保健福祉の現場から

感じるままに

診療所の医療安全

2012年11月26日 | Weblog
キャリアブレイン「「診療所だからそこそこで」は通用しない- 医療安全全国フォーラム」(http://www.cabrain.net/news/article/newsId/38666.html)。<以下引用>
<嶋森氏は、大病院だけでなく、小さな医療機関でも事故が起こることが認識されたほか、有床診療所でも全身麻酔による手術など、侵襲性の高い治療が行われている場合もあり、小さな診療所だから医療安全はそこそこでよいという考えは通用しなくなったとした。嶋森氏らは、点滴作り置きの事故を機に、三重耳鼻咽喉科(津市)の荘司邦夫院長に事故についての分析を依頼。荘司氏は、背景には安全に対するコンプライアンスの意識が低いことや、「忙しかった」という理由で済ませてしまう組織安全文化、職員が定着しないことなどがあると分析した。荘司氏はさらに、中小医療機関の安全管理上の課題について、施設の形態が多様であり、院長の個性によって安全管理が左右されたり、定期的な監査が行われないなど監視システムの脆弱さがあったりするほか、マンパワーの不足や安全に投資できていないことなどを挙げた。嶋森氏は、日常業務のプロセスについて、安全が確保されるように設計や標準化を行うほか、現場スタッフにそのプロセスに従って業務を遂行するよう習慣化させることを挙げ、プロセスに従っていてもエラーが生じた場合、チームで原因を分析し、新たにプロセスをつくり直すことが大切とした。>

8月、総務省行政評価局から、医療安全対策に関する行政評価・監視(http://www.soumu.go.jp/main_content/000170025.pdf)が出たが、これによると、「国等による医療機関に対する指導監督の実施状況、医療事故情報収集・分析・提供事業、 院内感染対策サーベイランス事業等の実施状況」「医療機関における、①医療に係る安全管理、②院内感染対策、③医薬品に係る安全管理、 ④医療機器に係る安全管理のための体制の確保状況等」が調査されている(平成24年8月~25年7月)。医療安全については、医療法施行規則により、医療機関に対し、医療に係る安全管理体制の確保、院内感染対策のための体制の確保等を義務付け、都道府県等に対し、医療法に基づく立入検査において、それらの確認と指導が要請されているが、医療事故が多いことや院内感染事案が問題視されている。総務省資料(http://www.soumu.go.jp/main_content/000170025.pdf)p2には最近の主な院内感染の事例が出ているが、表に出ていないものも少なくないであろう。さて、医療法(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/dl/164-4c1.pdf)第6条の九~十二に医療安全の確保が規定され、平成19年4月からは無床診療所も医療安全確保のための措置を講じなければならなくなった(http://www.wam.go.jp/wamappl/bb14GS50.nsf/0/0cd4ce2884154a78492572a3000c1073/$FILE/20070319_3shiryou1.pdf)。また、都道府県・保健所設置市・特別区は、①医療に関する苦情・相談対応、管理者に対する助言、②家族・住民に対する医療安全確保に関する情報提供、③医療安全に関する研修等を行う「医療安全支援センター」を設けるよう努めなければならないとされた。やはり、医療法(http://www.ron.gr.jp/law/law/iryouhou.htm)第二十五条に基づく立入検査;医療監視(http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20120712_01.pdf)が大きい。平成17年度の地域保健総合推進事業「医療安全対策と保健所機能強化に関する調査研究」報告書(http://www.phcd.jp/katsudou/chihoken/H17/iryoanzentaisaku_hokokusho.pdf)によると、定期立入検査は病院は100%実施されているが、有床診療所85.3%、無床診療所46.3%であったが、最近はどのような状況になっているであろうか。自治体によってかなり異なっているようである。厚労省通知(http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20120712_01.pdf)では、「無資格者による医療行為、診療用放射線機器の過剰照射等の事件が発生している」というが、これは病院とは限らない。以前、「医療者の結核患者が増加」(http://www.cabrain.net/news/article/newsId/38145.html)のネット記事があったが、医療者の結核は、地域保健現場では時々経験するところである。昨年6月には「医療機関等における院内感染対策について」(http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T110620G0010.pdf)(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/110623_2.pdf)が出ているが、医療機関は診療所(医科、歯科)を含むのはいうまでもない。院内感染対策にかかる指導は、医療法第25条1項に基づく立入検査(http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20120712_01.pdf)でも重点事項である。また、平成24年度診療報酬改定資料(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000021ei1-att/2r98520000021ele.pdf)p112に出ている「医療用麻薬処方日数制限の緩和」に伴う「在宅麻薬管理体制」のチェックも重要になっている。そういえば、厚労省「医療法第25条に基づく立入検査結果(平成22年度)について」(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002jprp.html)によると、8667病院中、8199病院に検査が実施され、実施率は94.6%と出ていた。しかし、医療法(http://www.ron.gr.jp/law/law/iryouhou.htm)第二十五条では、「都道府県知事、保健所を設置する市の市長又は特別区の区長は、必要があると認めるときは、病院、診療所若しくは助産所の開設者若しくは管理者に対し、必要な報告を命じ、又は当該職員に、病院、診療所若しくは助産所に立ち入り、その有する人員若しくは清潔保持の状況、構造設備若しくは診療録、助産録、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。」と規定されており、立入検査の対象は病院だけではない。
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労働安全衛生法改正案は廃案に

