(ダウ・ジョーンズ)世界経済の成長をけん引してきた中国だが、ここにきてむしろ世界経済の足かせとなる
恐れが出始めている。
金融危機に見舞われた当初の数年間は、他の主要経済国の多くがリセッション(景気後退)に陥る中でも中国
経済は拡大を続け、世界経済の回復を支える上で重要な役割を担った。
ところが今や、米国と日本を含む他の主要経済国に確かな回復の兆しがみられる一方、中国の経済成長ペース
は急激に鈍化しつつある。
中国は世界第2位の経済大国であるため、こうした状況は世界的な回復見通しに暗い影を投げかけるばかりか
、国際金融市場の地合いを悪化させる要因ともなっている。
問題の一端は、中国の成長減速が景気循環の一局面というだけでなく、新政権の意図的な政策によるとみられ
ることにある。新政権は前政権に比べると経済成長に対する関心が低いのだ。
中国で新たに起きた信用収縮により銀行間金利は一時30%にまで上昇したが、こうした状況から中国当局がど
れだけ強い決意で住宅バブルの防止や信用拡大の抑制に取り組んでいるかが明らかとなった。
その後、中国人民銀行(中央銀行)は流動性のひっ迫を緩和するため、一部の銀行に対する流動性供給を実施
した。だが、第一財経日報が週末に報じたところによると、人民銀の周小川総裁は、国内各行の融資傾向は人民
銀の「慎重な」金融政策と相反するものだと指摘した。
1日に発表された中国6月の製造業景況指数(PMI)は、当局が放任政策に向けてどれだけ準備を進めているか
を浮き彫りにした。6月の公式PMIは前月の50.8から50.1に低下し、HSBC発表のPMI確報値も速報値の48.3から48.
2に下方修正された。後者は好不況の分かれ目となる50から一段と遠のいた。両指数とも今や製造業全体が近く
縮小する可能性を示唆している。
中国経済が当初の見方よりも急ピッチで減速していることを示す景況指数の発表とまさに時を同じくして、日
本の景気回復にようやく弾みが付きつつあることを示す調査が発表された。
日本銀行が1日発表した企業短期経済観測調査(短観)では企業の景況感が改善し、安倍晋三首相が推進する
政策が機能しているとの確信が強まった。
「当行では、2014年1-3月期にかけての実質国内総生産(GDP)成長率は、日本が他の主要7カ国(G7)諸国を
上回るとみている。短観の内容もこうした見方を裏付けているはずだ」バークレイズ銀行のアナリストらは日次
の市場概況で述べた。
企業景況感の改善を受けて安倍首相の人気が高まり、7月21日の参議院選挙では自民党が勢力を確保すると期
待されている。そうなれば、安倍首相は景気浮揚の実現に向けた経済改革の実施が容易になるだろう。
ただ、日本の経済成長は前途有望であるとはいえ、足元でくすぶる中国の成長減速懸念がこうした期待に影を
落としている。
そして、こうした懸念こそ、世界的な市場心理を圧迫する一因となっている。
「世界経済の回復期待から投資家がリスクの高い市場に戻る」という展開よりも、「中国からさらに悪い材料
が飛び出し、投資家は慎重姿勢を強め従来の安全資産に資金を滞留させる」という展開のほうが実現性は高そう
だ。
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