月に一度埼玉に行くようになって5年になろうとしている。
埼玉に行くようになっていながら、埼玉のことは意外と知らないままだ。
そんなことを時々思ったりもしていた。
そんな折、図書館で標記の本を見つけた。
ちょっと埼玉に対する知識を増やしたくて、本書を手に取った。
内容の構成は、大きく4章で成っている。
PART1 地図で読み解く埼玉の大地
PART2 埼玉を駆け抜ける鉄道網
PART3 埼玉で動いた歴史の瞬間
PART4 埼玉で育まれた産業や文化
それぞれ、知らなかったことを知ることができた。
PART1に関しては、西に秩父山地、東は関東平野が広がることは知っていた。
名勝の長瀞については、行ったこともあったが、その価値について確認できた。
長瀞は、太古の地中深くで起こった地球規模の地殻変動によって生まれた岩石を目視できる「地球の窓」なのだということだ。
ずいぶん削られてその姿が大きく変わった武甲山は、石灰岩の産出量が半端なかった。
その石灰岩は、遠く南洋で生まれたサンゴ礁が地殻変動で運ばれてきたものであった。
PART2について、確かに、各方面につながる鉄道網があるなあとは思っていた。
昔、東京から新潟へ帰るときには、まだ上越新幹線がなく、上越線・高崎線の列車を使って帰っていた。
大宮には鉄道博物館があるけれども、それは大宮が上越線や東北本線との分岐点となっていることが大きいのかなと最初は考えていた。
実は、明治中期に大宮に全国屈指の車両工場ができ、「鉄道の町」に大発展したということが大きかったんだね。
また、鉄道オタクが喜びそうな鉄道のうんちくも多かったと思う。
東武東上線は、東京と上州を結ぶことにその名の由来があるのだそうだけど、その他の東武線についての話もあった。
同様に、西武線についても西武新宿線やよく知らない西武安比奈線のことも紹介されていた。
他にも、埼京線や武蔵野線、秩父鉄道のことなど、鉄道マニアが喜びそうなエピソードが並んでいた。
PART3の歴史では、時代の順によく知っているものも出てきた。
古い方では、埼玉古墳群や吉見百穴など。
それよりも、埼玉の歴史の中で重要なものは、交通の発展と用水の整備だということが分かった。
江戸時代には、五街道が整備されたが、埼玉には中山道と日光街道がある。
特に、中山道の整備が進んだことによって、蕨、浦和、大宮、上尾、桶川、鴻巣、熊谷、本庄などの宿場が整備された。
また、中世以降農業用水が整備されたことは、その後の農業県としての発展のもとになったと言える。
特に、「坂東太郎」とも呼ばれる暴れ川の利根川の流路については、かつては東京湾へ流れていたのを東遷し、荒川を西遷し、江戸を水害から守るようにできた。
ほかにも、川越に大火があった後には街並みや新河岸川を整備して船運ルートを開いたことが、その後の川越が「小江戸」と呼ばれるほどの発展につながった。
最後のPART4では、来年度新たな紙幣の顔となる渋沢栄一をとり上げていた。
紙幣には、渋沢と共に煉瓦の建物も描かれるのだそうだが、それは、渋沢が日本煉瓦製造を故郷に造ったからなのだそうだ。
他にも、川口鋳物、所沢飛行場、秩父夜祭、三十四番札所めぐりなど著名で興味深い内容が並んでいた。
その最後に扱われていたのは、「日本近代漫画の祖」北沢楽天のことであった。
彼は、大宮にゆかりの深い人物で、手塚治虫が影響を受けた作家のひとりに挙げていると紹介されていた。
1948年に大宮市盆栽町(さいたま市北区)に居を構え終の棲家とした彼は、大宮市の名誉市民第1号となった。
さいたま市立漫画会館に彼の功績がうかがえるのだそうだ。
そんな人物がいたということは、まったく初耳だった。
…とまあ、いろいろと学習ができた1冊であった。
このトリセツシリーズは、2019年9月に「神奈川のトリセツ」を発売以来、2022年1月の高知版にて全47都道府県、コンプリート達成とか。
ちなみに、この「埼玉のトリセツ」は、2020年7月1日初版。
他のものも、その気になったら読んでみようか。
そうだとしたら、「新潟のトリセツ」くらいは、読んでみないとな。