保健福祉の現場から

感じるままに

医療を営利産業化していいのか

2012年03月19日 | Weblog
経済界(http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2010/110330a.html)(http://www.doyukai.or.jp/policyproposals/articles/2010/pdf/110330a_02.pdf)からは「株式会社による医療機関経営への参入促進」や「混合診療の全面解禁」等が提言されているが、日本医師会医療政策会議報告書(http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20120208_1.pdf)、「TPP交渉参加についての日本医師会の見解-最近の情勢を踏まえて-」(http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20120314_1.pdf)、全国保険医団体連合会「TPPと国民皆保険医療」(http://hodanren.doc-net.or.jp/iryoukankei/seisaku-kaisetu/120215tpp-iryou.pdf)をみれば、医療の営利産業化は相当警戒されていることがわかる。さて、厚労省資料(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000025aq3-att/2r98520000025at3.pdf)p67では、「診療所も含め医療機関は営利を目的とするものではなく、また、医療機関の開設者は、開設・経営の責任主体とされていることから、営利法人等が医療機関の開設・経営を実質的に左右している疑いがあるとの通報等があった場合においては、開設者が医療法人か個人であるかにかかわらず、その医療機関に対し、立入検査を実施し、開設者からの説明聴取、税法上の帳簿書類(財務諸表、確定申告書、開業届出書等)等の検査を行い、実態面の各種事情を十分精査の上、厳正に対処していただくようお願いする。特に、美容外科、眼科等を標榜し自由診療を行っている診療所については、開設者及び非営利性に関して十分な確認を行うようお願いする。」とされている。医療法(http://www.ron.gr.jp/law/law/iryouhou.htm)第七条5項では、医療機関経営は営利目的ではないことが規定されているだけでなく、医療法人は医療法(http://www.ron.gr.jp/law/law/iryouhou.htm)第54条で剰余金の配当を禁じられていることは知っておきたい。与党議員のネット記事「TPP問題、医療界が押さえるべきツボ」(http://blog.goo.ne.jp/japan-n/e/da4aee3ff7b7661ecc8b549a1dc3bed9)はぜひみておきたい。2006年日米投資イニシアティブ報告書(http://www.meti.go.jp/policy/trade_policy/n_america/us/data/0606nitibei1.pdf)p9~「第一に、米国政府は、医療機関による資金調達を容易にし、生産性を高めるとの観点から、病院、診療所経営に対する株式会社の参入拡大を可能とするよう要望した。また、構造改革特区制度の下で株式会社の参入が可能となっているが、その範囲は非常に限定的であり、実質的に特区における株式会社の病院経営はほとんど実現していない点を指摘した。米国政府は、日本は高度医療特区を実施するための条件を緩和すべきであることを提案した。(中略)二点目として、米国政府は、日本では血液検査の外部委託により、かなりの効率化が図られたことを指摘した上で、リスクの低い医療行為、<特にMRIやPET、CTスキャン等反復性のある医療行為については、株式会社に柔軟に外部委託できるよう要請した。(中略)三点目として、米国政府は、いわゆる「混合診療」(日本の公的保険制度の下で、保険から支払が行われる医療行為と、支払が認められていない医療行為の両方を含む診療)の導入について関心を表明した。」とされている。また、昨年10月に外務省が出した2011年米国通商代表(USTR)外国貿易障壁報告書;日本の貿易障壁言及部分(http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/tpp/pdfs/tpp03_02.pdf)では、「厳格な規制によって,外国事業者を含む営利企業が包括的サービスを行う営利病院を提供する可能性等,医療サービス市場への外国アクセスが制限されている。」と明記されている。
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地域包括ケアと保健所

