保健福祉の現場から

感じるままに

過剰診療と医療費適正化

2016年07月28日 | Weblog
メディウォッチ「超高額薬剤の薬価、検討方針固まるが、診療側委員は「期中改定」には慎重姿勢―中医協総会」(http://www.medwatch.jp/?p=9831)。<以下引用>
<オプジーボ(ニボルマブ製剤)など超高額薬剤の薬価のあり方について、当面「期中の薬価改定をすべきか」「最適使用推進ガイドラインを医療保険上でどう取り扱うべきか」という議論を行い、年内に結論を出す。あわせて抜本的に薬価制度全般のあり方を検討していく―。このような検討方針が、27日に開かれ中央社会保険医療制度協議会の総会で了承されました。「期中の薬価改定」は診療側委員から検討要望が出されたテーマですが、この日の総会で診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は「医療機関経営への影響もあり、慎重な検討が必要である」とコメントしています。薬価制度を抜本見直し、当面は「最適使用」の推進などを検討 画期的な抗がん剤であるオプジーボや、C型肝炎治療薬のハーボニー錠(レジパスビル・ソホスブビル)など、超高額な医薬品の薬価収載(保険収載)が相次いでおり、これが医療費を押し上げ、医療保険制度の維持が困難になるのではないかと指摘されています。とくにハーボニー錠などのC型肝炎治療薬の使用拡大によって、昨年度(2015年度)後半から1人当たり医療費の伸びが非常に大きくなっていることが分かっています。またオプジーボについては、当初、希少がんである「根治切除不能な悪性黒色腫」(推定対象患者は470人)の治療薬として超高額な薬価(100mgで72万9849円)が設定されましたが、その後、「切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん」(推定対象患者は5万人)へ適応が拡大されたものの薬価は据え置かれました(後述するようにタイミングの関係です)。こうした状況を踏まえて、中医協や社会保障審議会・医療保険部会では「超高額医薬品の薬価のあり方を見直すべきではないか」という議論が熱を帯びているのです。27日の中医協総会には、厚生労働省から次のような対応(検討)方針が示され、了承されました。(1)薬価のあり方全般について抜本的な見直しを検討していく(2018年度改定以降)(2)当面の対応として、(a)オプジーボに対する特例的な対応(b)最適使用推進ガイドラインの医療保険制度上の取り扱い―の2点を検討していく(年内目途に結論) オプジーボ薬価の期中改定、「薬価引き下げ財源のあり方」など考慮せよと診療側委員 (2)の(a)は、端的に「期中の薬価改定(再算定)を行うべきか、行うとした場合、どのような対応が考えられるか」というテーマです。薬価は通常2年に一度見直されますが、現行ルールでは「効能・効果の追加によって市場規模が大幅に拡大しても2年を超えて当初の高額な薬価が維持される」場合もあります(オプジーボでは適応拡大が2017年12月であったため、2018年度の再算定対象とならず、現行ルールであれば2018年3月末まで高薬価が維持される)。また特にオプジーボについては、前述のとおり当初は希少がんを対象として高額な薬価を設定したものの、対象患者が大幅に拡大されたにもかかわらず、高額な薬価が維持されており「アンフェアではないか」との指摘が出ていました。とくに診療側の中川委員は「期中改定も検討すべきではないか」と中医協で強く要請を行っていました。そこで厚労省は、オプジーボについて2018年度の薬価改定を待たずに再算定(期中改定)を行うべきか、行うとした場合、どのような対応・手法が考えられるかを検討テーマに掲げたものです。しかし27日の中医協総会で中川委員は、「薬価の引き下げ分が診療報酬本体のプラス財源に充てられることが担保されれば期中改定は認められるが、そうでない場合、期中改定は慎重に検討する必要がある」とやや物言いをトーンダウンさせました。かつては薬価の引き下げによって生まれた財源は、診療報酬本体の引き上げ財源に充当されてきました。しかし、昨今ではこの構図が崩れてきており、医療機関の経営に悪影響(収入源)を及ぼしています。中川委員はこの点も考慮しなければならないと指摘しています。ただし期中改定をしなかった場合には、2018年度の薬価改定で「期中改定をしなかったことで製薬メーカーが得た利益」を考慮した厳しい見直し要望が診療側委員から出されることも予想されます。最適使用促進GL、保険制度の中でどこまで拘束力を認めるべきか (2)の(b)の最適使用促進ガイドラインは、厚労省の医薬・生活衛生局で検討されているもので、▽対象医薬品の使用が「最適」と考えられる患者の選択基準▽対象医薬品を適切に使用できる医師・医療機関などの要件―が盛り込まれます。当面、「オプジーボ(類薬を含む)」と高脂血症用薬の「レパーサ(同)」が対象医薬品と想定されています。具体的には、承認・審査と並行して「実際に当該医薬品を使用する場合に、最適と考えられる患者はどのような人か、どのような知識・技術をもった医師が投与すべきか、副反応が生じた場合にどのような体制を整備した医療機関であれば適切に対処できるか」といった事項を関係学会とPMDA(医薬品医療機器総合機構)で検討し、ガイドラインとして策定します。厚労省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課の磯部総一郎課長は、「治験データなどをもとに当該医薬品の有効性・安全性に問題がないかを審査し、承認されれば『添付文書』となる。これと並行して、最適使用のために必要な事項をガイドラインで定める」旨を説明しています。この点について中川委員や同じく診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)は、ガイドラインの作成にあたり「中医協からの意見の反映」や「医療経済学的見地からの検討」が必要と指摘。磯部医療機器審査管理課長は、「新薬であれば、審査の過程で効能・効果の変更があるなどするので難しいが、オプジーボなど既収載品目であれば中医協の意見を反映させることが可能である」として、医薬・生活衛生局と保険局(中医協を所管)で連携していくことを強調しています。なお、中医協で検討する「最適使用推進ガイドラインの医療保険上の取り扱い」とは、留意事項通知などへの記載を意味すると考えられますが、これが、どこまでの拘束力を持つのかが気になります。中川委員は「医師の裁量は一定程度認めるべきである」と主張しましたが、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、「裁量を広く認めたのではガイドラインの意味がない。定量的な基準を定める必要がある」と反論しています。「皆保険の維持」と「イノベーションの推進」を両立させる薬価制度が必要 なお、(1)の「薬価の抜本的な見直し」について厚労省は、▽効能・効果などの拡大で大幅に市場規模が拡大するような事態に対応できる仕組みを構築する▽国民皆保険の維持とイノベーションの推進の両立を踏まえる▽医薬品の最適使用を推進する▽既存治療との費用対効果の比較なども考慮する―という基本的な考え方も示しています。このうち「既存治療との比較」とは、例えばハーボニー錠のようにC型肝炎の根治が期待できる医薬品では、「新薬の薬価」と、「既存薬の置き換えで得られる費用」「将来の肝硬変や肝がん治療が不要となることで得られる費用」などとを比較衡量するというイメージです。以前に中川委員が指摘したように、単純に「超高額薬剤」と一括りにするのではなく、「根治が望めて、将来の医療費削減も見込める薬剤」「延命が期待される薬剤」などに分類した議論が必要でしょう。>

