保健福祉の現場から

感じるままに

精神障害者の地域移行と推進体制

2016年05月23日 | Weblog
キャリアブレイン「長期入院精神障害者の地域移行の知識習得- 日精協が研修会プログラム作成」(http://www.cabrain.net/news/article/newsId/48789.html)。<以下引用>
<日本精神科病院協会(日精協)は、長期入院精神障害者の地域移行に関する研修会のプログラムとテキストを作成した。入院中のかかわり方のポイントや退院促進から退院後の支援までを視野に入れたチェックシートなどを盛り込んでおり、医療従事者のスキルアップにつなげたい考えだ。精神障害者の長期入院については、2014年に厚生労働省の検討会が取りまとめた「今後の方向性」で、退院に向けた意欲の喚起や本人の意向に沿った移行支援、地域生活の支援などについて、「必要な検討を行った上で、取り組みを進めていくことが重要」としていた。こうした方向性を踏まえ、日精協は15年度の障害者総合福祉推進事業で、会員の病院に対するアンケート調査に加え、病院が独自に使用しているパンフレットや手引書などの「ツール」を収集して課題を把握したという。地域移行にかかわる医療従事者に必要な知識については、▽地域移行推進に関する医療政策の流れ ▽長期入院精神障害者の実態 ▽退院後の支援体制・地域の社会資源▽入院中のかかわり方のポイント ▽退院支援に関する準備項目と支援チェックシート―の5点に絞り、研修会のプログラムとテキストを作成した。例えば、入院中のかかわり方のポイントとして、「退院に必要なスキル獲得への支援」や「退院意欲を高めるプログラム」などを提示。また、障害福祉サービスの利用手順や相談支援を含めた支援体制といった社会資源についても紹介している。このプログラムとテキストを使ったモデル研修では、受講者から「ポイントがまとまっていて良いと思う」や「すぐに実践できるように尺度の使い方、集計方法なども示してほしい」といった意見が寄せられたという。>

