楽しんでこそ人生!ー「たった一度の人生 ほんとうに生かさなかったら人間生まれてきた甲斐がないじゃないか」山本有三

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墓碑銘―母であり、姉であり、妻であった女、ここに眠る

2017年06月21日 02時15分11秒 | つれづれなるままに考えること
横浜の外人墓地に行くと、
日本で亡くなった外国人のお墓が、
故郷を見渡せるように、港が見える丘の上に、
並んでいる。

(ザクロの花)

その一つのお墓に英語で、
「日本の土地に上陸した最初の水夫ここに眠る」
と書いたお墓を見つけた。

異国で亡くなった水夫の功績を記念して、
書かれている。


これを墓碑銘と言うのであるが、他国はどうであるか知らないが、
少なくともイギリスでは、必ず墓碑銘が記されているようだ。

(ザクロの花と蝶々)

学生時代、大変奇妙な「墓碑銘」と言う題で書かれたEssay(随筆?)を読んで、
終生忘れることが無い物語となった。

それには次のように書かれていた。

「母であり、姉であり、妻であった女、ここに眠る」と言う墓碑銘である。

物語は、イギリスの片田舎で始まる。
周りには、他の農家もなく、広大な農地の中の一軒家の話。

女の赤ちゃんを産み落とした妻が産後の肥立ちが悪くて亡くなった。
(*産後の肥立ち=出産後の女性の栄養状態が悪いこと)
夫は生まれてきた娘を大切に育てる。
父と娘は、そのほかの農家や人との接触もなく、
農業で生活していくが、

ある日、娘の裸の姿を見た父と娘の間に間違いが起きる。
たった一度の過ちで、不幸なことに子供が出来、
やがて月満ち生まれた男の子―近親相姦の子供であるため、
娘は恥て、子供を遠く離れた町の教会に捨てた。

(ビョウヤナギ)


子供は神父様に拾われ育つが、青年になっても、
身元不明のため仕事もままならず、
農家の雇われ男として、転転と場所変えながら生計を立てた。

一方で子を捨てた娘は、相変わらず父親と農業に従事していたが、
父親がある日、突然の病で倒れ亡くなる。
女手一つで農家を支えることは大変で、
途方に暮れて居るところへ、
流れ流れて来た男を、雇い入れることになる。

男は農家の仕事になれており、真面目で誠実な人柄に、
女は魅かれて行く。
やがて想いが重なり、二人は結婚する。

(アジサイ1)


結婚初夜のこと、女は男の腹部に見覚えのあるあざを発見する。
この男は、自分が捨てた子であることを確信、
父との間に出来た忌まわしい思い出、
それに加え今度は息子との関係を持ったことで、
悩みに悩んだ挙句、翌朝、納屋で女は自殺した。

父との間に生まれた子供は、弟であり、
女は、その弟を生んだ母であり、
その後結婚した妻であった、この女を埋葬し墓碑銘を付けた。

「母であり、姉であり、妻であった女、ここに眠る」と。

(アジサイ2)
コメント (6)
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