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【一口紹介】
◆出版社 / 著者からの内容紹介◆
世界最強のクライマー・山野井夫妻を襲った「一瞬の魔」。
しばしの逡巡の後、宙吊りになった妻の頭上で迫られた究極の決断とは。
『檀』以来十年ぶりとなる、待望久しい最新ノンフィクション長編。
◆内容(「BOOK」データベースより)◆
極限のクライミングを描く、究極の筆致。『檀』から十年、最新長編作品。
最強の呼び声高いクライマー・山野井夫妻が挑んだ、ヒマラヤの高峰・ギャチュンカン。
雪崩による「一瞬の魔」は、美しい氷壁を死の壁に変えた。
宙吊りになった妻の頭上で、生きて帰るために迫られた後戻りできない選択とは―。
フィクション・ノンフィクションの枠を超え、圧倒的存在感で屹立する、ある登山の物語。
【読んだ理由】
第28回(平成18年)講談社ノンフィクション賞。久しぶりの沢木 耕太郎作品。
【印象に残った一行】
「山野井は、ぼんやりと、ヤク使いとして男たちと一緒に来ていた少女のことを考えていたのだ。十歳くらいに見えたが、ギャルツェンに訊ねてもらったところによれば十三歳だという。気になる咳をし、日本の子にはもう珍しくなった青洟を垂らしていた。山野井は小さな手帳にこう記した。
<最新の装備に囲まれ、ピンク・フロイドを聞きながら、生きて帰れないかもしれない山に挑戦する私。
かたや、父を亡くした十三歳の少女は、ヤク・ドライバーとして厳しい環境で働かなくてはならない。一枚のビスケットに幸福を感じながら。
これでいいのか。自分の人生は間違っていないのか。しかし、残念ながら、あの山を見ると、登らざるをえない自分がいる>」
「自分は妙子が最後の最後まで頑張る女性だということを知っているし、パニックを起こす女性でないことも知っている。妙子が頑張りきれずに死ぬことになったとしても、恐怖を感じずに死ぬことができるだろう。もう壁から氷河に降りてきている。垂直の壁でロープにぶら下がったりしているときに死なれるのはつらい。自分も、垂直の壁で死ぬのはいやだが、この氷河上の平らなところなら死を受け入れられるかもしれない。それに崖の中では死体を回収できないが、このモレーンではそれができる。そのことも、山野井の心をいくらか平静にさせてくれることだった。死んでもまた会える、と。」
【コメント】
山に魅せられた、世界最強のクライマー・山野井夫妻の凄まじく想像を絶する物語。