「いちはらアート×ミックス」 (中編:IAAES 旧里見小学校)

千葉県市原市南部地域
「中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス」
3/21-5/11



「前編:市原湖畔美術館」に続きます。「中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス」へ行って来ました。

「いちはらアート×ミックス」 (前編:市原湖畔美術館)

引き続き湖畔美術館から里見地区へ。方角は南、養老渓谷の方です。車なら10~15分ほどで「IAAES」が姿を現します。ちなみにIAAESとは「市原芸術・スポーツ・エトセトラ学校(Ichihara Art/Athlete Etc School)」の略称。昨年に廃校となった旧里見小学校を使った展示プログラム施設です。


「IAAES(旧里見小学校)」外観

この辺りでお昼の少し前。さすがに人出が増します。周遊バスの停留所からもぞくぞく人がやって来ます。駐車場も結構混雑していました。


「IAAES(旧里見小学校)」会場内

それでは学校の中へ入ります。昨年に廃校したということもあり、見た目はほぼ小学校のまま。長い廊下に連なる教室。二階建てです。「一教室=一展示」でしょうか。展示量もかなりありました。

まずは入口付近です。「IAAESプログラム」。学校で一番広い教室を使ってのプロダクション。ディレクターは中崎透です。


中崎透「IAAESプログラム」

目に飛び込んでくるのが黒板に扉に盥や棚にバケツ。中にはバスケットボールを入れるカゴまでも。もちろん小学校の備品です。それらが言わばオブジェと化す。いずれもテキストが添えられていました。


中崎透「IAAESプログラム」

何でもミヒャエル・エンデの「モモ」の引用だそうです。ここ里見小の図書館にあったという訳書。中崎はテキストと場所に繋がりを感じた。時に本のモチーフを備品へ置き換えてみる。テキストは全部で21あります。行き来しながら追いかけてみましょう。不思議な感覚。また新たな物語が開けてくるのではないでしょうか。


豊福亮「美術室」

思わず息のんでしまいます。豊福亮の「美術室」です。床に敷き詰められた赤い絨毯、天井にはシャンデリアが吊るされている。まさに絢爛豪華なる教室。そこに飾られているのが多くのいわゆる泰西名画です。ファン・エイクにレンブラントからフェルメール、そしてコローにゴッホにセザンヌなどまで。一体何点あるのでしょうか。床、壁面問わず、隙間という隙間を絵画が詰め尽くしています。


豊福亮「美術室」

何とこの「名画」はゴンブリッチの「美術の物語」に出てくる作品、111点を複製したものだそうです。手がけたのは60名の美大生。会期中には作家、豊福本人によるワークショップも行われたとのこと。実に濃厚な空間。圧巻でした。


滝沢達史「おかしな教室」

また同じく濃厚といえば滝沢達史の「おかしな教室」も忘れられません。またまた赤絨毯、そして中央にはシャンデリアでしょうか。壁面には一面の装飾が為されている。カラフルです。一体何だろうと近づいてみました。


滝沢達史「おかしな教室」

すると無数のお菓子であることが分かる。小さなパインアメに板チョコレートのパッケージ。窓にはドーナツでしょうか。カーテンはのど飴の袋で出来ています。


滝沢達史「おかしな教室」

タイトルを言い換えればこれぞ「お菓子な教室」です。お菓子の持ち込めない学校という場でお菓子のインスタレーションをする演出。中央には心憎いことに小湊鉄道の鉄道模型も走っています。キャンディーは全5千個。チョコのパッケージも驚くべき数でした。


ミシャ・クバル「スピード・スペース・スピーチ」

IAAES会場、素直に映える作品が目立ちます。ミシャ・クバルの「スピード・スペース・スピーチ」はミラーボールを用いたインスタレーション。暗室に光と文字が投影される。まるで宇宙に瞬く星のように美しい。また面白いのがボールの回転していることです。その所以でしょうか。光や文字が終始揺らいで見える。しばらく立っていると左右の感覚、ようは平衡感覚が危うくなってもきます。


ホアン・スーチェ「シンセティックワールドの再生2014」

ホアン・スーチェの「シンセティックワールドの再生2014」もLEDを使った大掛かりなオブジェです。上下に開く触手。中央には内蔵が露となった人体模型がありました。


角文平「養老山水図」(展示室内)

