ワシントン（ダウ・ジョーンズ）国際通貨基金（IMF）は、欧州の銀行は2013年終わりまでにバランスシートを2兆ドル超縮小すると予想され、新たな世界金融危機をもたらすリスクをはらんでいると警告した。
IMFは新たな報告書で、ユーロ圏当局の慎重な監視がなければ、同時的かつ大規模な銀行のポートフォリオ縮小が結果として「欧州およびほかの地域での資産価格、信用供給、経済活動に深刻な悪影響を」もたらす恐れがあるとした。
最悪のシナリオを避けるために必要な政策としては、中央銀行の支援促進、必要資金を注入する手段として銀行に投資するための域内救済基金の利用拡充、リスク資産解消を進める銀行の影響緩和、金融部門の改革加速など数多くの具体策を挙げた。
報告書の中で、ユーロ圏当局からの懸命な行動がない場合、欧州は銀行資産の全世界的な投げ売りを余儀なくするリスクがあり、銀行の急速なポートフォリオ縮小は3兆8000億ドルとの見通しを示した。
これに加え、ユーロ圏の信用ひっ迫とデフォルト（債務不履行）リスクも再浮上しており、世界全体の市場崩壊という連鎖反応を引き起こす恐れがある。
また新興国市場は、自国経済からの大量資金流出で二重損失を被る可能性もあり、米デリバティブ（金融派生商品）も新たな市場崩壊に直面するかもしれない。
したがって世界経済の目先の回復見通しは砕け散るだろうと予想した。
「欧州の銀行やソブリン債への直接のエクスポージャー（投融資残高）が比較的低くても、こうしたひっ迫はデリバティブ市場を通して米国の銀行まで行き渡るだろう」と予想した。
IMFの最新の国際金融安定性報告書（GFSR）は、ドイツ銀行(NYSE:DB)(DBK.XE)、スペインのサンタンデール銀行(NYSE:STD)(SAN.MC)、フランスのBNPパリバ(BNP.FR)などユーロ圏の大手58行の分析に基づく。同報告書は、IMF春季会合と、20カ国・地域（G20）財務相・中央銀行総裁会議での課題形成に役立つ。
欧州の危機は今週末のG20会合における議題の中心になると予想されている。
IMFは世界の2012年の経済成長見通しを引き上げたにもかかわらず、欧州の危機は、世界全体の回復を促すか、制御不能な状態に陥りユーロ崩壊につながるかの分岐点になりそうだと警告した。
IMFの調査によると、調査した約50の銀行は13年までに約2兆ドルのポートフォリオ縮小計画を公表した。
11年10-12月期では、バランスシートの縮小額は5800億ドルだったと見込んでいる。
これが信用ひっ迫につながり、欧州中央銀行（ECB）が貸し出しの流れ凍結を避けるため割安な資金を提供するに至った。
しかし実際の額はこれを30％上回る2兆6000億ドルに近くなるとIMFは予想しており、全資産の約7％と、欧州銀行監督機構（EBA）に提出された資本計画が示唆する額を大きく上回っている。
銀行はさまざまな理由からポートフォリオを縮小する必要がある。多くの銀行は依然としてリスク資産を持ちすぎており、損失を補うための資本の余力も少なすぎる。
いわゆる「デレバレッジ（レバレッジの解消）」の背景には、軟調な経済や沈滞した成長、高い借り換え要求にさらされ、こうした問題への対処に苦戦していることがある。
IMFは「デレバレッジの中には不可避かつ望ましいものもあるが、正確な影響は縮小する資産の内容や縮小のペースと規模に左右される」とした。
また目先では、利下げや割安な資金の追加供給など、ECB自らが望ましいと表明しているよりも多くの行動が正当化されるようだとした。
またユーロ圏首脳陣に対し、銀行の事業再編と、破綻銀行の解体にかかわる新規則制定を加速するよう要請した。
そのほか欧州は、救済基金で不良債権の評価損を計上する銀行を支援し、銀行に直接資本注入する準備をしておかなければならないとした。
この意味で欧州が最近基金の規模を拡大した動きは「重要な第一歩だ」とした。
しかし欧州連合（EU）は、より強固な経済統合と加盟国間でのリスク共有に向け信頼できる計画の策定を開始する必要もあると指摘した。
また、域内の経済・政治大国、ドイツではこれまで支持を得られていないユーロ圏共同債の発行も推奨した。
新興国市場への影響については、新興国の大半は欧州の銀行の緩やかなバランスシート縮小には耐えられるだろうとしながらも、「特に中・東欧の新興欧州国で落ち込みのシナリオに対する底堅さが試されるだろう」とした。
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