都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「琳派芸術 第1部 煌めく金の世界」 出光美術館
出光美術館(千代田区丸の内3-1-1 帝劇ビル9階)
「酒井抱一生誕250年 琳派芸術 第1部 煌めく金の世界」
1/8-2/6
酒井抱一の生誕250年を記念して、光悦・宗達から江戸琳派までを総覧します。出光美術館で開催中の「酒井抱一生誕250年 琳派芸術 第1部 煌めく金の世界」へ行ってきました。
琳派コレクションで名高い出光美術館による約5年ぶりの琳派展です。「第1部 煌めく金の世界」に出品されたのは、光悦、宗達から、時代を下って光琳、乾山らの、半ば琳派の核心とも言うべき絵師たちの作品でした。
展覧会の構成は以下の通りです。
1章 美麗の世界
2章 金屏風の競演
3章 光琳の絵画
4章 琳派の水墨画
「宗達・光悦展」と化した冒頭部からぐっと引き込まれたのは私だけではないかもしれません。入口すぐの一角にずらりと揃ったのは、書光悦、下絵宗達の和歌巻断簡の他、伝宗達の扇面画4~5点でした。
中でもいかにも宗達ならではの大胆な画面分割の地平に光悦の書が踊る「月梅下絵和歌書扇面」や、いんげん豆のつるを自由に這わせた「いんげん豆図扇面」などは必見の作と言えるのではないでしょうか。
ちなみに「いんげん豆図扇面」では下絵部分に「金泥」などといった指示書きともとれる文字の記載もありました。その制作の過程に思いを馳せて作品を味わうのもまた良いかもしれません。
俵屋宗達「扇面散貼付屏風」(右隻) 江戸時代 出光美術館蔵
また扇面と言えばこれまた強烈な印象を残す大作が出ています。それが2点の扇面の屏風のうち、宗達の真筆とされる「扇面散貼付屏風」でした。
まるで闇夜に降る雪景色のような金の切箔を背景にして、数々の扇がどこか儚げに散り乱れています。藤やすすき、そして山影をも望むその空間は深淵で、単なる装飾性を通り越した叙情が漂っていました。
展示のハイライトは間違いなく伊年印の草花図の3点揃い踏みです。京博の「草花図襖」を筆頭に、根津美の「四季草花図屏風」、そして出光美の同じく「四季草花図屏風」が並ぶ様はまさに圧巻の一言でした。
伊年印「四季草花図屏風」(部分) 江戸時代 出光美術館蔵
もちろん同種のモチーフをとりながらも各作品には様々な違いがあります。私の好みは空間を埋め尽くさんとばかりに草花が濃密に絡む出光美の作品ですが、ここはしばしその華麗な競演に酔いしれました。
水墨の名手宗達の墨画が悪かろうはずもありませんが、それに対抗しうる画力を見せていたのが、第1部ではただの1点のみの出品となった其一の「雑画巻」でした。
如何せん長い巻物のため、展示では一部しか公開されていませんでしたが、墨の滲みを抑える処理を施した紙にタンポポやわらびなどを溌剌と描く様は其一の真骨頂です。途中に何度か巻替があり、会期を通すと全ての部分が展示されるそうですが、願わくは一度にまとめて見られればと思いました。
酒井抱一「白蓮図」 江戸時代 細見美術館
第2部の主役、抱一は1点、かの名作「白蓮図」が展示されています。まるでそれ自身が内から光を放っているかのような蓮の花弁と、下方で淡い緑色をたたえて開花を待つつぼみの凛とした趣きには改めて感銘しました。
ちなみにその作品のキャプションに記載されていましたが、同じく蓮を描いた宗達畢竟の大傑作、「蓮池水禽図」の箱に書かれた「宗達中絶品也」の一節は、抱一の手によるのだそうです。このした琳派の系譜も展示の随所で知ることが出来ました。
伝尾形光琳「紅白梅図屏風」(左隻) 江戸時代 出光美術館蔵
ところで下記のスケジュールの通り、この展覧会は完全2部制です。 第1部は宗達・光琳など、第2部では江戸琳派を中心に展観します。(出品リスト)