ミクスオンライン「小野薬品 免疫チェックポイント阻害薬オプジーボ 頭頸部がんの効能追加を申請」(https://www.mixonline.jp/Article/tabid/55/artid/54424/Default.aspx)。<以下引用>
<小野薬品とブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)は7月27日、がん免疫チェックポイント阻害薬オプジーボ(一般名:ニボルマブ(遺伝子組換え))について、「再発または遠隔転移を有する頭頸部がん」の効能追加を申請したと発表した。申請企業は製造販売元の小野薬品。16年1月に早期有効中止となった第3相無作為化非盲検臨床試験「CheckMate-141」に基づく申請となる。同剤は両社で共同販促している。再発または遠隔転移を有する頭頸部がんでは、プラチナ製剤を中心とした化学療法が推奨されている。しかし、化学療法施行後早期に再発が認められ、局所治療の適応とならない場合では生存期間の延長が検証された治療選択肢がなく、新たな治療選択肢が求められている。CheckMate-141試験は、プラチナ製剤による治療歴のある再発または転移性頭頸部扁平上皮がん患者を対象に、オプジーボと治験担当医師が選択した治療(メトトレキサート、ドセタキセル、セツキシマブ)を比較評価したもの。全生存期間(OS)を主要評価項目としたこの試験では、オプジーボ群で30%の死亡リスクの低下が認められ、OSの中央値はオプジーボ群7.5か月、対照群5.1か月だった。1年の全生存率はオプジーボ群36%、対照群16.6%だった。安全性プロファイルは「これまでの試験結果と一貫しており、新たな安全性シグナルは認められなかった」としている。オプジーボは世界初のヒト型抗ヒトPD-1モノクローナル抗体。日本では14年7月に根治切除不能な悪性黒色腫の効能で承認され、15年12月には切除不能な進行・再発の非小細胞肺がんの効能を追加した。腎細胞がん、ホジキンリンパ腫で現在、申請中となっている。>

