有終の美 ~菊花いろいろ~植物園再訪(2)

2012年11月17日 | 植物園
ハスのほとりの紅葉した「フウ」の木。とても樹高が高い、三角葉のフウです。
あの葉の長さくらべをした「舞妃連」は、今はなき姿に。


大きな木々を抜けて、噴水のある花壇に。




噴水の裏にまわると、方位を示す図があり、
  

階段を上がると、全体が見渡せます。今日は、噴水入りです。


ヒマラヤ杉まで見渡せ、お気に入りの場所です。

バラ園には、まだまだ咲いている木も沢山ありました。
「ゴールデンボーダー」 フランス 1987年
  

「マイナーフェアー」 ドイツ  1990年


「ラベンダードリーム」オランダ 1986年
  

「花房」1981年と、「早春」1991年は、日本で作出されたもの。
  

いつもの場所で、休憩しようとすると、なにやら異変が・・・・・砂嵐か?煙るように見えます。
それは、ヒマラヤ杉からの花粉が煙のように風に載って運ばれている瞬間でした。
こんな時期に実るのですね。


 

会館近くのコスモスは満開です。
 

「エンゼル・トランペット」
 

大芝生地では、菊花展が行われていました。(15日終了)
 

一つ一つの花は、人の頭くらいの大きさがあり、形も色も、素晴らしい花々です。

「菊」は、奈良時代に中国から渡来したもので、最初は、観賞用というよりも、薬用として入ってきたようです。
万葉集には、「菊」という語は見当たらず、「百代草」がキクか?と思われていますが、特定できていないようです。

同じ奈良時代の、751年に大友皇子の曾孫、淡海三船による編纂とみられる現存する日本最古の日本漢詩集
「懐風藻」には、「菊酒」や、「菊風」(秋風の意)の文字が見られます。

謡曲の「枕慈童」(観世流では「菊慈童」)には、魏の文帝の家臣が酈県山(れきけんざん)を訪ねると、周の
穆王(ぼくおう)に仕えた慈童と名のる人物が現れ、不老不死の菊の露の酒を勧める。とあり、

「菊水」や「菊酒」を調べているうちに、「甘谷の水」中国河南省南部を流れる白河の支流 崖上にある菊の露が
したたり落ち、これを飲んだものは皆長生きをした…云々とか。

旧暦の9月9日の重陽の節句では、ウィキペディアによると、邪気を払い長寿を願って、菊の花を飾ったり、
菊の花びらを浮かべた酒を酌み交わして祝ったりしていた。また前夜、菊に綿をおいて、露を染ませ、身体を
ぬぐうなどの習慣があった。と

今もアンチエイジングとして、いろいろな食材を試したり、塗ったりしますが、当時も同じ思いですね。

平安時代になると、花を愛でる様子がうかがえます。797年10月11日 宮中曲水宴席 桓武天皇
「この頃の しぐれの雨に 菊の花 散りぞしぬべき あたらその香を」

古今和歌集には、13首の菊を詠む和歌があります。その中の紀友則の歌。
「一本(ひともと)と 思いし花を おほさわの 池の底にも誰か植えけむ」
一本だけと思っていた菊の花を、大沢の池の底にも誰が植えたのだろう


大沢の池というのは、あの嵯峨菊のある「大覚寺」の地にあります。余談ですが、嵯峨天皇は、
桓武天皇の第二皇子で、空海・橘逸勢(たちばなのはやなり)と並ぶ能筆家、「三筆」として
有名な方です。平安京の大内裏の門号を唐風に改め、その文字は、この三人の手により書かれたそうです。

またこの紀友則の歌は、887年から897年の宇多天皇の時の「寛平御時菊合」の時に詠まれた歌です。

菊合わせ・・・・1)左右に分かれて、互いに菊花を出し、その優劣を争う遊戯、歌をつけて競う
        2)菊の花を持ち寄って、花輪の美、作柄などを品評して優劣を争う催し。

日本で広くキクが栽培、品種改良されるようになったのは、江戸時代に入ってからで、古典園芸植物の一つです。

菊花展では、約400鉢が出品され、賞が贈られていました。


大菊の種類にも、管物と呼ばれる、管状の花びらのや、数百枚の花弁がうろこ状に盛り上がった厚物。
また丈の低い「福助菊」と呼ばれるものもありました。

  

また崖上の菊を表したものや盆栽仕立て。


圧巻は扇型に仕立てられた「千輪仕立て」


  

 




学名のクリサンセマムは、ギリシャ語のChryso「黄金の」とanthemon「花」からきています。
和名の、別名には、千代見草、翁草 齢草、霜見草、星見草・・・などがありました。

「和名のキクは、漢字の菊の音読みで、この字は、鞠とも書かれ、鞠は、窮と同じ意味で窮極または、最終の意味
である。キクの花が年の一番終りに咲くことからこの字が使われたといわれる。」『日本大百科全書』(小学館)


一年の終わりに咲く、豪華にも咲く花、有終の美を飾る菊。丹精込めて作り込まれた菊。

ここまで大きな菊を育てるのは、並大抵のことではなく、すごい情熱を感じました。(完)