O's Note

いつまで続くか、この駄文

コンバージェンス

2006-04-11 21:00:00 | 仕事(第1業務編)
 最近、会計学とくに国際会計領域でよく使われる言葉がコンバージェンス。
 convergence:1点への集中、集中性、集中状態、集中度
 英和辞典を引いても、この言葉の意味するところはなかなかわかりません。
 たとえば、もっとも新しい雑誌において、コンバージェンスは次のように使われています。
 「今後予定されているASBJとFASBとの会合とも合わせて主要会計基準間のコンバージェンスがさらに進められる。」(雑誌『企業会計』2006年5月号(Vol.58、No.5)、p.13)
 コンバージェンスを集中に置き換えると、「主要会計基準間の集中がさらに進められる。」となります。何だか翻訳したぞって感じですよね。訳としては間違っていないのですが、意味は?と考えるとピンとこない。
 で、気になったので、この言葉、コンバージェンスが、雑誌『企業会計』のどのあたりから使われるようになったのかを調べてみました。
 すると、少なくとも2002年7月号(Vol.54、No.7)まで遡れました。
 そこには次のように書いてあります。
 「コンバージェンス(収斂)」(p.12)
 コンバージェンスとカタカナで表現した後ろに「収斂」と訳語を付しています。さすがに、雑誌編集者は、コンバージェンスだけではわかりにくいだろうと思ったのでしょう。一応、集中より収斂の方が意味がわかるような気がします。
 しかしそれでも実際にはどんなことだろう?と首をひねってしまいます。
 その後、『企業会計』では、しばらくの間、コンバージェンスを「コンバージェンス(収斂)」と表現していたのですが、2003年8月号(Vol.55、No.8)で、「劇的な」表現の変更が行われます。
 「コンバージェンス(他基準との統一化)」
 それ以降、コンバージェンスは、( )を付さずに、「コンバージェンス」のまま表現されて現在に至ります。先の引用文にあてはめると「主要会計基準間の統一化がさらに進められる。」となり、すーっと意味が通るようになりますよね。
 小生が国際会計をかじっていた時代(第一次国際会計ブームと呼ばれてみんながかじらなければならなかったわけで、それ以来、知識はストップ。)には、会計基準の統一化という言葉はありましたが、コンバージェンスと表現することはなかった(あるいはお目にかからなかった)と思います。
 次の疑問として、じゃあ、誰がこんな言葉を使ったんだ!ということになりますよね。少なくても日本語が発祥ではなく、どこか会計基準設定に影響力のある団体が英語で表現したものを日本語化しようとして、適当なものがなかったのでカタカナ語にしたと想像されますね。
 それはどうやら、ロンドンで行われたIFRS(国際財務報告基準)理事会の2002年4月の議題だったようです。
 恰好を付けてカタカナを使うことがままありますが、専門の文献などでは、カタカナの前でしばらく立ち止まってみることも必要でしょうね。