中医協総会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-chuo.html?tid=128154)の「高額な薬剤への対応について」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000131476.pdf)、「「最適使用推進ガイドライン」の概要(案)」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12404000-Hokenkyoku-Iryouka/0000131477.pdf)が出ている。高額薬剤の最適使用は不可欠であるが、一方で、医薬品の開発には成長戦略としての観点も重要と感じる。さて、医療費適正化に関連して、医療保険部会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho.html?tid=126706)にある「高額療養費、後期高齢者の窓口負担」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000130224.pdf)の行方にも注目である。今後の負担増に対して不満を叫ぶだけではなく、この際、「過剰診療」についても社会全体で考えたいものである。例えば、キャリアブレイン「Choosing Wiselyは医療肯定- 持続可能な医療のために(1)」(http://www.cabrain.net/news/article/newsId/48680.html)では、総合診療指導医の勉強会「ジェネラリスト教育コンソーシアム」が作成した「日本版の過剰診療リスト」には、「無症状の健康な人にPET検診は勧めない」「無症状の健康な人に腫瘍マーカー検査は勧めない」「無症状の健康な人に脳MRI検査は勧めない」「自然に治る非特異的腹痛に腹部CT検査は勧めない」「医学的適応のない尿路カテーテル留置は勧めない」とある。また、日本を含めた17カ国の専門家による国際会議で採択された10の提言は、①風邪に抗菌薬治療はやめよう、②自然に治る腰痛にMRI検査はやめよう、③低リスク患者に術前検査はやめよう、④進行認知症に胃ろう手術はやめよう、⑤医学的適応のない尿路カテーテル留置はやめよう、⑥低リスク患者に冠動脈CT検査はやめよう、⑦エビデンスのないがん検診はやめよう、⑧低リスク患者に毎年の骨密度測定はやめよう、⑨高齢者に鎮静薬や抗精神病薬の長期処方はやめよう、⑩自然に治る頭痛に脳MRI検査はやめよう、である。おそらく、これらが現場で徹底されれば、それなりの医療費適正化につながるのは間違いないであろう。この中で、「風邪に抗菌薬治療はやめよう」は、国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusai_kansen/index.html)の「薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン」(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusai_kansen/pdf/yakuzai_gaiyou.pdf)(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokusai_kansen/pdf/yakuzai_honbun.pdf)で、ヒトの抗微生物剤の使用量(人口千人あたりの一日抗菌薬使用量)の2020年(対2013年比)は、全体で33%減、経口セファロスポリン、フルオロキノロン、マクロライド系薬で50%減、静注抗菌薬で20%減の成果指標が設定されており、行政施策として打ち出しやすいであろう。
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