都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「杉本博司『本歌取り』」 ギャラリー小柳
ギャラリー小柳(中央区銀座1-7-5 小柳ビル8階)
「杉本博司『本歌取り』」
2006/11/8-2007/1/27
ギャラリー小柳で開催中の杉本博司の個展です。ピューリッツァー財団にあるリチャード・セラの彫刻を撮影した「JOE」が、日本で初めて公開されています。
コンクリート床が剥き出しになった、半ば無機質とも言える小柳の展示空間には、杉本の「JOE」が良く似合っています。お馴染みの数式を立体化したオブジェ「観念の形」と合わせて、静謐かつ、非感傷的な美の空間が形成されていました。
それにしても、この被写体がセラの彫刻であることにはまず気がつきません。形は光と影との交錯に解体され、オブジェの存在感はうっすらと湿り気を帯びたようなモノクロの画面に溶け出しています。ここにセラのオリジナルを謎解き的に見出すことより、まさにそこから「本歌取り」された写真の美感に浸る方が楽しめるのではないかと感じました。その点この展示から受ける、不明瞭で、何やら良く分からないが美しいという感覚は、それこそ杉本の言う「写真が発明された時の『原初の驚き』が体験できるはず。」(asahi.comより。)のイメージに近いようです。確かに、オブジェの本来持っていた意味を微かに保存しながら、それを殆ど未知の新しい美意識にて提示してしまうところには驚きすら感じます。
今月27日までの開催です。(1/13鑑賞)
*本歌取り:すぐれた古歌や詩の語句、発想、趣向などを意識的に取り入れる表現技巧。転じて、現代でも絵画や音楽などの芸術作品で、オリジナル作品へのリスペクトから、意識的にそのモチーフを取り入れたものをこう呼ぶ。(Hatena:Keywordから。)
「杉本博司『本歌取り』」
2006/11/8-2007/1/27
ギャラリー小柳で開催中の杉本博司の個展です。ピューリッツァー財団にあるリチャード・セラの彫刻を撮影した「JOE」が、日本で初めて公開されています。
コンクリート床が剥き出しになった、半ば無機質とも言える小柳の展示空間には、杉本の「JOE」が良く似合っています。お馴染みの数式を立体化したオブジェ「観念の形」と合わせて、静謐かつ、非感傷的な美の空間が形成されていました。
それにしても、この被写体がセラの彫刻であることにはまず気がつきません。形は光と影との交錯に解体され、オブジェの存在感はうっすらと湿り気を帯びたようなモノクロの画面に溶け出しています。ここにセラのオリジナルを謎解き的に見出すことより、まさにそこから「本歌取り」された写真の美感に浸る方が楽しめるのではないかと感じました。その点この展示から受ける、不明瞭で、何やら良く分からないが美しいという感覚は、それこそ杉本の言う「写真が発明された時の『原初の驚き』が体験できるはず。」(asahi.comより。)のイメージに近いようです。確かに、オブジェの本来持っていた意味を微かに保存しながら、それを殆ど未知の新しい美意識にて提示してしまうところには驚きすら感じます。
今月27日までの開催です。(1/13鑑賞)
*本歌取り:すぐれた古歌や詩の語句、発想、趣向などを意識的に取り入れる表現技巧。転じて、現代でも絵画や音楽などの芸術作品で、オリジナル作品へのリスペクトから、意識的にそのモチーフを取り入れたものをこう呼ぶ。(Hatena:Keywordから。)
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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このタイトルでもうくらくらきちゃいます。
上手いな~と思います。
建築へも手を伸ばしている杉本氏
次はどんな一手を?!
恥ずかしながら本歌取りという表現はこの展示で初めて知りました。
まさに言い得て妙ですよね。
次回も楽しみです!