保健福祉の現場から

感じるままに

在宅医療・介護連携の制度化と保健所

2013年09月10日 | Weblog
公衆衛生情報8月号に「在宅医療・介護の展望」が特集されている。p6では「医師会と行政が一体となって取り組むことに意味がある」とし、「公衆衛生医の方が同じ医師という立場からやり取りをリードしてくださることも有効でしょう。」とあるのが目にとまった。社会保障審議会介護保険部会資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000018729.pdf)p22「在宅医療・介護連携拠点の機能について、現在の地域包括支援センターによる包括的支援事業や地域ケア会議と役割分担や連携方法に留意しつつ、介護保険法の中で制度化してはどうか。」「これまで在宅医療の提供体制等への関与が少なかった市町村の取組を推進するために、都道府県が積極的に支援することが必要ではないか。」「小規模市町村での取組を円滑に進めるため、複数の市町村による共同での事業を認める等の措置が必要ではないか。」「在宅医療・介護連携拠点の機能については、医療計画との調和も図りながら、介護保険事業(支援)計画に記載することとしてはどうか。」、p24「具体的には、医療に係る専門的な知識及び経験を活用した地域における医療と介護の連携の推進について介護保険法の地域支援事業の包括的支援事業に位置づけ、市町村が主体となり、取り組むこととしてはどうか。」「その際、現行制度では包括的支援事業を委託する場合、事業の全てにつき一括して行うことと規定されているが、医療に係る専門的な知識及び経験が必要である業務の趣旨に鑑み、在宅医療・介護の連携推進に係る事業については、これらを適切に実施できる事業体に、他の事業とは別に委託できる仕組みが必要ではないか。」とあり、今後、地域支援事業の包括的支援事業として、市町村から郡市医師会に対して、在宅医療・介護連携拠点機能が委託されようとしていることは知っておきたい。「医師会と行政が一体となって取り組むことに意味がある」はいうまでもないが、市町村行政だけでは弱い感じがする。実際、厚労省資料(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001oxhm-att/2r9852000001oxlr.pdf)p17~19の地域包括ケアに関する保険者の評価項目では、「地域連携パスの作成」「地域の急性期病院との連携のための会議」「地域連携パスを協議する場」「地域の回復期病院、維持期リハ関連施設との連携のための会議」など、医療に関連した項目の実施率が非常に低い。おそらく、「保険薬局を活用した在宅麻薬管理」もそうであろう。地域保健法第8条(http://www.ron.gr.jp/law/law/hokenjo.htm)、介護保険法第38条(http://www.ron.gr.jp/law/law/kaigo_ho.htm)、健康増進法第18条第2項(http://www.ron.gr.jp/law/law/kenko_zo.htm)、精神保健福祉法第49条第3項(http://www.ron.gr.jp/law/law/seisin_h.htm)、母子保健法第8条(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S40/S40HO141.html)など、各種法律で保健所による市町村支援が規定されており、この際、市町村をサポート・アシストする「保健所」の存在をクローズアップすべきではないか。原則、保健所長が医師であるばかりではない。保健所には、各種専門職(医師、保健師、歯科医師、薬剤師等)の配置や医事・薬事関連業務(従事者免許事務、医療統計事務、各種届出事務、立入検査、医療安全相談、医療計画等)など、市町村にはない特性があり、職能団体(医師会、看護協会、歯科医師会、薬剤師会等)とのつながりもある。感染症対策や集団給食指導、食品衛生対策等を通じて、普段から介護・福祉施設との関わりがある。様々な事業を通じて、住民組織や患者・家族団体にも働きかけしやすい、など、保健所は、在宅医療・医療介護連携・地域包括ケアを推進する上で、絶好の立場にあることを認識したい。全国保健所長会から厚生労働省に対する要望書(http://www.phcd.jp/osirase/130821yobo-1.pdf)p16では「保健所には、各種専門職の配置や医事薬事関連業務など市町村にはない特性があり、保健所と市町村との連携・協働による地域包括ケアを推進されたい。また、国の法令等において、地域包括ケアシステムの推進における保健所の具体的な役割について明記するとともに、各地(都市部、郡部)の優れた取組みの普及など、保健所が取り組むための技術的・財政的な支援を図られたい。」とある。地域保健法(http://www.ron.gr.jp/law/law/hokenjo.htm)第4条に基づく「地域保健対策の推進に関する基本的な指針」(http://www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1344472453581/files/zenbun.pdf)では、p2、p5、p12で医療介護連携における保健所の役割が明記されている。また、医療計画(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/)(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000036ff1-att/2r98520000036fkg.pdf)において、在宅医療、精神疾患(認知症含む)が位置づけられたのは大きく、がん(緩和ケア含む)、脳卒中(急性期~維持期)とも併せて、医療計画の一環で推進すべきであり、厚労省通知(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/dl/tsuuchi_iryou_keikaku.pdf)p36では「圏域連携会議は、各医療機能を担う関係者が、相互の信頼を醸成し、円滑な連携が推進されるよう実施するものである。その際保健所は、地域医師会等と連携して当会議を主催し、医療機関相互または医療機関と介護サービス事業所との調整を行うなど、積極的な役割を果たすものとする。」と、ここでも保健所の役割が明記されている。にもかかわらず、公衆衛生情報8月号「在宅医療・介護の展望」特集には一切「保健所」の文字がないのは奇異に感じられて仕方がない。それでもp6「公衆衛生医の方が同じ医師という立場からやり取りをリードしてくださることも有効でしょう。」は素直に評価したい。一応、「在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会」(http://www.iog.u-tokyo.ac.jp/kensyu/index.html)はみておきたい。なお、一口に市町村といってもピンキリであるように、郡市医師会もそうである。それは郡市医師会事務局の職員体制をみれば容易にわかるであろう。郡市医師会にとっても、市町村をサポート・アシストする「保健所」の存在は期待されるように感じる。
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