◎『網走番外地』と『にっぽん泥棒物語』の共通項
昨日の補足である。一昨日、渋谷シネマヴェーラで、『にっぽん泥棒物語』(東映、一九六五)を観ながら、何となく、石井輝男監督の『網走番外地』に似ているなと感じた。
家に帰ってから調べてみたが、公開された時期が近い。『網走番外地』が一九六五年(昭和四〇)四月一八日、『にっぽん泥棒物語』は、同年五月一日である。
同じ東映の白黒映画である。ふたつとも「犯罪者たち」の話で、両方に「刑務所」のシーンがある。画面に出てくる農村の風景、商店街の雰囲気、道路を走っている自動車などにも、似た感じがある。公開された時期が近いということは、撮影された時期も近いということである。似ていないはずがないのである。
ただし、キャストは、ほとんど重なっていない。撮影された時期が近いのに、撮影場所が離れているということで、重なりようがなかったのだろう。その唯一とも言える例外が、潮健児である。彼は、『網走番外地』では、主人公・橘真一(高倉健)と同房の囚人を演じ、『にっぽん泥棒物語』では、主人公・林田義助(三國連太郎)の泥棒仲間を演じている。
『網走番外地』には、有名な「裸踊り」のシーンがある。刑務官に反抗するため、風呂場で、高倉健を筆頭として、囚人たちが各自、滑稽な踊りを披露するシーンである。このシーンを撮影したとき、石井輝男監督に頼まれ、各囚人の「振り付け」を考えたのが、潮健児だったという。この話は、デアゴスティーニ版DVD『網走番外地』の解説冊子に載っている(執筆・山平重樹)。
潮健児(一九二五~一九九三)は、すでに故人だが、このふたつの映画に出たころの回顧談などが、どこかに残ってはいないものだろうか。