日本精神科病院協会「退院に向けてのハンドブック」(http://www.nisseikyo.or.jp/news/jimukyoku/jnews.php?id=11&bm=0)(http://www.nisseikyo.or.jp/images/about/katsudou/hojokin/h27_handbook.pdf)が出ている。厚労省資料(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12201000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu-Kikakuka/0000108754_11.pdf)p20にあるように、平成27年度からの第4期障害福祉計画では、①平成29年度における入院後3ヶ月時点の退院率64%以上、②平成29年度における入院後1年時点の退院率91%以上、③平成29年6月末時点の長期在院者数を平成24年6月末時点の長期在院者数から18%以上減少、の目標値が掲げられているが、「長期入院精神障害者の地域移行に向けた支援方策に関する研究報告書」(http://www.nisseikyo.or.jp/images/about/katsudou/hojokin/h27_houkoku_6.pdf)の資料p4(p36)に都道府県別の「入院後3ヵ月時点の退院率」「入院後1年時点の退院率」「長期在院者数」の一覧をみれば、都道府県格差は小さくないようである。そういえば、社会保障制度改革推進会議(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/syakaihosyou_kaikaku/)の資料(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/syakaihosyou_kaikaku/dai5/siryou1.pdf)p15では、今後の課題の一つとして「精神科レセプトの分析」があったが、630調査(http://www.ncnp.go.jp/nimh/keikaku/vision/data.html)だけではなく、精神科レセプト分析による地域格差の「見える化」が必要と感じる。医療法に基づく病床機能報告制度(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055891.html)は一般病床と療養病床を有する医療機関にNDBとリンクした詳細な医療実績が公表されており、630調査(http://www.ncnp.go.jp/nimh/keikaku/vision/data.html)を活用した精神病床機能報告のようなものもあっても良いかもしれない。さて、社会保障審議会障害者部会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/shingi-hosho.html?tid=126730)の平成27年12月の報告書「障害者総合支援法施行3年後の見直しについて」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000107988.pdf)p21~「住民に最も身近な基礎的自治体である市町村が中心となり、当事者を含め、医療と福祉の双方を含む様々な関係者が情報共有や連携体制を構築する場として、市町村に精神障害者の地域移行や地域定着を推進するための協議の場の設置を促進するとともに、都道府県・保健所・市町村が適切かつ重層的な役割分担をしながら協働して取り組むための体制を構築すべきである。その際、地域移行後に想定される精神障害者の居住地についても留意することが望まれる。都道府県障害福祉計画に記載される精神障害者の長期在院者数の削減目標を、市町村障害福祉計画に記載される障害福祉サービスのニーズの見込量に反映させる方法を提示すべきである。」とあった。「市町村に精神障害者の地域移行や地域定着を推進するための協議の場の設置を促進する」ことには異論はないが、一口に「市町村」といってもピンキリで精神科病院がない市町村が少なくない。あっても広域に入院しているケースも多い。精神障害者の地域移行のためには、それぞれの地域において、精神保健医療福祉が一体となった推進体制が不可欠と感じる。この際、医療計画(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/index.html)では、精神疾患は柱の一つであることを強く認識し、圏域連携会議(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000066602.pdf)の「保健所は、地域医師会等と連携して当会議を主催し、医療機関相互または医療機関と介護サービス事業所との調整を行うなど、積極的な役割を果たすものとされている。」を重視したい。そもそも一般の市町村では、精神医療は自立支援医療(精神通院)以外に、例えば医療保護入院についてもどれほど状況が把握されているであろうか。精神保健福祉法(http://www.ron.gr.jp/law/law/seisin_h.htm)第49条3項で「保健所による市町村支援」が規定されていることも踏まえ、「市町村と保健所の連携・協働」を前面に打ち出すべきと感じる。ところで、医療介護情報局(http://caremap.jp/)の「医療機関届出情報(地方厚生局)」(http://caremap.jp/cities/search/facility)では「(精移行)精神科地域移行実施加算」をどの病院が算定しているかわかる。また、国立保健医療科学院の「地域医療構想策定研修(都道府県職員研修)」(https://www.niph.go.jp/entrance/h27/course/short/short_iryo02.html)・「地域医療構想策定研修(専門家連携編)」(https://www.niph.go.jp/entrance/h27/course/short/short_iryo03.html)で各都道府県職員等に対して実践研修が行われた「医療計画作成支援データブック」では精神科地域移行実施加算、精神科訪問看護・指導料、精神科継続外来支援・指導料、精神科退院前訪問指導料などのSCR(年齢調整標準化レセプト出現率)が二次医療圏、市町村単位で出ている。地域保健医療福祉関係者は「医療計画作成支援データブック」の中の「電子データブック」では、「医療計画において記載することになっている5疾病5事業及び在宅医療に係るおよそ400の指標を見ることができる。」(http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000115645.pdf)を常識としなければならない。「平成28年度診療報酬改定」(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000106421.html)説明会(http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000112857.html)医科資料(http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12400000-Hokenkyoku/0000115977.pdf)p96「集中的な退院支援と精神病床数の適正化に取り組む精神病棟を評価 (新) 地域移行機能強化病棟入院料 1,527点」「5年以上の長期入院患者の退院に係る評価を充実 精神科地域移行実施加算 20点」も知っておきたい。平成30年度から、医療計画(6年間)、医療費適正化計画(6年間)、介護保険事業計画(3年間)、障害福祉計画(3年間)が揃う意義を認識したい。障害福祉計画では、訪問・通所サービス(居宅介護、行動援護、重度障害者等包括支援)、日中活動の場(生活介護、自立訓練、宿泊型生活訓練、就労移行支援、就労継続支援)、住まいの場(共同生活援助、共同生活介護)、相談支援、地域活動支援センター、共同作業所、患者会、家族会等が評価されるであろうが、医療計画の精神医療体制の評価とセットで行いたいものである。精神保健福祉と精神医療を分離してはならない。医療計画に係る厚労省通知別表(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/dl/tsuuchi_iryou_taisei2.pdf)別表5「精神疾患の医療体制構築に係る現状把握のための指標例」には障害者施設等に関する指標を追加すべきであろう。地域移行は障害福祉体制とセットである。
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