老いの時代をどう生きるか、ということが書かれた本は世に数多ある。
でも、この本は信じられるというか、著者はいい生き方をしていて、自分もそうありたいと思った。
著者は、老いるということをマイナスのイメージでとらえないで、70歳の時に「老いるということは、「初めての経験で、未知の冒険の始まり」ととらえた。
そのときに、日々気が付いたことを記録するための「自分の観察手帳」を作った。
さらに、「77歳の時には自分はこの世の中にいない」という予定を立てた。
だから、その前にこれをしておこう、あれをしておこうと決断した。
そして、77歳の「満期」を迎えても生きていたから、今後は3年単位で延長するのだという。
こうやって気付いたことや見付け、自分なりの楽しく老いる秘訣を書きまとめたものが本書である。
私が老いに関して最も納得したのは、次の文だ。
「体は老けても心は老けない」というのは錯覚で、「心は老けていない」と思うこと自体がまさしく老化のしるしといえます。自分では「心は若い」と思っているけれど、心という見えないものを当てにしているだけ。鏡に映るシワだらけの顔が本当の年齢で、心も当然、シワだらけです。
心も老けるからこそ、これまでとは違う人生の局面が見えてきます。
そうか。自分は、「体は老けても心は老けないぞ」なんて気張っていたけれど、それでは正しくものが見えないということだ。
老いに「抗う」のではなく、老いに対して誠実に向き合う。
老いの中で起こる面白くないことも、目をそむけたり、すり替えたりしない。
そういう構えで生きていくことができるとよいのだな。
ほかに、老いの特性、老いとお金、老いと病、老いの楽しみ、旅などさまざまなことについて書かれてあった。
特に、老いと病については、これからしっかり自分をもつ必要があると思った。
「老いとは寄り添え
病とは連れ添え
医者は限定利用 」
この考えは、なかなかよい。
医学にも限界がある。
自分の体は、自分が一番よく知っている、つまり自分が一番の主治医なのだ。
医者の言うがままになっていては、死が近づいてきても、今の医学では積極的に生きるようにする治療をする。
病に関して、「延命治療はいらないが、痛みは消してくれるようにお願いしたい」などと、自分の意思を示しておけることの方が大切という考え方は、いい。
すこぶる賛成、自分もそうありたい。
古稀とはいかないが、来週には完全に高齢者の仲間入りをする私。
気持ちのあり方を大いに参考にさせていただいた。