蛇足さん 2012/05/28 16:19 のつぶやき
選挙後の政党支持率では、第二党の急進左派連合という緊縮財政反対派が、第一党の新民主主義党という緊縮財政賛成派を支持率が上回っていました。これによって世界は「ギリシャ国民がユーロ離脱を支持している」と感じて、一気にギリシャのユーロ離脱機運が高まり、世界の株式市場が下落しました。
急進左派連合は、緊縮財政を放棄しても、EUはギリシャを救済せざるを得ないので、ここまで我慢したのだから「これ以上我慢する必要はない」と訴えて国民の支持を伸ばしてきました。
ところが、その後にギリシャがユーロを離脱してドラクマに戻りますと、ドラクマの貨幣価値が50%から70%下落することで、ギリシャ国民の財産が大幅に減ってしまうこと、ギリシャはほとんどのものを輸入しているのですが、ドラクマが暴落すればハイパーインフレが起こり、さらに商品がギリシャに入ってこないこと、1000万人以上の人が喰えなくてギリシャから出ていくこと、ギリシャの輸入企業のほとんどが倒産すること、銀行に取り付け騒ぎが起こること、そして上記のようなことから「ギリシャが未曽有の不況」になることなどがわかってきたことで、前回の支持率調査では再び新民主主義党が支持率1位に返り咲きました。
今回、再び国民の政党支持率が発表されました。私は第一党と第二党の支持率の差が拡大しているのではないかと思っていましたが、今回の支持率調査でも第一党の新民主主義党が若干上回ったままでした。これは予想外の展開です。なぜならば、このまま行きますと「再び連立与党で過半数を獲得できない」事態になりかねません。
そうなりますと、再び選挙になり、この選挙、選挙が繰り返されることでギリシャの立法が完全にストップしてしまうからです。ニュースでは第一党の政党支持率が上回ったことで、ギリシャのユーロ離脱に追い込まれる懸念が弱まったとしてユーロが買い直されていますが、そこまでの安心感は出ていないと思います。
スペイン第3位のバンキア・グループに1兆9000億円の公的資金による追加支援が行われることになっていますが、これはギリシャ危機が即スペインに波及する可能性が高いことを示しています。既に、イタリアとスペインの国債が危険水域の6%を超えていると言われていますので、ギリシャ危機は絶対に起こせないというのがドイツ側の本音だと思います。
しかし、左派急進派党首が「ギリシャが突っ張っても、ドイツはギリシャを救わざるを得ない」と明言していることはとてもリスキーです。第一にドイツ国民が感情的になりますし、ドイツ国民が感情的になればメルケル首相もギリシャを救うとは言いづらいからです。つまり、今のリスクは左派急進派の党首の「ドイツを舐めた発言」ということになります。
★世界が再び金融緩和の方向へ向かっている
金融緩和は株式市場の上昇に繋がります。中国は預金準備率を引き下げることで景気へのテコ入れをしようと、二度ほど預金準備率を引き下げましたが、景気には全く効果がありませんでした。したがって、中国ウォッチャーは「中国が銀行貸し出し金利を引き下げる」方向に向かうと言いだしています。
インドは巨額の財政赤字から景気が失速しています。一部には第二のギリシャになるという話まで出ていますが、景気が悪化したときに緊縮財政を行えば更に景気が悪化しますので、インドも早晩金融緩和に向かう可能性があります。
英国は既にリセッション入りしています。キャメロン首相の支持率が急落し、キャメロン首相は何としても景気を回復させなければなりません。首相は欧州危機が英国経済を後退させたと言い訳していますが、議会は欧州危機にも関わらずドイツは好調を持続しているので、英国景気の後退はキャメロン首相の政治手腕が悪いと攻撃しています。したがって、英国も早晩金融緩和に向かう可能性があります。
欧州の景気が悪化しています。したがって、ECBも早晩金融緩和に追い込まれる可能性があります。
米国については、雇用の回復と住宅販売の回復が思わしくなく、借金による個人消費が米国経済を支えていますが、これだけでは米国景気を成長させ続けることができません。現時点ではFRB議長のバーナンキ氏だけは「欧州危機に備えて、いつでも金融緩和を行える体制」を取っていなければならないと言っていますが、FRBの理事である各州の連銀総裁は「金融引き締め」に向かうべきという姿勢を示しています。
つまり、連銀理事達は「米国経済は復活したので、金融緩和ではなく金融引き締めを行うべき」という考え方を示しています。ウォーレン・バフェット氏は「今が米国株を買うチャンス」と言っています。したがって、森田の2つの危機が米国経済を再び落ち込ませるという見方は間違っているかもしれませんが、それでも米国経済は不安定であり、欧州危機によって米国は金融緩和に追い込まれるという見方をしています。
米国が金融緩和をしますと「円高」になります。円高を阻止するために日本も金融緩和をせざるを得なくなります。
このように世界の流れは金融緩和に向かっていると思われます。金融緩和は株式市場を上昇させます。さらに、世界にはコストの掛かった投資資金があり、この投資資金の行き先として日本が候補に挙がっています。
以上から、日本の株式市場は「このまま上昇する」「一旦、8300円台まで下落してから上昇する」「一旦、8100円台まで下落してから上昇する」のいずれかのシナリオになるのではにかと思っています。
そして、タイムリミットは「6月17日のギリシャの選挙」「6月中旬のギリシャの資金ショート」「7月からのイランの経済封鎖完成の前の6月下旬に行われる、イランとの核問題の協議」という3つの大きなイベントが6月中旬~下旬にかけて行われますので、タイムリミットはそう遠くないと言えます。