保健福祉の現場から

感じるままに

がん予防の新たな時代

2013年02月13日 | Weblog
国際対がん連合(UICC)と国際がん研究機関(IARC)から「がんを予防するための7ヵ条」(http://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2013/002674.php)が出ている「1.たばこを吸わない、2.アルコールを控える、3.健康的な食事、脂肪をコントロールする、4.適正な体重を維持する、5.運動でがんを予防、6.感染症対策、7.がん検診を受ける」。この7カ条はわが国の「がんを防ぐための新12ヵ条」(http://www.fpcr.or.jp/pdf/12kajou.pdf)に含まれているが、これはメタボ対策といってもよい。昨年3月に改訂された介護予防マニュアル(http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/tp0501-1.html)では「運動による認知症予防」(http://www.mhlw.go.jp/topics/2009/05/dl/tp0501-sankou7-1-2.pdf)も示されており、「がんを予防するための7ヵ条」(http://tokuteikenshin-hokensidou.jp/news/2013/002674.php)は、おそらく、認知症予防にも通じるであろう。但し、2月4日の「世界対がんデー」は、Official WHO health days(http://www.who.int/mediacentre/events/official_days/en/index.html)ではない。わが国では、9月の「がん征圧月間」(http://www.jcancer.jp/association/katsudo/taikai/)や10月の「がん検診受診率50%達成に向けた集中キャンペーン月間」(http://www.gankenshin50.go.jp/campaign/about/index.html)の方が馴染みがあるかもしれない。そういえば、「医療等分野における情報の利活用と保護のための環境整備のあり方に関する報告書」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002k0gy.html)資料(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002k0gy-att/2r9852000002k0la.pdf)では、医療等情報の法制措置と情報連携の基盤整備で期待される効果の例として、「地域がん登録、その他難病や重要疾患に関して、データ収集の精度の向上や活用の促進」が例示されているが、仮に、地域がん登録データと特定健診問診票データの突合が可能になれば、たばこ、アルコール、食事、運動、身体活動、体重コントロール、休養などのがん予防に関する疫学研究はかなり容易になるのではないか。ところで、感染症対策としてのがん予防について、1月31日の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000008fcs.html#shingi11)で、ピロリ菌除菌療法の効能・効果に「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」追加されたことは知っておきたい(http://blog.goo.ne.jp/miraikibou/s/%A5%D4%A5%ED%A5%EA%B6%DD)。「ヘリコバクター・ピロリが陽性であることと、内視鏡検査によりヘリコバクター・ピロリ感染胃炎であることを確認することが条件で3月には保険収載される見通しで、ピロリ菌感染者は約3500万人いると推計されているが年間300万人が除菌をすれば十数年後には胃がん撲滅が現実となる」(医事新報2月9日号)と報道されている。仮に、レセプトデータと地域がん登録データの突合が可能になれば、除菌による効果を比較的容易に確認できるであろう。まさに、がん予防は新たな時代に突入するように感じる。

キャリアブレイン「がん登録、医療機関の負担軽減で折衷案も- 超党派議連作業チーム 」(http://www.cabrain.net/news/article/newsId/39211.html)。<以下引用>
<超党派の国会議員でつくる「国会がん患者と家族の会」(代表世話人=尾辻秀久・自民党参院議員)は13日に作業チームの会合を開き、がん登録法制化に向けた議論を続けた。前回会合での情報提供する医療機関の範囲についての議論を踏まえ、診療所を除外する案も出たが、登録情報の悉皆性を担保するために、診療所でも「治療」した場合には情報提供を義務付ける折衷案も浮上している。この日の会合では、がん登録法制化は、全国のがん患者の罹患情報と死亡情報を悉皆的に収集することを前提とし、法制化の目的として、がん治療データを集め、がん対策への取り組みを推進するためと法案に盛り込むことを確認。その上で、個別課題の詰めの議論に入った。個別課題では、情報提供を義務付ける医療機関の範囲について、継続して議論している。前回会合で、新たな制度については、がん診療連携拠点病院など専門医療機関は初回に「診断」した時点で情報提供し、それ以外の医療機関は治療方針を決定した場合に情報提供義務を負う仕組みを検討したが、初回かどうかの判断が困難なケースがあることや、「治療方針の決定」の概念が不明確だと指摘されていた。これらの議論を通じ、専門医療機関の場合、現行の地域がん登録制度と同様に「診断」した時点で情報提供し、それ以外の医療機関の場合、情報提供するかどうかの基準を「経過観察を含む治療」に定めて、既に専門医療機関で「診断」されたことが明らかな場合には情報提供しなくて済む案と、医療機関を病院と診療所に分けて、病院だけに情報提供義務を課し、診療所には免除するという2案を基に議論した。両案とも、メリットとデメリットを整理したが、その中で、登録された情報の悉皆性が重要な論点になり、医療機関の負担を軽減するために、診療所で「診断」した場合には、情報提供を求めないものの、「治療」した診療所には情報提供させる折衷案も出た。このほか、すべての医療機関に情報提供を義務付けるのではなく、「協力要請」程度の緩やかな縛りにしてはどうかとの意見も出ている。この日は、地域がん登録の課題を洗い出すために、NPO法人地域がん登録全国協議会の田中英夫理事長からのヒアリングも実施した。次回会合では、海外のがん登録制度を再検証する。>
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被ばくと甲状腺がん

