ringoのつぶやき

音楽、ガーデニング、株、社会経済政治、etc・・・・日常の色々なことを書きたいと思います。

DJ-中国の投資家、米特別永住制度めぐり慎重に

2013年03月22日 21時47分30秒 | 社会経済

 【米バーモント州ストウ】ミュージカル、映画「サウンド・オブ・ミュージック」で描かれた家族の子孫、ヨ
ハネス・フォン・トラップ氏(74)は、過去1年半にわたり米北東部のスキーロッジ、ビール工場への投資をめぐ
って外国人に呼びかけ、米国ビザ取得の可能性を取引の一部に盛り込んできた。

 その間中国を3度訪問したフォン・トラップ氏は、同国の数百もの富裕層に話を持ちかけた。その際、両親が
ナチの占領下にあったオーストリアを脱出したストーリーや、これが映画化された経緯についても語った。同映
画は制作後数十年してから中国で大ヒットした。このため、ある時には北京の子どもたちによる「エーデルワイ
ス」の合唱をしぶしぶ指揮することさえあった。

 しかし、これまでの成果といえば投資家5人から250万ドルを集めるまでにとどまり、6月までに投資家44人か
ら2200万ドルを確保するという目標には程遠いのが現状だ。

 米国のバラク・オバマ大統領は、雇用創出の源として「EB-5」として知られる特別永住制度を設けた。資格を
得た米事業に50万ドル以上投資する外国人に対し、その資金で少なくとも米国人10人が雇用機会を得ることを条
件に永住権(グリーンカード)の取得をもたらすものだ。米事業は2012年9月期にこの制度を通じて18億ドル以上
を調達し、ビザは永住予定者7641人に交付された。この80%が中国人だった。

 しかし、フォン・トラップ氏が発見したように、投資家候補はかなり選別的になっている。現在、ファストフ
ード・フランチャイズからバイオ燃料施設、食肉加工プラントまで多岐にわたる米事業がEB-5資金をめぐり競っ
ている。一部のプロジェクトでは必要条件を満たすだけの雇用を生み出せず、米移民当局がグリーンカードの交
付を保留する状況を招いている。また投資資金が破綻事業や詐欺によって消滅する事例をめぐる憶測もある。

 「予想よりもはるかに困難だ」とフォン・トラップ氏は述べた。

 米当局は、ビザ認可を遅らせているのは詐欺疑惑や開発業者による雇用創出予想の不備のためだと述べている
。当局はまた、一部の予想審査に不備があったことを認めた。昨年には、この制度の管轄である米市民権移民局
は、雇用創出予測の評価を改善するためにエコノミスト6人を採用した。

 「制度の整合性を確保することに集中しており、証券取引委員会や他の規制、執行機関と協調して取り組んで
いる」と元連邦検察官である米市民権移民局のディレクター、アレハンドロ・マヨルカス氏は述べた。

 先月には証券取引委員会(SEC)がEB-5プロジェクト関連の初の提訴をシカゴ連邦裁に行い、シカゴのホテル
/コンベンションセンター計画による中国人投資家250人以上への証券1億4500万ドル以上の販売と管理費1100万ド
ルの徴収をめぐる詐欺疑惑を主張した。SECは、一部の資金は不正流用され、何も建設されていないと述べた。開
発業者の弁護士は先月下旬、連邦判事に対し、現在顧客はエスクローファンドにある資金1億4500万ドルを投資家
に返還することを望んでいると述べた。

 精査の拡大はボトルネックにつながった。9月30日までの2年間で外国人9845人がEB-5プロジェクトへの投資を
申請した。同時期に待機中だった申請者5240人が認可され、1328人は却下された。待機中または移民当局が申請
審査を続ける中で辞退した件数も数千にのぼる。

 EB-5制度は1990年に経済をリセッション(景気後退)から押し上げるために議会が設けた。米事業からの関心
は少なかったが、2008年に金融危機が直撃し、従来の調達源の活用が難しくなると状況は変わった。

 それ以降、大小の多くの定評のある事業が資金調達にこの制度を用いた。マリオット・インターナショナル(
NYSE:MAR)やハイアット・ホテルズ(NYSE:H)、ヒルトン・ワールドワイドがEB-5ファンドと組んで新しいホテルを
建設している。ロサンゼルスのEB-5プロジェクトではソニー・ピクチャーズ・エンターテインメントとワーナー
・ブラザーズのために資金を調達した。ブルックリンの別のプロジェクトでは、現在はブルックリン・ネッツの
本拠地であるバークレイズ・センターの建設資金の一部を拠出した。

