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礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

新方針は急速に戦争を終末に導くにあり(酒井鎬次)

2019-08-19 11:05:40 | コラムと名言

◎新方針は急速に戦争を終末に導くにあり(酒井鎬次)

 共同通信社「近衛日記」編集委員会編『近衛日記』(共同通信社、一九六八年三月)から、「近衛日記」を紹介している。本日は、その五回目で、一九四四年(昭和一九)六月二八日の日記を紹介する。この日の日記は長いので、二回に分けて紹介する。

二十八日午後八時

 極秘裡に参謀本部の酒井〔鎬次〕中将来訪(中将は、戦争指導課長松谷〔誠〕大佐と打合せの上、大佐は松平〔康昌〕内大臣秘書官長を訪問し、自身は、荻外荘【てきがいそう】を訪問したる由〈ヨシ〉述ぶ)
 酒井中将は「これは東條総長へは極秘に願う。総長に知れれば直ちに報復せられるであろう」と述べたる後、
第一、今や戦争指導方針の大転換を要する秋【とき】となれり。
第二、これが実現は内外の情勢に鑑み、現当局者にては見込つかず。
第三、新方針は急速に戦争を終末に導くにあり。これがために一方我〈ワガ〉抗戦力を厳存するとともに他方一大決断をもつて平和条件を低下すること必要なり。
 なりとて、その理由として第一、ガダルカナル作戦以来の戦局の不利は我戦力、殊に海空軍戦力の不足に基因する。此の比が〔彼我〕戦力の相対関係において今後益々一方的に悪条件を我に加重し、我不利の態勢はいよいよ急速に現出するであろう。すなわち時日の遷延はいよいよ益々我に不利であって、遂には我本土の占領、 国民大衆の絶大なる死傷、物的施設の根底的破壊となり、戦後長年月にわたり我再起を困難ならしめ、時として我国体の堅持をも危からしめるであろう。
第二、そもそも、かかる事態を招来したるは、
   第一に、昭和十七年〔一九四二〕前半期において寛大なる条件をもって速戦的に 終末とするか。
  第二に、あるいは爾後【じご】一時作戦を扣制【こうせい】し、新占領地の建設により我国力を増強して次期作戦のために戦力を向上すべきであったのに、 二つとも指導上、遂にこれを実現することが出来なかったことに基因する。
第三、今や速戦速決【ママ】の機を失ひ、建設もまた敵の我交通、成産【ママ】の破壊により見込なく、決戦期に入ったにかかわらず、我は長期抗戦を喪失した。
第四、ドイツはなお相当の抗戦力を持っている。即ち、敵は東西両戦略圏に戦力を分散しなければならない現状だから、此の機を利用して和平に入ることは幾分でも我に有利であり、もしドイツ没落の後に和平をなすということでは益々我に不利である。
第五、故に一大決断をもって平和条件を提起し、速やかに和平に入る新方針をとるべき秋である。然るに現当局にこれを望むことは内外の情勢上、至難である。すなわち、次期当局は、此の新方針実現可能のものでなければならないとともに、他面万一を顧慮し、我現戦力を出来得る限り厳存せしむるよう努力することが必要である。
 と縷々【るる】陳述し「これは参謀本部の中心的意見である」と付加せり。【以下、次回】

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