8月の半ばのことでした。
6匹の風邪でひどい状態の小さな子猫たちが
ご飯をあげていた人から殺処分はいたしかたないと
行政に持ち込まれました。
自ら餌をあげていた野良猫が産んだ子猫たちを、
悲惨な状態で連れてこれる人がいるなんて、どんな神経なんだろうと。
かわいそうだから、気の毒だから餌をあげるなら
その先のことにも、きっちり責任を持つのは当たり前なのに。
6匹ともひどい風邪症状で、目もぐちゃぐちゃでした。
シエルはその中の1匹で、特にひどい状態で生きられるかもわかりません。
目の状態は言葉にできないほどで、片目は瞼の中で腫れあがり
点眼や薬の甲斐もなく摘出するしか道がありませんでした。
美しい毛並みの、愛くるしい性格のこの子の目は
残念ながら取り除く選択しかありませんでした。
片目を失っても、そんなことが不利になることはない!
そう思って里親探しをがんばるぞと思っていた矢先
肺炎になってしまいました。
今度は高熱と戦うことに。
ゆっくり、じっくり、しっかり・・・完治するのを待つ以外ありません。
安静と栄養、充分な睡眠
人間の病気のときと同じです。
先生の指示をしっかりと守って過ごしていきます。
ふとそのとき、わたしの頭の中にある里親さんが浮かびました。
これまで3匹の子を譲渡したお宅です。
シャム風の子が気になっていたのを思い出しました。
お子さんたちも、1匹ずつの個性を大事に考えてくれてました。
猫の過ごす部屋も広い窓があり、これまで行った3匹も
とってもいい子たちです。
図々しくもシエルとのお見合いをお願いしました。
体調が戻るのを待って会いに来てくださいました。
案の定、片目のことなどまったく気にすることもなく
これも個性と受け流してくれています。
お見合いは成立しトライアルがスタートしました。
最初はお転婆娘のシエルちゃんの登場に
これまでの3匹がドン引きして、言ったことのないシャーを連発。
今まで見たことのない穏やかな性格の先住さんの威嚇態度に
飼い主さんの方がびっくりしたようです。
でも上手に合わせてくださってました。
ケージもうまく利用していました。
それぞれの変化も、よく見てくださってました。
子どもたちも猫と暮らすことで気持ちに変化があったようです。
意見をきちんと伝えられるようになってくれたと、
笑顔で報告してくださってこちらも嬉しかったです。
もちろん数が増えればお世話もそれなりに大変になります。
ですがいただく内容は、幸せが加速していくものばかりでした。
どんどん猫カフェ状態になっています。
そのうちわたしの方が、ひどい状況で連れて来られて
悲惨な状態だったことをすっかり忘れてしまうほどでした。
甘え上手なシエルちゃんは、すっかり人気者です。
あたたかい場所にたどり着けました。
何度も命の危機を感じていました。
どうなってしまうかわからなくて、不安だったこと
お世話してくれたスタッフさんの苦労を思い出すと感無量です。
落ちた井戸の底から、明るい地上に引き上げてもらったような気分でした。
猫を飼うことで家族の会話がたくさん増えてくれたり
心が落ち着いて穏やかになって、嫌なことみんな忘れちゃうような
そんな家族が増えてほしいといつも思って活動しています。
いい子だね~♪かわいいね~♪ありがとうね~♪大好きだよ~♪
言葉に出してたくさん言ってみてほしいと思います。
たとえばこちらのお宅みたいに
可愛いね~♪って言ってるお母さんの姿は、子どもたちの心に
見えない力を与えることになると思います。
優しさや思いやりや、心に必要な栄養をたくさん持ってる魔法の言葉たち。
仮にひとりのときでも言葉に出せば、一番先にその言葉を聞くのは
言われてる猫ではなく自分自身だと思うのです。
優しい言葉、耳障りのいい言葉をたくさん言って、たくさん聞いて
猫だけでなく、周囲の人も、自分自身も大切にしてほしいと思います。
猫と暮らすことって、そのくらい意味のある深いものだと思います。
素敵なご家族と出会うことができたのも猫の持つ不思議な力のおかげです。
シエルちゃんをどうぞよろしくお願いします。
これでもかってほどの辛い事、苦しい事、痛い事、悲しい事
たくさんあったけど・・・すべて今の幸せに繋がっていましたね
シエルちゃん、おめでとう。