その他、市原のランドスケープを学習机に再現した角文平の「養老山水図」も良いのではないでしょうか。廊下に突き出す机の脚。その姿自体もダイナミックであります。


角文平「養老山水図」(廊下側)

さてIAAESの最後に一推しの展示を。栗林隆の「プリンシパル・オフィス」です。


栗林隆「プリンシパル・オフィス」 *校長室内が作品にあたります

コンセプトは明快です。「時間を永遠に止め、痕跡を残す」。ようは校長室をマイナス30度で凍らしてしまいます。もちろん校長室の備品や応接セットはそのまま保存されている。そこで来場者は冷凍室と化した校長室の中に入り、かつての学校の記憶を辿っていく。体験型の展示でもあります。


栗林隆「プリンシパル・オフィス」

この展示、実のところかなり人気です。GW中ということもあるでしょう。最大で20~30分の行列も出来ていました。


栗林隆の「プリンシパル・オフィス」

しかしながら並んでてもおすすめしたいもの。体験は1回1~2分(混雑時)。3名ずつ入場出来ます。ともかくご覧の写真のように全てが凍り付いている。とりわけ強烈なのは校長の机の氷柱。また凍ったストーブです。もちろん黒板もソファも賞状もトロフィーも凍っている。冷凍保存された校長室の時間。学校の歴史がある意味で凝縮された場所とも言えるかもしれません。これは楽しめました。

IAAES、他にも数点作品がありますが、結論から申し上げると、この芸術祭で一番見応えのある会場ではないかと思います。私が出向いた時も一際賑わっていました。


「山登里食堂」外観 *目印は外に吊るしてある大根です。

展示を見た後はお腹も減りました。ランチは「山登里食堂」へ。保存食の輪を広げようとする「ぽのわプロジェクト」のカフェ、建物はかつての食堂を利用しています。メニューは房総の特産(イノシシ肉や房総サバ)を盛り込んだサンドイッチやカレー。地産地消の試みです。セットメニューで1000円ほどでしょうか。私はイノシシ肉をソーセージにしたシシッチャサンドを注文。サラダも新鮮です。美味しくいただきました。


「山登里食堂」内部

なおこの日はGW中ということもあってか、どこの飲食施設も混雑していました。提供にも時間がかかります。お昼時、少し早めにとってしまうか、時間に余裕をもっておいたほうが良さそうです。(小湊鉄道の駅で販売されるわっぱ弁当も早々に売り切れていました。)

ともかくものんびり食事を楽しんだ後はアートミックス最奥部、養老渓谷の周辺、及びIAAESと同様に廃校跡の会場「月出工舎」へと移動しました。

「後編:養老渓谷アートハウス・月出工舎」へと続きます。

[いちはらアート×ミックス]シリーズ
前編:「いちはらアート×ミックス」(市原湖畔美術館)
後編:「いちはらアート×ミックス」(養老渓谷アートハウス・月出工舎)

「美術手帖4月号増刊 いちはらアート×ミックス2014 公式ガイドブック」

「中房総国際芸術祭いちはらアート×ミックス」@IchiharaArtMix) 千葉県市原市南部地域(小湊鉄道上総牛久駅~養老渓谷駅一帯)
会期:3月21日(金)~5月11日(日)
休館:会期中無休。
時間:9:30~17:00 *施設やイベントによって異なる。
料金:[鑑賞パスポート]一般3800円、大学・専門・高校生3300円、中学生1000円、小学生500円、小学生以下無料。
   [個別観覧料]
   ・300円=《Luminous / Light and WindHouse》、内田未来楽校、《サンタルの食堂》、森ラジオステーション
   ・500円=《湖うみの飛行機》、《おおきな家》
   ・800円=IAAES、月出工舎、いちはら人生劇場
   ・1000円=市原湖畔美術館
  *鑑賞パスポート=会期中、芸術祭の作品の全てを観覧可。交通チケット(小湊鉄道、及び循環周遊バスの1日乗り放題)を含む。
  *個別観覧料=鑑賞パスポートをもたない来場者のための作品観覧料。
住所:市原市徳氏541-1(IAAES 旧里見小学校)他
交通:JR内房線五井駅から小湊鉄道にて飯給駅下車。バス停飯給駅入口より周遊バス「南部ルート」で旧里見小学校。
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