 米国全土の実業家がいわゆる地域センターを設け、手数料を徴収して地元のEB-5プロジェクトの売り込みや雇
用義務を満たすか経済分析を行っている。こうした地域センターは230カ所以上ある。バーモント州のセンターな
ど、政府が経済発展を目的に設けている事例もある。

 中国での投資家候補の急増はEB-5ブームの原動力になった。裕福な中国人の間では、米国について、資産を置
き、子どもを教育し、住居を設けるのに適した場所とみなし、米国に根ざすことへの関心は高まっている。

 

 中国ではこうした投資家とEB-5機会とを結びつけることを専門にした業界が生まれた。中国の地方当局が免許
を交付する形で、数百もの移住コンサルティング会社が投資家を探す米事業を支援し、投資家ごとに手数料や料
金最高17万5000ドルを徴収している。

 ファーストパスウェイズのボブ・クラフト社長は、ミルウォーキーの地域センターでEB-5プロジェクトを統括
しており、ここ数年では中国を43回訪問し、ウィスコンシン州のホテル・製造プロジェクト向けに200以上の投資
家から1億ドル強を集めた。「新たに飛び込んできた多くの人はその複雑さを認識していない」とクラフト氏は語
った。「向こうで信頼を得るには時間がかかる」。

 無能または誠実さに乏しい米国の事業家らが推進した、問題を抱えたプロジェクトは中国人投資家に警戒感を
もたらした。グリーンカードをもらえずに自国に送還された中国人家族について知る上海のEB-5コンサルタント
、アルバート・ヤング氏は、「ルールを本当に知る人はおらず、投資家を得るために多くの不実表示がなされて
いる」と語った。

 中国や他国から数十もの投資家がこの制度に参加する複数の事業を提訴した。昨年のルイジアナ州では31前後
の投資家が連邦裁に提訴し、1550万ドルの投資について示されたのはニュー・オーリンズからミシシッピー川を
隔てた未開地のみだと主張した。このうち少なくとも15人は中国の投資家だ。このプロジェクトの米国資金調達
者2人の弁護士は、この訴訟の却下を求めており、その一因として移民当局がこのプロジェクトにかかる投資家の
雇用創出予測を承認しなかったことをあげた。

 カリフォルニア州サンブルーノでは、中国人投資家3人が昨年になって州裁に提訴し、EB-5開発業者がカラオ
ケバーで心臓発作のふりをして消息不明となり、その側近が彼の死去をめぐる話をでっち上げたことなどで300万
ドルを失ったと主張した。1月には、裁判所は投資家に不履行の判断を与えたが、これは開発者が出廷しなかった
ためだ。

 ワシントンの大学院生、チェリー・チャンさん(24)はミズーリ州モバーリーの人工甘味料工場に50万ドル投
資した。昨年には、ミズーリ州当局は開発業者を逮捕し、公共債券の資金70万ドルを盗み、その一部をビバリー
ヒルズの住宅が競売にかけられることを回避することに充てたと主張した。デベロッパーの弁護士は、顧客は容
疑を否認していると述べた。この件は係争中で、チャンさんは、北京の公認移住コンサルタントから資金を回収
したが、手数料4万ドルを徴収されたと述べた。

 フォン・トラップ氏が11年にその追求を開始した際の状況はこうしたものだった。トラップ・ファミリー・ロ
ッジを中心とする一族の事業はゲストルームの改修、タイムシェア部門の拡充、地ビール事業の拡張に向けて資
金を必要とした。バーモント州によると、州内の他の2つのスキーリゾート、ジェイ・ピーク・リゾーツとシュガ
ーブッシュ・リゾートは屋外パワー機器メーカーのカントリー・ホーム・プロダクツとともにEB-5資金を累計で
3億ドル以上調達した。こうした事業は州が設立したバーモント地域センターの一部だ。

 フォン・トラップ氏は他の調達源を検討し、これには債券資金と銀行融資を活用するバーモント経済発展機構
の制度も含まれた。最も好ましい方法は大半をEB-5資金で占めることだと同氏は判断した。

 トラップ・ファミリー・ロッジは、バーモント州観光業界全体とともにリセッション(景気後退)によって大
きな打撃を被った。12年の同ロッジの純損益は45万6053ドルの赤字(前年は16万6000ドルの黒字)だった、とフ
ォン・トラップ氏の会計士は明らかにした。

 中国の移民当局高官をEB-5プロジェクトの販売面で支援するコンサルタントは、フォン・トラップ氏に対し、
その家族の歴史は中国人に訴求する上で大きなプラスだと伝えた。1970年代後半に文化大革命の終わりとともに
検閲が緩和されるとともに「サウンド・オブ・ミュージック」は広く公開され、人気を集めた。

