ける兄のシコを庇ったために、シャルリ自身にも危険が降りかかる。
レナは懸命にシャルリを助けようとした。
「車を借りたの」
ふたりは、シコたちが潜伏している山荘まで走らせた。
しかし追っ手はやってくる。
レナはシャルリを庇いに駆け出す。
銃声が轟く。
レナは真っ白な雪の中へ崩れ落ちる・・・

軽やかなピアノの音が聞こえる。
店はいつものように繁盛していた。
シャルリの顔がアップになる。
その明るい音色とは裏腹に、そこには何も見えていない、ただ虚ろな表情があるばかりであった。