第1部「煌めく金の世界」1月8日(土)~2月6日(日)
第2部「転生する美の世界」 2月11日(金・祝)~3月21日(月・祝)
工芸品を除き、会期途中で全ての絵画が入れ替わります。ご注意下さい。
なお第2部はほぼ出光の館蔵品展ですが、現会期の第1部は個人蔵を含め、京博、細見など、他館の作品が全体の1割ほどを占めています。その点でも見逃せない展示と言えそうです。
「俵屋宗達 琳派の祖の真実/古田亮/平凡社新書」
単なる名品展ではなく、例えば上でも触れた伊年印の作品の競演をはじめ、宗達と光琳の水墨の比較など、展示中に色々な仕掛けもあります。2008年に東博で大琳派展があったこともあり、見慣れた作品が多いのも事実でしたが、改めて琳派の魅力に触れるのには申し分のない展覧会でした。
「もっと知りたい尾形光琳/仲町啓子/東京美術」
我らが主人公抱一がメインの第2部も早々に駆けつけるつもりです。2月6日まで開催されています。おすすめします。
*関連エントリ
「琳派芸術 第2部 転生する美の世界」 出光美術館
*開館日時:火~日(月休。但し3月21日は開館。) 10:00~17:00(入館は16:30まで) 毎週金曜日は19:00まで。(入館は18:30まで)
「酒井抱一生誕250年 琳派芸術 第1部 煌めく金の世界」
1/8-2/6
酒井抱一の生誕250年を記念して、光悦・宗達から江戸琳派までを総覧します。出光美術館で開催中の「酒井抱一生誕250年 琳派芸術 第1部 煌めく金の世界」へ行ってきました。
琳派コレクションで名高い出光美術館による約5年ぶりの琳派展です。「第1部 煌めく金の世界」に出品されたのは、光悦、宗達から、時代を下って光琳、乾山らの、半ば琳派の核心とも言うべき絵師たちの作品でした。
展覧会の構成は以下の通りです。
1章 美麗の世界
2章 金屏風の競演
3章 光琳の絵画
4章 琳派の水墨画
「宗達・光悦展」と化した冒頭部からぐっと引き込まれたのは私だけではないかもしれません。入口すぐの一角にずらりと揃ったのは、書光悦、下絵宗達の和歌巻断簡の他、伝宗達の扇面画4~5点でした。
中でもいかにも宗達ならではの大胆な画面分割の地平に光悦の書が踊る「月梅下絵和歌書扇面」や、いんげん豆のつるを自由に這わせた「いんげん豆図扇面」などは必見の作と言えるのではないでしょうか。
ちなみに「いんげん豆図扇面」では下絵部分に「金泥」などといった指示書きともとれる文字の記載もありました。その制作の過程に思いを馳せて作品を味わうのもまた良いかもしれません。
俵屋宗達「扇面散貼付屏風」(右隻) 江戸時代 出光美術館蔵
また扇面と言えばこれまた強烈な印象を残す大作が出ています。それが2点の扇面の屏風のうち、宗達の真筆とされる「扇面散貼付屏風」でした。
まるで闇夜に降る雪景色のような金の切箔を背景にして、数々の扇がどこか儚げに散り乱れています。藤やすすき、そして山影をも望むその空間は深淵で、単なる装飾性を通り越した叙情が漂っていました。
展示のハイライトは間違いなく伊年印の草花図の3点揃い踏みです。京博の「草花図襖」を筆頭に、根津美の「四季草花図屏風」、そして出光美の同じく「四季草花図屏風」が並ぶ様はまさに圧巻の一言でした。
伊年印「四季草花図屏風」(部分) 江戸時代 出光美術館蔵
もちろん同種のモチーフをとりながらも各作品には様々な違いがあります。私の好みは空間を埋め尽くさんとばかりに草花が濃密に絡む出光美の作品ですが、ここはしばしその華麗な競演に酔いしれました。
水墨の名手宗達の墨画が悪かろうはずもありませんが、それに対抗しうる画力を見せていたのが、第1部ではただの1点のみの出品となった其一の「雑画巻」でした。