 トラップ・ファミリー・ロッジの取締役会メンバーとしてフォン・トラップ氏に随行して中国を2回訪問した
経緯を持つジェームス・ドウィネル氏は、1965年制作の映画は中国人の間で大きな反響を呼んだと述べた。「中
国のある世代は、特に女性が『サウンド・オブ・ミュージック』とともに育ち、すべての曲に精通している」と
同氏。

 フォン・トラップ氏は、マーケティングのための初の中国訪問において、投資家に企業の優先株を付与する有
限責任形式の株式を販売するよう目指した。中国の投資家は「これに冷ややかだった」と同氏は振り返る。有限
責任パートナーシップがロッジ運営にかかる経営権をもたらさない理由が理解されなかった。

 このため、同氏はこの取引をデット方式へと切り替えた。現在は、事業に年1%の低金利で5年ローンを提供す
る有限責任形式の株式を販売している。

 EB-5規則の下では、ロッジの昨年の赤字はこれを「問題を抱える事業」と分類するのに十分な重大な展開だっ
た。しかしそれには利点もある。雇用創出集計は、グリーンカード発行を左右する肝要な数値だが、トラップ・
ファミリー・ロッジでは創出職のみならず保持職をも盛り込むことができる。

 提案書類の中で、フォン・トラップ氏のエコノミストは、プロジェクト完工時のロッジは200職の保持のみな
らず、3年以内に904の新規雇用につながると主張した。これにはビール工場・レストラン「トラップ・ラガー」
の66職や、経済に設備投資が浸透する中での「間接的」雇用が含まれる。

 「投資家の最大の懸念はビール工場が十分な雇用創出につながるかにあった」とフォン・トラップ氏は語った

 「問題を抱える事業」という分類が投資家候補の警戒感につながることはいうまでもない。ヨハネス氏の息子
、サム・フォン・トラップ氏(40)は、中国に11月から12月にかけて18日間滞在し、投資家を募集したが、これ
は「大いなる屈辱」になったと述べている。

 12月のある土曜日に、北京のホテル会議室で20数名の人々を前に、サム氏はサウンド・オブ・ミュージックで
主演男優クリストファー・プラマーが着用したジャケットを着てスライドショーを公開した。「トラップ・ファ
ミリー・ロッジのモットーは『A little bit of Austria, a lot of Vermont』だ。映画サウンド・オブ・ミュー
ジックで描かれたわが家族の歴史を知っている人もいることだろう」と同氏は伝えた。

 これに参加したある国有企業の従業員だという55歳の女性は、より良い生活環境と子どものための優れた教育
を求めていると述べた。

 「娘は現在10歳だが、中学校の後は彼女に米国で学ばせたい」と自らをワンとだけ名乗ったこの女性は語った
。「このプロジェクトについては、このプロジェクトが成功しなかった時にお金を失う可能性を心配している。
またこのサウンド・オブ・ミュージック・プロジェクトに投資額以上を支出する必要性が生じることも」とワン
さんは続けた。ヨハネス・フォン・トラップ氏はその後、彼女は結局投資しなかったと述べた。

 すでにエスクローに資金を投じた投資家5人に加えて、約20人が中国から「資金を送金するためのさまざまな
段階にいる」が、これは中国における海外への資金送金をめぐる複雑な手続きのためだと同氏は語った。

 一方、積雪量の多いスキータウン、ストウでは、フォン・トラップ氏は最近、投資を検討しているという北京
の42歳の建築士と協議した。

 「わが家族は幸運にも1938年に米国に来ることができた」とフォン・トラップ氏は述べ、通訳者が中国語でこ
れを伝えるのを待った。「米国に家族が来ることを支援するのは光栄なことだ」。

 建築士はプロジェクトや取引条件の詳細について質問した。「私の投資が安全であることをどうすれば知るこ
とができるのか」と同氏はある時点で質問した。「グリーンカードの資格を得るのに十分な雇用を創出するとい
かにして知ることができるのか」。

 サム・フォン・トラップ氏はリゾート施設を案内し、フォン・トラップ一族の家や一族がレストランでの食事
用に牛を飼育している牧場、昨年にロッジやバーモント州のバー、カフェで販売しているビール1000バレル前後
を製造した既存のビール工場を見て回った。

 その週末のロッジは満室だったため、建築士はヨハネス氏の家に滞在した。

 その後の電子メールで、パンとだけ名乗ったこの建築士はその子ども2人に中国以外での教育を受けさせたい
が、現在は適した時期ではないと判断したと述べた。「子どもたちがもう少し大きくなるまで待ちたい」とパン
氏は伝えた。「高校生になるころに移住したい」。
-0-

 


(続く)

Copyright (c) 2013 Dow Jones & Co. Inc. All Rights Reserved.



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。