保健福祉の現場から

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地域枠離脱者

2018年07月29日 | Weblog
m3「「地域枠離脱者」採用病院に公開ヒアリング、臨床研修部会 「制度を破壊する」「大学、国立病院に驚きを禁じ得ない」」(https://www.m3.com/news/iryoishin/618863
)。<以下引用>
<厚生労働省の医道審議会医師分科会医師臨床研修部会(部会長:桐野高明・東京大学名誉教授)は7月26日、2018年度から臨床研修を始める新卒医師で、従事要件があるにもかかわらず、地域枠を離脱した地域枠制度利用者を採用した9病院に公開でヒアリングを行った。構成員からは「制度の根幹を揺るがす」「奨学金を返済すれば良いというものではない」「大学病院や国立病院機構が含まれているのは驚きを禁じ得ない」などと、厳しい指摘が相次いだ。厚労省では地域枠離脱学生への対応を進めており、2017年度からマッチング参加病院に対して、地域枠学生一覧を送付したり、地域枠かどうかの確認をすることなどを求める通知を発出したりするなどしている。2018年開始地域枠研修医、1.3%が離脱 2018年度開始の臨床研修において、地域枠学生の採用結果について調査したところ、都道府県が認識している地域枠制度利用者(以下、利用者と表記)805人だった。そのうち初期研修での従事要件がある利用者は764人。そのうち要件に従って研修しているのは702人(従事要件対象者764人を分母として91.9%、以下同様)、従っていないのが62人(8.1%)だった。地域枠非離脱者は52人(6.8%)で、内訳は国試不合格者41人、卒試不合格者9人、既卒(病気療養中)1人、無期停学1人だった。地域枠離脱者は10人(1.3%)で、そのうち1人は2年連続不合格で対象から外れた利用者。問題となったのは、残りの9人だった。厚労省の調査による、離脱に関する事情は以下の通り。■病院側の採用理由・本人から地域枠離脱について申告があったため(7人)・地域枠であることが確認できなかったため(1人)・制度の誤認識のため(1人) ■本人の離脱理由(都道府県への申告)・自己都合(希望する研修、実家、結婚等)(7人)・健康上の問題(2人)■地域枠の離脱時期・採用決定前に離脱(3人)・採用決定後に離脱(6人) 9人を採用した病院に対してヒアリングを実施した。各病院の説明は以下の通り。※ヒアリング順 愛媛生協病院(愛媛県) 定員2人の採用を予定していたが、1人が国試不合格となった。空き枠に対して、2018年3月に当該学生から「研修先が決まっていないので4月から研修させてほしい」と電話があった。大分大学を卒業後、1年間国試浪人をしていた。父方の実家が愛媛県にあり、研修は愛媛で希望していたとのこと。他の愛媛県内の病院を受験していたが、アンマッチだった。大分県の地域枠であったが、本人は「大分県担当者とは早いうちから相談をしていたが、国試を合格しないと話が具体的に進められなかった。合格後に地域枠離脱の了承を得た」と説明した。以上を聞いた上で、3月に採用試験を実施し、採用となった。3月27日に大分県の担当者に直接確認し、地域枠離脱の証明書を発行してもらった。いわき市立総合磐城共立病院(福島県) 2017年7月に申し込みがあった。申込書類には修学資金の借入状況を記載する欄を設けており、そこで地域枠かどうかを判断しているが、「借り入れなし」と記載してあった。面接でも地域枠の話がなかった。マッチングでは15人中4位で登録した。その後、厚労省から地域枠一覧を受け取った。福島県以外の地域枠の学生が申し込むことはないと思い込み、県外の学生には確認を行わず気づかなかった。翌年3月に合格の報告があり、採用した。熊谷総合病院(埼玉県) 2017年6月に見学があった。8月に書類提出があったが、地域枠の記載がなかった。9月に行った面接で、「栃木県の地域枠離脱を相談している」との申し出があった。採用枠は6人で、当該学生は優秀であり、奨学金を返済しているとのことで、2位で登録した。10月に大学に地域枠離脱の書類を提出したと報告があり、採用した。昭和大学藤が丘病院(神奈川県) 産婦人科、小児科キャリアパス支援プログラムは4人が定員だったが、1人が国試不合格で空いていた。2月に当該学生から希望があった。本人から富山大に地域枠の推薦で入学し、富山県の従事要件、返済義務があることを伝えられた。本人から、「富山県内のマッチングが上手くいっていない場合は、他県でも問題ないと説明を受けた」と説明された。大学から都道府県に照会はしなかった。日野市立病院(東京都) 採用枠2人。当該学生からの書類では、地域枠であることは確認できなかった。