2013年02月13日 | Weblog
福島県「甲状腺検査実施状況及び検査結果について」(http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/250213siryou2.pdf)。

47news「福島、新たに2人が甲状腺がん 放射線による影響否定」(http://www.47news.jp/CN/201302/CN2013021301001323.html)。<以下引用>
<東京電力福島第1原発事故による放射線の影響を調べている福島県の県民健康管理調査の検討委員会が13日、福島市内で開かれ、18歳以下(震災当時)の2人が新たに甲状腺がんと確定したと報告された。昨年9月に判明の1人と合わせ、3人となった。福島県立医大の鈴木真一教授は「甲状腺がんは最短で4~5年で発見というのがチェルノブイリの知見。今の調査はもともとあった甲状腺がんを把握している」と述べ、福島第1原発事故による放射線の影響を否定。一方で「断定はできない。これからきっちり検討していく」とした。鈴木教授によると、3人とも手術を受け、経過は良好という。>

そういえば、先月の原子力規制委員会検討チーム資料(http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/pre_taisaku/20130124.html)(http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/pre_taisaku/data/0007_02.pdf)p11の被ばく医療体制の整備では、「甲状腺スクリーニングの詳細な測定には、核種に応じて甲状腺モニターやホールボディカウンター等を用いた計測を行うこととなるが、専門知識や機器管理等を必要とするため、詳細な測定が可能な施設等をあらかじめ特定し、当該施設との連携体制を整備しておくこと。また長期の健康管理に備え、測定結果を蓄積し、管理できる体制を整備しておくこと。」とあった。1月12日(土)21時~のNHKスペシャル「シリーズ東日本大震災 空白の初期被ばく」(http://www.nhk.or.jp/special/detail/2013/0112/)で報道されたように、我が国は大規模集団の低線量被ばくを経験した。精度の高いがん登録データを残すことは国家的義務と感じる。政府資料(http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/twg/dai4/siryou1.pdf)p5では「チェルノブイリで小児の甲状腺がんの増加を証明するのに20年かかった(4000人発症、15人死亡)」とされており、この際、各種統計の情報公開徹底が重要と感じる。例えば、小児慢性特定疾患治療研究事業(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/boshi-hoken05/index.html)(http://www.nch.go.jp/policy/shoumann.htm)による「小児がんの診療件数」がある。平成22年度には小児の悪性新生物で、全国12,609人が登録されている(http://www.nch.go.jp/policy/shoumann22/01-akusei22/h2201.htm)。また、がん診療連携拠点病院院内がん登録全国集計(http://ganjoho.jp/professional/statistics/hosp_c_registry.html)の病院別件数(http://ganjoho.jp/data/professional/statistics/hosp_c_registry/2010_shisetsubetsu_report00.pdf)の推移も注目である。がんの統計2011(http://ganjoho.jp/public/statistics/backnumber/2011_jp.html)の部位別・年齢階級別の罹患数(http://ganjoho.jp/data/public/statistics/backnumber/2011/files/data04.pdf)p64では、2006年の「15~19歳の甲状腺がんは46人」となっており、決してないわけではない。小児慢性特定疾患治療研究事業やがん診療連携拠点病院院内がん登録集計における、都道府県別・年齢階級別・がん種類別のがん罹患統計の情報公開は容易であり、ぜひ実施すべきである。しかし、厚労省「がん登録に関する資料」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001scv3-att/2r9852000001sd0t.pdf)に出ているように、現状では、精度の高いがん登録が行われているのは一部の自治体に留まっている。日本再生戦略(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/iryou/5senryaku/siryou01.pdf)p11では「平成25年度中にがん登録の法制化を目指す」とあり、注目である。がん登録の法制化の施行前に、早めに登録率を徹底的に高めておく必要性を強く感じる。今後、法制化によって間違いなく、がんの登録率が上昇する。そうなれば、統計上、がん罹患数は増えるが、それが「原発事故による大規模集団の被ばくが原因」と直結されてはたまらない。
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がん患者の医科歯科連携

