ダブルキャリアというのは、
血液検査でエイズ(FIV)と白血病(FeLV)が
プラスに出てしまった・・・つまり感染しているという意味です。
ただしキャリアというのは、感染しているけど発症はしていない、
ウイルスが眠っている状態の猫のことを言います。
眠ったままの状態をいかにキープできるかでその後の寿命が決まります。
どちらか片方なら、かなりがんばって長生きした子たちもたくさんいます。
その両方となると・・・。
しかも保護した時点での状態にもよります。
わたしの知っている猫では、これまで3匹いました。
1匹目は友人の猫です。
名前はのえるちゃん。
近所で置き去りにされたのではと言われている猫でした。
リリース予定でしたが、検査の結果ダブルキャリアとわかると
1部屋に隔離しても家の子にする、と決めました。
当時3~4歳だったと思います。
それはダブルキャリアのその子が気の毒だということはもちろん、
外に帰して、地域の他の猫たちに被害拡大をさせたくない
という判断でもあったと思います。
それから大切にお世話し、可愛がり、2年1か月生きられました。
体調を崩してからは食欲も不振になり、みるみる弱っていきました。
いろいろ工夫してがんばっていたのですが、最期は鎮静をかけて・・・。
眠りについたのえるちゃんが、目覚めることはありませんでした。
これ以上苦しませたくないという決断をしましたが
ずっと心のどこかで終わりのときに人の判断を入れたことが
残っているようでした。
2匹目は、譲渡した猫でイール君。
3歳8カ月でした。
愛嬌のあるとってもかわいい子で、具合が悪くなっても
ぐっとがんばるできた子でした。
飼い主さんご家族も、この子のために
抜歯したり輸血もしてくださいましたし、
いろいろと手をつくしていましたが・・・。
長い活動の中で、強く印象に残る子の1匹です。
小さい時も高熱を出したり、もうダメかもの状態から復活し
それでもこの子がいいと言ってもらえた子です。
本当によくがんばって生きてくれました。
3匹目は・・・。
現在、譲渡会場をお借りしているル・グランさんのオーナーさんの
猫です。
お名前は、むう太君。
2020年1月に保護したそうです。
真冬の草むらでうずくまっている激やせのよれよれの猫。
なんとか暖かい場所でお腹いっぱい食べさせてあげたい。
その一心で保護にふみきったそうです。
10歳の野良だったむう太君が、家猫として生きられたのは1年。
通院やら入院やらで延命に近い生活になってしまったことを
彼女は悔いているようでした。
治療はエゴだったのではとか、
他の猫と同じ部屋でみんなで過ごせなかったこととか、
本当に保護が正しかったのだろうかとか。
いまだ納骨ができないことも話してくれました。
どの事例も、ただただ頭が下がります。
幸せにしたかったんだと思います。
もしかしたら、もっともっと長く生きられるかもと思ったはずです。
この子は大丈夫と、思いたかったと思うのです。
他の猫と隔離するのは正しい判断です。
そして、その子のために何とかしたいとがんばったことも
まちがってなんていないのです。
猫たちにはしっかり伝わってると思います。
自分のためにできることをしてもらって
考えてくれて、悩んでくれて、迷ってくれて・・・。
そんな風に誰かにしてもらえる猫は、絶対に幸せなのだと思います。
がんばっただけに、もっと何かできたんじゃないかとか
それがよかったのかと思うのが人という生き物ですね。
何をしてもしなくても・・・。
失った悲しみの前には、間違っていたのかもとか
あのときああしていたらとかの、
別の後悔も湧き出てくるものなのかもしれません。
ダブルキャリアの猫。
その子たちのために必死になってくれた人たちがいて
それこそが、真似のできないすごいことだと思います。
最近相談された猫たちで、白血病(FeLV)とわかって亡くなったり
譲渡ができなくなってしまったケースが続いています。
白血病(FeLV)の猫がいる地域は、母子感染や同じご飯を食べたり
接触があることで、感染拡大しているのかと思われます。
中と外を自由に行き来して飼う方もまだまだいますが
感染のリスクもあります。
難しい問題もたくさんあるのですが
そんな中、こうしてダブルキャリアの子を慈しんでくださった話は
救われる気がします。
やり遂げてくれた方のお話しは、胸をうつものがあります。
様々な病気があるのですが、そのときどの道を選ぶのか
わたしたちひとりひとりが試されるときでもあるんでしょうね。