昨日と同じ朝なのに

ある日、おばあちゃんが旅に出た

あとを追うかのように、おじいちゃんも旅に出た

昨日とおんなじ朝だったけど・・・

お家に入れてもらえなくなった




おじいちゃんの身内の、遠くで暮らすおじさんは、お家を売ってしまった

お家の隣のおばさんが、身の上を心配しておじさんに話しをしてくれたけど

おじさんは『そのうちどっかに行っちゃうさ』

そう言っただけ。




かわいそうだと思った近所の人が、猫嫌いの別の近所の人の目を盗んで

ときどきご飯をくれる

赤ちゃんを産んだけど、みんな大きくなれずにいなくなり、

いつの間にか迷惑な猫、うとましい猫と呼ばれるようになった




でも、ここがやっぱりお家だから・・・

今さらどこに行けって言うんだろう

おじいちゃんのまなざしは、今も体をなでてくれる

おばあちゃんの呼ぶ声が、風に運ばれて聞こえてくる



『い～い子だねぇ』

『可愛いもんだなぁ』




実際はもう、目を細めて見てくれる人などいない




でも、ここがやっぱりお家だから・・・

あるじの変わった門の前で、今日も待っている

何年たってもそれは、ずっと変わらない

明日も、あさっても、その次も・・・

いつか、おじいちゃんおばあちゃんが迎えに来てくれるときまで



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相談を受けて、文中の猫を含めて計４匹の不妊手術を致しました
ご近所に不妊した旨を伝え、参考になるような資料をお渡しして
お話しさせていただきました

せつなくなる事例でした。
猫に罪はないのに・・・
呼べば頭を差し出すような、どの子もみんないい子達でした

なぜか菅原道真のこんな短歌が脳裏をよぎりました

東風吹かばにほひおこせよ梅の花
あるじなしとて春を忘るな



２００７，２，６