日本男道記

ある日本男子の生き様

奈半の港 2

2024年09月10日 | 土佐日記


【原文】 
かくて、宇多の松原を行き過ぐ。その松の数いくそばく、幾千歳経たりと知らず。もとごとに波打ち寄せ、枝ごとに鶴ぞ飛びかよふ。おもしろしと見るに堪へずして、船人のよめる歌、

見渡せば松のうれごとにすむ鶴は千代のどちとぞ思ふべらなるとや。

この歌は、ところを見るにえまさらず。

【現代語訳
このようにして、宇多の松原を通り過ぎて行く。その松の数がどれほどのものか、幾千年を経たものかはかりしれない。松の根元ごとに波がうちよせ、枝ごとに鶴が飛び通う。なんてすばらしい景色だろうと見ているだけでは耐えきれず船人が歌をよみました。
見渡せば…
(見渡せば、松の梢ごとに住んでいる鶴は、その松を千年も変わらぬ友達と思っているようだ。)
とか。
でも、この歌は実際の景色のすばらしさを見ると、とても及ばない。



◆『土佐日記』(とさにっき)は、平安時代に成立した日本最古の日記文学のひとつ。紀貫之が土佐国から京に帰る最中に起きた出来事を諧謔を交えて綴った内容を持つ。成立時期は未詳だが、承平5年(934年)後半といわれる。古くは『土左日記』と表記され、「とさの日記」と読んだ。 

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