如何せん長い巻物のため、展示では一部しか公開されていませんでしたが、墨の滲みを抑える処理を施した紙にタンポポやわらびなどを溌剌と描く様は其一の真骨頂です。途中に何度か巻替があり、会期を通すと全ての部分が展示されるそうですが、願わくは一度にまとめて見られればと思いました。
酒井抱一「白蓮図」 江戸時代 細見美術館
第2部の主役、抱一は1点、かの名作「白蓮図」が展示されています。まるでそれ自身が内から光を放っているかのような蓮の花弁と、下方で淡い緑色をたたえて開花を待つつぼみの凛とした趣きには改めて感銘しました。
ちなみにその作品のキャプションに記載されていましたが、同じく蓮を描いた宗達畢竟の大傑作、「蓮池水禽図」の箱に書かれた「宗達中絶品也」の一節は、抱一の手によるのだそうです。このした琳派の系譜も展示の随所で知ることが出来ました。
伝尾形光琳「紅白梅図屏風」(左隻) 江戸時代 出光美術館蔵
ところで下記のスケジュールの通り、この展覧会は完全2部制です。 第1部は宗達・光琳など、第2部では江戸琳派を中心に展観します。(出品リスト)
第1部「煌めく金の世界」1月8日(土)~2月6日(日)
第2部「転生する美の世界」 2月11日(金・祝)~3月21日(月・祝)
工芸品を除き、会期途中で全ての絵画が入れ替わります。ご注意下さい。
なお第2部はほぼ出光の館蔵品展ですが、現会期の第1部は個人蔵を含め、京博、細見など、他館の作品が全体の1割ほどを占めています。その点でも見逃せない展示と言えそうです。
「俵屋宗達 琳派の祖の真実/古田亮/平凡社新書」
単なる名品展ではなく、例えば上でも触れた伊年印の作品の競演をはじめ、宗達と光琳の水墨の比較など、展示中に色々な仕掛けもあります。2008年に東博で大琳派展があったこともあり、見慣れた作品が多いのも事実でしたが、改めて琳派の魅力に触れるのには申し分のない展覧会でした。
「もっと知りたい尾形光琳/仲町啓子/東京美術」
我らが主人公抱一がメインの第2部も早々に駆けつけるつもりです。2月6日まで開催されています。おすすめします。
*関連エントリ
「琳派芸術 第2部 転生する美の世界」 出光美術館
*開館日時:火~日(月休。但し3月21日は開館。) 10:00~17:00(入館は16:30まで) 毎週金曜日は19:00まで。(入館は18:30まで)
コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )
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琳派は豊かで華やかで、心が和みますね。
第2部の江戸琳派も楽しみです。
こんばんは。こちらこそTBありがとうございます。
2部も待ち遠しいですね!抱一が楽しみです。
”遥かなシャルトル”というブログを書いているCojicoという者です。この度は、トラックバックをありがとうございました。私もTBをしたいのですが、恥ずかしいことにその方法を知らないのです。
琳派の絵を見ていると、心が軽くなり笑顔になってしまいます。いいですねえ。
こちらこそはじめまして。コメントをありがとうございます。
琳派の絵は本当に何度見ても良いですね。
そろそろ後期もせまってきました。待ち遠しいものです。
ともあれ、抱一イヤーはまだ始まったばかりですし、今後もまだまだ企画が目白押しですね。はろるどさんの後半レポートも楽しみにしています。
飛嶋さんこちらこそお久しぶりです。コメントありがとうございます。
紅白梅図は本当に可憐ですね。あの儚さ、やはり抱一の独擅場だと思いました。久しぶりの展示ということで出光にも感謝したいです。
>抱一イヤー
千葉市美の展覧会もたのしみですね!盛り上げましょう!