地域枠の学生が応募してくるとは考えていなかった。4人の応募があり、面接で当該学生を含めて2人を採用と判断した。厚労省からの一覧で、地域枠であることを知り、その日に富山県庁に確認した。県庁からは「本人とは面談しており、県として了承済み」との回答だった。本人とも電話をし「家庭の都合で東京に戻ることになった。奨学金は返済済みで、大学、県庁とも話し合いをして了承済み」と説明を受けた。国立病院機構京都医療センター(京都府) 2017年8月に面接をしたが、当該学生から地域枠という申し出はなかった。厚労省からの一覧で把握したため、院内で対応を検討した結果、マッチング対象にしないと決定し、本人に通知をした。翌日、本人から「滋賀県の従事要件では4年間の猶予がある」と説明があり、滋賀県に確認したところ「県外で受験することは制限していない」とのことだった。非常に優秀であり、マッチング上位で登録した。その後、12月に近畿厚生局に相談したところ、「文書の形で残すべき」とのアドバイスを受けた。再度、滋賀県に要請したところ、「初期研修は猶予に入っていない」と判明した。その結果、本人と県で話し合いがあり、最終的に修学資金を返還するため「やむを得ない」と判断したと聞き、採用に至った。近畿大学医学部奈良病院(奈良県) 近畿大は本院が大阪、分院が奈良県にある。当該学生は8月に面接した。マッチング登録後に地域枠一覧が送られてきて、そこで地域枠であることを初めて知った。大阪府の地域枠であり、本人に「奈良県での研修は困難」と伝え、大阪府にも連絡をした。大阪府から「奈良県で研修するなら全額返納してもらう必要がある」と言われた。本人に県と相談するように伝えた。その後、本人が本院での研修を熱望し、奨学金を返済したので採用した。本人のバックグラウンドだが、当該学生は地域枠に申し込んだ時点では、大阪府で産婦人科医を目指していた。当該学生の父は耳鼻科を開業しており、当該学生の弟、もしくはいとこが継ぐ予定だったが、2人とも医師になる見込みがなくなり、当該学生が耳鼻科を継承しなくてはならなった。耳鼻科の臨床実習を奈良病院で行っており、それで分院を強く希望した。太田記念病院(群馬県) 当該学生は群馬県出身、高知の大学に進学した。当初から臨床研修は群馬県を希望した。5年生の夏に、見学に来た。6年生でも2回見学が来た。3回目の見学時に話したところ、「高知県の担当から問題がないと言われている」と説明があった。今回の厚労省からの連絡を受けて、2018年7月に本人にヒアリングをしたところ、「県庁や医学部長、地域医療担当教授の了承を得ている」と説明があった。神戸掖済会病院(兵庫県) 当該学生は2次募集の学生。最初のマッチングでフルマッチではなく、2次募集をしたところ、問い合わせがあった。電話をした際に、「地域枠の学生だが、離脱するので受験したい」と説明があった。こちらからは「それが確定しないといけないよ」と伝えた。10月に再び連絡があり、「高知県と話し合いを行い、地域枠を離脱した。在籍する兵庫医大にも相談したところ、良いと言われた」と説明があった。桐野座長「地域枠が破壊される」 日本医師会常任理事の羽鳥裕氏は「『お金を返したからいいのでは』という回答が多すぎる。道義的責任を問うべき。(地域枠の) 推薦枠で医学部に入った人もいる。(一般試験なら)合格点に達していない人がいる可能性もある。明らかに不公平である」、順天堂大学学長の新井一氏は「国立病院や大学病院が受けいれるのは驚きを禁じ得ない。原則論としても何らかの介入が必要だと思った」などの厳しい指摘が相次いだ。和歌山県立医科大学理事長・学長の岡村吉隆氏は「制度の整備が必要だが、根本的には地域枠学生がルールを守らないことがあり、それを受け入れる病院がある。9つの病院のホームページを見たが、どこも地域医療の重要性を言っている。しかし、それぞれの先生が言っているのは自分の地域のこと。日本全体を考えてほしい。個々の例を見ると確信犯。”犯”と言っていいか分からないが。病院へのヒアリングでは、大変優秀な学生という意見があったが、倫理観から見たら最下位であり、考えてほしい」と病院側の対応を問題視した。座長の桐野氏も「金を返せば良いという風潮が広がると、地域枠が破壊される」との危惧を示した。構成員にはその場限りで、個別の理由を記した紙が配られた。岡山県精神科医療センター理事長の中島豊爾氏は「『精神科の診断書がある』とあったが、いい加減な精神科医もいるのでそれだけでは理由にならない」と指摘。公開ヒアリングについては「これも一つの抑止力として働く。9人は微妙な数字。大きく増えていく可能性もあるのでちゃんとした対応が必要」と強調した。横浜市立大学附属病院長の相原道子氏は「不謹慎かもしれないが、離脱者1.3%でこんなに少ないのかと思った。