山場を迎えている「税と社会保障一体改革」についての民主党内の対立。報道によれば,小沢一郎は消費増税法案に反対する意思を明確にした。幹事長の輿石にも会って意向を伝えたと。小沢は民主党を離党して新党を結成する含みで,同調者を増やすべく動いているという。
結構なことだ。それで良し。
以前にも書いたとおり,そもそも論を言えば,自民党の田中派の跡目争いに敗れた小沢がその後取った政治的行動・言動をみれば,小沢にとって政策は,権力奪取ないしアンチテーゼの手段にしか過ぎない。
自民党を割って出た小沢が立ち上げた新進党は,新自由主義。『日本改造計画』も同じ。ちょっと前で言えば,小泉・竹中の市場原理主義に近似していた訳だ。
その後小沢の側近議員らが次々と去るにつれ,保守党→自由党と表紙を変えては「純化路線」を取って行ったのだ。
しかし,所帯の小さくなった政党にはキャスティングボードを握る力さえすでに無く,やむなく鳩山・管の民主党と合併。しかし,そもそも社民主義的な民主党に,新自由主義の政党が入って行くこと自体がおかしい。
しかし合併の際小沢は,「政策的なものはすべて民主党のもので結構だ」という趣旨のことを言っている。対等合併じゃなくて完全に吸収合併で良し,と。
所帯を大きくして自民党に対抗できる勢力の一翼を担うことができれば,政策など二の次だったのだ。
事実,その後小沢が民主党で幹事長,代表となって打ち出した政策・マニフエストは,すでに周知のように,社民主義を通り越して財政規律無視のバラマキ&お金はあるんです&何でも出来ますよ&打ち出の小づち路線だったじゃないか。
新進党→保守党→自由党の新自由主義,市場原理主義とは間逆を行く「大きな政府」路線だ。
思い返せば,細川連立政権のインナーとして動き,「国民福祉税をやる」と深夜の記者会見で細川に云わしめたのは,他でもない小沢だった。
細川は「腰だめの数字」と言って,聞いてる側を呆れさせたが,小沢にとってこれは思いつきではなかった。
当時小沢が昵懇にしていた大蔵省の幹部とじゅうぶん擦り合わせての「増税」だったのだ。少子高齢化の進む日本にとって,諸外国と比べて抜きんでて低い間接税率を上げなきゃならんと,誰よりも強く認識し,そして実際に動いていた小沢本人なのだ。
そもそも現在の日本を見れば,40兆円の税収で毎年90兆円超の予算を組み続けているという異常状態。国債の累積残高はGDP比200%で,ギリシア・スペインの比ではない。
昨日の新聞報道によれば,日本国債の外国人の保有する割合が上昇し続けているそうだ。
乾いた藁束に火が点いたらあっという間に大火事,というところまで来ている。日本国債の売りが進めば,一気に国債暴落→経済破綻。円の価値は下がり,日本国民が営々と気付きあげてきた富は失われるのだ。
閑話休題。
この際,反対票を投じた議員に対しては,民主党執行部は除名処分で対応すべきだ。
積年のモヤモヤを,この機会に堂々と清算すべきだ。
小沢に何人付いて行くのか知れないが,当選1回組のいわゆる「小沢チルドレン」は,次の選挙でほとんど落選だろう。
それで良し。スッキリするじゃないか。
或いは野田政権はこの先,行き詰まるかもしれない。一寸先は見通せない。
でもそれでも良し。日本の将来のために,やらなきゃならんことは,野田は体を張ってでもやり遂げるべきだ。
民主党が分裂・下野するかもしれない。それも良いだろう。
近い将来に日本の国が立ち行かなくなることに比べれば,一つの政権が倒れることくらい何でもない。
混乱の中から,痛みを伴う政策を政党が堂々と掲げて,そんな政党に有権者が票を入れる。
そんな状況が日本にも生まれるかもしれない。
戦後の政権交代はまだ一度。それだけ見たってまともな民主主義が機能している国じゃない。
長いスパンで見れば,政治家も国民も学習の過程にあるのだ。
取り急ぎ,現段階の所感まで。
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