なぜこの本が、図書館の「あけましておめでとう」コーナーに展示されていたのかはわからないが、表紙絵の女の子と目が合った気がした。
丸っぽい顔に大きな瞳が可愛い…。
そうだ、少年時代好きだったのはこんな感じの女の子だったな…。
一瞬遠い目になり、昔を思う…。
書名に目をやれば、「図書館ホスピタル」という。
図書館病院?
これまた気になるタイトルの小説だ。
帯の部分には、「元気だけがとりえの悦子が就職した、不思議な噂の立つ図書館。悩みを抱える利用者さんに今日も『元気』を届けます。 本のお薬、処方します」と書いてあった。
ぱらぱらとめくってみると、本章の始まりのページには、
『元気があれば何でもできる』
かの有名なプロレス選手が言った言葉で、プロレス好きだった亡き祖父の口癖だった。
という文章から始まっていた。
内容的に重くなさそうだし、楽しそうだから読んでみようか、と借りてきた。
本のタイトルからすると、この本を読めば元気が出るよ、と司書の人が推薦する本を、借りた人が読んで元気になる、というような短編集かと思ったら違っていた。
登場する主人公悦子は、大学を卒業するときの就活がうまくいかず、図書館に勤めるようになる。
何も知らなかった図書館や本のことを知りながら、仕事上でも人間的にも成長していく、というような話であった。
ストーリーの進展に、主人公が読んだ本からの学びをうまく重ねていた。
一例をあげると、
ふと、以前、凪原さんに薦められて読んだ本、「星の王子さま」に出てきた一節を思い出した。『肝心なことは目に見えない』。
(略)
本のページを先に先にと読み進めることは、発見があって楽しいもの。人間関係も同じなんじゃないかな、と思った。
そんなふうに、本や読書にうとかった主人公が、その楽しさに目覚めながら、仕事や人生に大切なことを知っていく。
「ええとね。本ってさ、ページをめくっていかないと先は読めないじゃない?どんな内容かは、人から聞いたり、あらすじとか見れば分かるかもしれないけど、でも、自分で読んでみないとその本に実際に何が書いてあるか分からないじゃない?仕事もさ、同じじゃないかなって……とりあえずやってみないと、やり甲斐なんて見つからないんじゃないかって思うんだ」
主人公悦子が語るこの文章に、すべてが表れている。
内容的に、ティーンエイジャーや働き出した若い人たち向けの本だなと感じながらも、この会話文には、そうだよ、私自身も仕事で様々なことを経験しながら得てきたのだよなあ、と思った。
そして、やるからには、自分なりの思いをもって前向きに進んでいくことによって、道は開けてきたのだ。
深刻にならずに、サラサラっと読み終わった。
この本が、「あけましておめでとう」コーナーに展示されていた理由はやっぱりよく分からなかった。
新年、前向きな気持ちでがんばっていこうね、ということで飾ってあったのかな。
それとも、図書館に勤めている方々が、希望をもって仕事をしているよ、ということを知ってほしくて並べたのかな?
まあ、いいや。
表紙絵の女の子と書名にひかれて借りたわけだけど、期待どおりの(?)清々しさに会えた本だったのだから。