地域枠の制度はそれなりにちゃんと動いたのだと思う」と指摘。地域枠の在り方を巡っては、岡本氏は「一般枠の学生にとって、地域は彼らに任せればよいとなると良くない。地域枠の魅力づくりも必要」、社会医療法人財団董仙会理事長の神野正博氏は「一般枠で地域に残る学生にメリットがあるべき」と提案した。都道府県「法的に阻止できず、道義的責任を」 9人の離脱者に関連した都道府県からの意見の一部は以下の通り。・離脱に関しては、県と貸与者とは民法に基づき金銭貸借契約を結んだ関係にすぎず、償還の意思があれば法的に阻止することはできず、認めざるを得ない。一方、地域枠で入学した事実は変わらず、その道義的責任は問われるべき。・県および大学からの問いかけに対して非常に攻撃的な態度を取り、時には県および大学の発言を隠れて録音するなど、信頼関係が崩壊している状況が続いた。・推薦入試であったため、出身高校に対して地域枠の趣旨を理解して推薦してほしい旨の文書を送付し、出身高校からは推薦を取り消す処理をしたこと、今後、このようなことがないようにするとの謝罪があった。地域枠離脱者採用病院にペナルティ 厚労省は地域枠離脱者対策として以下の3つを論点として提示した。(1)地域枠で入学している者について、県や大学がその地域枠の従事要件からの離脱に合意していない場合には、地域枠制度の趣旨や地域医療の安定的確保を尊重する観点を鑑み、臨床研修病院等が趣旨に反した採用をすることは望ましくない旨を周知することについて、どう考えるか。(2)上記取り組みにも関わらず望ましくない者に対して、希望順位登録や二次募集等における採用を行った臨床研修病院については、医師臨床研修部会でのヒアリングを行った上で、必要に応じて補助金の減額、採用人数の減員または指定の取り消しを検討することについて、どう考えるか。(3)地域枠の従事要件からの離脱が行われていない研修希望者に対して、臨床研修病院が誤って希望順位登録を行うことができないようシステム等改修を行うことについてどう考えるか。いずれも了承された。(1)については近く通知を出す。(2)と(3)については、2020年度研修開始の採用において実施していく方針を示した。>

医道審議会医師分科会医師臨床研修部会(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-idou_127790.html)の資料が出れば見ておきたい。2020年度研修より医師臨床研修制度の見直しが行われる(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10803000-Iseikyoku-Ijika/0000201187.pdf)。「医療法及び医師法の一部を改正する法律」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000203213.pdf)は、医療計画(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/index.html)、地域医療構想(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000080850.html)、「公的医療機関等2025プラン」(http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20170804_01.pdf)、「新公立病院改革プラン」(http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/c-zaisei/hospital/hospital.html)とも密接に関連する。厚労省資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000167959.pdf)p21~24「医師の地域的な適正配置のためのデータベース」を通じて、「医師の人事については、各医局独自に行うのではなく、「山形大学蔵王協議会」内に、「地域医療医師適正配置委員会」を設置、医師以外の人も交え、透明性を確保しつつ、適材適所を進めている。」(https://www.m3.com/news/iryoishin/532401)の普遍化が期待される。自治医大出身医師(義務年限内)の派遣は知事権限ではあるが、地元大学、都道府県医師会、病院団体等とスクラムを組んだ都道府県ガバナンスの強化が欠かせないであろう。医師の偏在対策・適正配置には透明性が重要である。
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