2013年02月13日 | Weblog
キャリアブレイン「がん患者から歯科医師への橋渡しが課題に」(http://www.cabrain.net/news/article/newsId/39206.html)。<以下引用>
<国立がん研究センター(国がん)がん対策情報センターは12日、医科歯科連携推進専門家パネル委員会を開催し、来年度から全国で実施する「がん患者の医科歯科連携事業」で、歯科医師向け講習会で使用するテキストの作成の詰めと、そのテキストの有効な利用法についての議論を行った。この中で複数の委員が、がん患者を、講習会を修了した歯科医師に、どのように橋渡ししていくかが課題になるとの意見を出した。同パネルは、2010年度から国がんと日本歯科医師会(日歯)が関東5都県で実施してきた歯科医師向け講習会などを行う「医科歯科連携事業」を、全国レベルで実施するために設置され、昨年から議論を続けてきた。がん患者のための医科歯科連携をめぐっては、がん患者が外来に移行し、退院後や在宅での口腔ケアの需要が増加したことに伴い、地域での歯科医療提供体制の重要性が指摘されている。この事業を推進するために厚生労働省は来年度予算案に、日歯を委託先とする医科歯科連携事業費1000万円を計上している。国がんと日歯がこれまで行ってきた医科歯科連携事業では、▽手術前患者を対象とした口腔ケア▽がん化学療法治療前・頭頸部放射線患者の治療前、治療後の口腔ケア▽がん終末期患者の歯科治療・口腔ケアーなどを修得するための講習会を開催し、その講習会を受講した歯科医師に修了書を発行。その修了者名簿をがん診療連携拠点病院(拠点病院)などに報告することで、がん治療を行った医師などが、がん患者向け口腔ケアの知識を持った歯科医師を患者に紹介するなどして、医科歯科連携につなげてきた。来年度以降、この医科歯科連携事業では、同パネルが作成したテキストを使用して全国で講習会が開催されることになるが、地域の拠点病院などが講習会の修了者を把握し、がん患者を歯科医師に適切に誘導する仕組みづくりが求められている。同パネルの取りまとめ役を務める国がん中央病院の上野尚雄・歯科医長は、「医科歯科連携が進めば近い将来、歯科医師が受診者の舌がんなどの初期症状を見極め、早期発見などで重要な役割を果たすことも考えられる」と話している。>

医科歯科連携は、がん患者に限らない。一昨年度までに各市町村で実施された「日常生活圏域ニーズ調査」(http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/hokenjigyou/05/dl/niizucyousa.pdf)や例年の生活機能チェック(http://www.tyojyu.or.jp/hp/menu000001000/hpg000000954.htm)をみれば、介護保険を利用していない一般高齢者でも口腔機能低下を有する方が非常に多いことがわかる。先般の管内T市の多職種連携グループワークでも医科歯科連携の要望が多かった。これまでは、医科、歯科の信頼関係に基づくヒューマンネットワークに向けた取り組みが弱かったように感じる。今後、歯科衛生士法改正(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002i2md-att/2r9852000002i31p.pdf)がなされれば、歯科医師だけではなく、歯科衛生士の活躍の場面が増えるのは間違いないであろう。内閣法制局HP(http://www.clb.go.jp/contents/index.html)によれば、歯科衛生士法改正(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002i2md-att/2r9852000002i31p.pdf)案はまだ提出されていないようである。
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