2012年11月26日 | Weblog
内閣法制局の第181回国会での内閣提出法律案(http://www.clb.go.jp/contents/diet_181/law_181.html)について、衆議院の解散でどうなったか気になっていたが、労働安全衛生法改正案は今年8月に衆議院厚生労働委員会で審議入りしていたものの、衆議院解散で廃案になったと報道されている(保健衛生ニュース11月26日号)。健康日本21(第2次)(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkounippon21.html)の国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基本的な方針(http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/dl/kenkounippon21_01.pdf)p14では、「メンタルヘルスに関する措置を受けられる職場の割合の増加」(平成19年33.6%→平成32年100%)の目標が掲げられているが、これは法改正が前提になっていたであろう。平成23年12月2日国会提出された労働安全衛生法の一部を改正する法律案(http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/179.html)に期待していた方が少なくないかもしれない。今年6月のメンタルヘルス対策支援センター事業の事業仕分け(http://www.mhlw.go.jp/jigyo_shiwake/h24_gyousei_review.html)では、抜本的改善(http://www.mhlw.go.jp/jigyo_shiwake/dl/h24_rv05a.pdf)となり、意見(http://www.mhlw.go.jp/jigyo_shiwake/dl/h24_rv04f.pdf)では「労働安全衛生法の改正に伴い、二次予防に関する事業者からの相談件数が増加すると見込まれるが、これに対する労働基準監督署との「指導」機能との役割分担を明確にし、必要な事業に集中化し、効率化を図る。」とあった。当時は、労働安全衛生法改正が既定路線だったはずであるが、今後、どうなるであろうか。ところで、注目していた、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律案(マイナンバー法案)」や「子宮頸がん予防措置の実施の推進に関する法律案」も廃案(保健衛生ニュース11月26日号)という。
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医療の二次医療圏格差

