今日読み終えた本。
キャメル・ヤマモト『鷲の人、龍の人、桜の人-米中日のビジネス行動原理』(集英社新書、2007年2月)
この本、ある意味、非常に単純です。
何が単純かといって、キャメル氏(本名は山本成一)は、人間は複雑なので簡単に単純化はできないことを承知の上で、「僕は、日米中の人たちの特徴を際立たせるために、許されないくらいの単純化をしました。」(p.200)と述べています。つまり、鷲の人(米国人)、龍の人(中国人)、そして桜の人(日本人)を「行動文法」という形で表現しています(鷲の人、龍の人、桜の人という表現もわかりやすいですよね。でも猛禽類と伝説上の動物に比べられるのが木というのも何とも弱々しい)。
キャメル氏は、本書を通して、日本(人)が米国(人)や中国(人)との競争に打ち勝つために、あるいはうまく人間関係を構築するために、米国(人)や中国(人)の「行動文法」を理解する必要があると説いています。そこで、日本(人)を含めた「行動文法」3つを対比して、あれこれ事例を交えながら話を進めていきます。
行動文法
米国人 基準(スタンダード)の人
中国人 圏子(チュエンズ)の人
日本人 場の人
皆さんにも実際に読んで(笑って)欲しいと思いますので、あまり詳しくは紹介しないつもりですが、この「文法」、言い得て妙だなあと感心しました。
会計学を勉強すると、会計原則とか会計基準とか、とにかくそういったものに出くわします。そしてこれを理解しなければ先に進めません。日本の会計はどこから来たのかという問題を抜きにしても、1945年以降設定された会計原則や会計基準は、その最初においては、ほとんどが米国から学んだ、といえると思います。基準の人が住む基準の国から、場の人が住む場の国にそれを導入する。多少の(あるいは大幅な)改編が必要になるでしょう、何しろ行動文法が違うのですから。そして今、日本固有の基準を「オレたちに合わせろ」と猛禽類にいわれて立ちすくんでいます(笑)。
閑話休題。キャメル氏は米国人を「基準(スタンダード)を自由に決めて守らせる-神様のおつもりか?」と述べています(序章1の見出し)。
一方、中国人の場合は、聞き慣れない言葉「圏子」で表現していますが、日本語的にいえば仲間という意味です。小生も中国(といっても大連だけですが)とかかわるようになって、最初はこの圏子にとまどい、次第に圏子を意識し、最近では圏子を活用するようになっています。キャメル氏の言葉を借りれば「一対一の関係で仲間(圏子)をつくる-あまりに人間的な?」ということになります(序章2の見出し)。
そう、中国では個人的な人間関係が大きくものをいいます。これがいいのか悪いのか、桜の人がとやかくいう筋合いではないでしょうが、とにかく仲間として認められれば、ことがスムーズに進むことは間違いありません(実感)。逆をいえば、小生が半年ほど大連に滞在することになった時、日本からの荷物について一騒動あったのですが、この時には、小生はどの圏子にも属していなかったわけで、かなり苦労しました。仲間として認められていなかったわけです。
最後に日本人について、キャメル氏は「働く『場』のいうことをきく-とかくこの世はすみにくい?」と表現しています(序章3見出し)。
場は「和」に通じます。わかってはいますが、やっぱり場の空気は大事ですし、和を持ってなすという意識が働いてしまいますよね。小生には理解できない部分が多くなってきている最近の学生さんでさえ「場の空気が読めないヤツ」という表現を使っていますので、やっぱり場というものが大切だという「遺伝子」は受け継がれているのでしょう。
ところで、キャメル氏は、キャッチコピーの名手のようで、面白い表現がちりばめられています。本当はそれぞれに考えさせられる内容で、しかもコピーだけを読んでもなかなか理解できない部分がたくさんありますが、やっぱりうなずいてしまうものもありますので、最後に、それらを紹介します。
三つのお金観(第1章)
アメリカ人の「カテバリッチ教」
中国人の「学歴圏金」
※学歴圏金は、学習・職歴・圏子・お金の略。
日本人の「結果金」
三つのキャリア観(第2章)
アメリカ人の「アップ・オア・アウト」
中国人の「リスク分散」
日本人の「職人染色」
三つの組織的仕事観(順番は本書のまま)
アメリカ人は「分ける人」
日本人は「合わせる人」
中国人は「はしょる人」
くどいようですが、キャメル氏はこれですべてが割り切れると思って書いているわけではありませんので、ご注意を。でも個人的には、最低でも、小生自身には当てはまるなあと思っていたりして・・・。