2012年03月19日 | Weblog
「24時間365日 安心して暮らし続けられる地域に向けて ---看護がすすめる地域包括ケア」(http://mokuseisya.com/pg339.html)を読んだ。F県保健所に地域在宅医療支援センターを設置し、それぞれの地域の実情を勘案しながら、①住民・療養者の啓発(講演会、ポスター、資源ブック、在宅看取りの市民講座等)、②必要なサービス提供体制の整備(サービス提供状況の把握、スキルアップ研修、受入診療所の確保等)、③ネットワークの推進(協議会、情報交換会、資源ブック等)に取り組まれた事例が紹介され、具体的な取り組み手順がまとめられており、大変参考になる。やはり、なぜ保健所が地域包括ケアの推進に取り組むかという点を所内スタッフ(保健所長を含めて)と関係機関・団体が理解することが不可欠と感じる。保健所の位置づけについて、介護保険法(http://www.ron.gr.jp/law/law/kaigo_ho.htm)第三十八条で、保健所による市町村実施業務に対する技術協力、援助が規定されるとともに、老人福祉法(http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S38/S38HO133.html)第八条で、保健所による老人福祉施設等に対する栄養改善その他衛生事項に関する協力が規定されており、保健所は、市町村高齢者福祉サイドとの普段からのつながりがある。また、地域保健法(http://www.ron.gr.jp/law/law/hokenjo.htm)第4条による「地域保健対策の推進に関する基本的な指針」(http://www.mhlw.go.jp/topics/2003/10/tp1030-2.html)において、保健所の運営として、保健、医療、福祉のシステムの構築、医療機関の機能分担と連携等について企画及び調整を推進するとされている。平成19年7月20日の通知(http://wwwhourei.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/191113-k00.pdf)では、「圏域連携会議は、各医療機能を担う関係者が、相互の信頼を醸成し、円滑な連携が推進されるよう実施するものである。その際保健所は、地域医師会等と連携して当会議を主催し、医療機関相互または医療機関と介護サービス事業所との調整を行うなど、積極的な役割を果たすものとする。」とされ、「在宅医療の体制構築に係る指針」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001yj85-att/2r9852000001yjdf.pdf)p7では、「保健所は、「地域保健法第4条第1項の規定に基づく地域保健対策の推進に関する基本的な指針」(平成6年12月1日厚生省告示第374号)の規定に基づき、また、「医療計画の作成及び推進における保健所の役割について」(平成19年7月20日健総発第0720001号健康局総務課長通知)を参考に、医療連携の円滑な実施に向けて、地域医師会等関係団体と連携して医療機関相互の調整を行うなど、積極的な役割を果たすこと。」とされている。保健所は、地域において、保健・医療・福祉ネットワークの要とならなければならない組織であり、法律や通知で保健所の役割が位置づけられていることは認識したい。そして、保健所が地域の在宅医療の推進に関与する最大の理由は、縦割りでないことである。例えば、本庁では、医療担当、高齢福祉担当、薬事担当、地域リハビリ担当、がん緩和ケア担当など、様々な部署にまたがっているが、地域において総合的に関われるのは保健所であり、保健所主体事業による保健医療福祉の連携だけではなく、市町村が主体になっている介護保険事業計画、高齢者保健福祉計画、障害福祉計画などに、保健所が積極的に参画する必要がある。しかし、それぞれの保健所にそのノウハウが蓄積されているであろうか。厚労省資料(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001xhqa-att/2r9852000001xhrr.pdf)p30に出ている在宅医療の指標は把握されているであろうか。「在宅医療の体制構築に係る指針」骨子(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001yj85-att/2r9852000001yjdf.pdf)では、「地域の実情に応じ、病院、診療所、訪問看護ステーション、地域医師会等関係団体、保健所、市町村等の主体が在宅医療の連携拠点となり、多職種協働による包括的かつ継続的な在宅医療の提供体制の構築を図り、下記のような機能を担う。①地域の医療・介護関係者による協議の場を定期的に開催し、在宅医療における連携上の課題の抽出及びその対応策の検討等を実施すること、②地域の医療・介護資源の機能等を把握し、地域包括支援センター等と連携しながら、退院時から看取りまでの医療・介護にまたがる様々な支援を包括的かつ継続的に提供するよう、関係機関との調整を行うこと、③質の高い在宅医療をより効率的に提供するため、24時間体制を構築するためのネットワーク化やチーム医療を提供するための情報共有の促進を図ること、④在宅医療に関する研修及び普及啓発を積極的に実施すること」とされており、ぜひ参考にしたい。平成23年度地域包括ケア推進指導者養成研修(中央研修)資料(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001oxhm.html)では、地域包括支援センターにおける個別のマネジメント(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001oxhm-att/2r9852000001oxna.pdf)が強調されているようであるが、医療介護連携を前面に打ち出した研修が不可欠と感じる。また、市型保健所については、医療計画の主体が都道府県であるが、厚労省資料「地域医療連携体制構築に関する保健所の関与について」(http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000013jau-att/2r98520000013jni.pdf)では、市型保健所の関与のポイントとして、1)設置市は、生活習慣病総合対策に地域医療連携を位置付けて、有識者による検討を経て着手する工夫をすること。2)都道府県では、医療資源が集中している実態に即し、保健所設置市に医療連携業務を委託すること。3)厚生労働省では、医療計画の実施主体を都道府県としているため、市型保健所が医療連携業務に関与するための位置付けを通知等で図ること。4)厚生労働省では、医療連携体制推進事業の実施主体に保健所設置市を加え、市型保健所の取組を促進すること、が掲げられていた。まずは、医療計画を県と保健所設置市が協働で推進していく姿勢が重要と感じる。その際、「本庁の指示待ち・指示通り実行」では難しい感じがしないでもない。所内職員の質的強化「能力(知識×技術×態度)×意欲」が必要であり、「三現主義(現場に出て、現物をみて、現実に接する)」と「役割主義(職責+チャレンジ度)」を重視し、主体的・肯定的な認識のもと、創意工夫しながらチーム力で取り組まなければならない。普段から、保健所職員の主体的、能動的な認識と取り組みによって、「信頼関係に基づく顔のみえる様々なヒューマンネットワーク」を構築していかなければならないであろう。そういえば、昨年の全国保健所長会「東日本大震災と地域保健の推進に関する全国保健所長会の対応について」メッセージ(http://www.phcd.jp/katsudou/20110930_message.pdf)では、「公衆衛生、すなわち「人々の健康」を基本とし、「地域住民・地区組織」、「保健・医療・福祉関係の事業者・施設・団体」、「行政」が、協働して健康なまちづくりを推進することこそが、身近な将来の災害に備えるものであり、地域保健活動のビジョンとなる」とされている。これは地域包括ケアのビジョンにも通じるであろう。地域包括ケアの推進に取り組む保健所のモニタリングはどうなのであろうか。保健師助産師看護師法(http://www.ron.gr.jp/law/law/kangofu.htm)第三十六条の「保健所長による管内保健師に対する指示」には地域包括ケアの推進も盛り込みたいところかもしれない。
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