2012年11月26日 | Weblog
河北新報「2次医療圏「石巻」「登米」と合併案 気仙沼、反対論拡大」(http://www.kahoku.co.jp/news/2012/11/20121122t13030.htm)。<以下引用>
<県の2次医療圏広域化の一環で、気仙沼医療圏を石巻医療圏などと合併する案に、気仙沼市から反対論が上がっている。新設する市立病院の医療水準に影響が出ることへの懸念もあり、「広域化反対」の声は収まる気配が見えない。「地域一丸になって気仙沼医療圏の堅持を強く訴えるべきだ」「むしろ旗を掲げ、県庁で反対運動をやりたいぐらいだ」今月中旬、市役所の会議室であった市議会議員全体説明会。30人の市議からは、再編案に反対する意見が次々と飛び出した。出席した菅原茂市長も「簡単ではないが、(気仙沼医療圏維持に)最大限の努力を払う。ここが踏ん張りどころだ」と語気を強め、見直しを求める姿勢を強調した。2次医療圏は入院医療の需要に対応するために県が設定し、現在は7圏域ある。県の懇話会は12日、第6次計画(2013~17年度)の中間案で四つに再編する案を示し、「気仙沼」「石巻」「登米」が一つの圏域とされた。広域化で限られた医療資源を効率的に運用できるメリットがある。再編案に気仙沼市が強く反発しているのは、人口規模の大きい石巻市に今後、医療基盤整備が偏る可能性を危惧するからだ。約195億円をかけて整備する新市立病院の開業を17年度に控え、「医療圏が見直しになれば、新病院の医療水準も切り下げられるのでは」という懸念が拭えない。現圏域の維持に向けて市や市議会側の鼻息は荒く、これまで要望書を2回、村井嘉浩知事宛に提出している。ただ、市によると、現在同じ医療圏を構成する南三陸町は、県の再編案に賛意を示す。仮に同町が外れれば気仙沼市単独となり、「複数の市町村で構成する」という2次医療圏の原則に背く。市幹部は「南三陸町も事情を抱えているため、翻意を求めるのは難しいだろう」とした上で、「地域の医療水準を保つためにも、現医療圏の堅持をひたすら訴えていくしかない」と話している。>

医政局長通知(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/dl/tsuuchi_iryou_keikaku.pdf)p6では、「人口規模が20万人未満であり、且つ、二次医療圏内の病院の療養病床及び一般病床の推計流入入院患者割合が20%未満、推計流出入院患者割合が20%以上となっている既設の二次医療圏については、入院に係る医療を提供する一体の区域として成り立っていないと考えられるため、設定の見直しについて検討することが必要である。」とされた。二次医療圏の状況は具体的資料(http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/dl/shiryou_a-2.pdf)が出ているが、様々な動きがみられるようである。二次医療圏は、介護保険法(http://www.ron.gr.jp/law/law/kaigo_ho.htm)第118条2、障害者自立支援法(http://www.ron.gr.jp/law/law/sho_jiri.htm)第89条2の区域、地域保健法(http://www.ron.gr.jp/law/law/hokenjo.htm)第5条2による保健所の所管地域の設定とも関連するものである。国は考え方を示すだけであり、圏域の設定を決めるのはあくまで都道府県であり、再編対象の地域で議論が巻き起こるのは当然であろう。歴史・文化や道路交通事情なども影響するかもしれない。ところで、日医総研 日医総研ワーキングペーパー「地域の医療提供体制現状と将来 - 都道府県別・二次医療圏データ集 -」(http://www.jmari.med.or.jp/research/summ_wr.php?no=494)をみると、医療圏間格差が大きいことがわかる。そういえば、厚労省資料(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/11/dl/1-2.pdf)p17に都道府県別にみた人口10万対病院病床数、資料(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/11/dl/1-4.pdf)p30に病院の都道府県別にみた人口10万対常勤換算医師数、資料(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/iryosd/11/dl/byoin.pdf)p34に病院の都道府県別にみた人口10万対1日平均外来患者数、p36に病院の都道府県別にみた人口10万対1日平均在院患者数、p39に病院の都道府県別にみた平均在院日数が出ていた。また、第二期医療費適正化計画(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info02c.html)に関して、資料(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/pdf/h240806_4-2.pdf)p12~都道府県別の推計平均在院日数、推計1入院当たり医療費、p15で都道府県別後発医薬品割合等の推移が示され、参考資料(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/pdf/h240806_4-2-1.pdf)(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/pdf/h240806_4-2-2.pdf)(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/pdf/h240806_4-2-3.pdf)では、都道府県別の市町村国保と後期高齢者医療の実態に関する詳細なデータが順位付で公表されていた。医療の都道府県格差は小さくはない。医療の都道府県格差、二次医療圏格差に対して、将来推計人口も含めて、関心を持ちたいものである。
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