「琳派 四季のきょうえん(その1)」 畠山記念館

畠山記念館港区白金台2-20-12
「琳派 四季のきょうえん」
4/3-6/10



早々に行ってきました。畠山記念館で開催中の「琳派 四季のきょうえん」展です。同記念館所蔵の琳派コレクションが、約6年ぶりに公開されています。

「畠山記念館で6年ぶりの琳派展」(展示替え情報など。一度、拙ブログでもご紹介しています。)

 

まずはお目当ての抱一です。今回、出品されていたのは全部で4点でしたが、中でも「四季花木図屏風」は目立っていました。バークコレクションの「桜花図屏風」を思わせるような上向きの桜の木の下には、四季の草花が右から左へと時を追って描かれています。たらし込みの幹の瑞々しさ、仄かにピンク色を帯びた白い桜の花びら、そしてあたかもそよ風に靡いているような百合や朝顔などは、どれも抱一ならではの精緻なタッチで表現されていました。また、ススキの描写こそさすがに「夏秋草図屏風」の神業的な筆の流れには及びませんが、草花は総じて生々しく、あたかもその香りすら漂ってくるような臨場感をも感じさせています。それに金泥による土の表現も華麗です。無理なく、草木を引き立てるように配されています。



屋根先にちょこんとのった一匹の猫が夕涼みをする「賤が屋の夕顔図」も、その余白の妙も含めて、情緒豊かな魅力ある作品でした。夕顔の下よりゆらゆらと立ち上る煙(蚊遣りの煙です。)が夏の夕暮れを伝え、その屋根下での生活の情景を静かに連想させてくれます。筆の力も抜けた、軽やかで即興的な作品です。猫の行き先も気になります。

軽妙な「夕顔図」と比べて、堅牢な構成感を見せているのは「立雛図」です。松や菊、それに金地の模様などを丁寧に塗りわけ、気品に溢れた立雛の様子を可愛らしくも表現しています。また、上部に貼られた自詠の和歌の色紙も洒落ています。主張し過ぎることがありません。



さて抱一以外では、光琳の「白梅模様小袖貼付屏風」が見事でした。金地の屏風に、力強い白梅の柄をとった小袖が艶やかに貼付けられています。枝振りは緊張感にも溢れ、しなやかなカーブを描きながら四方へと伸びていました。これぞ光琳とでも言うような、隙のない、逞しい造形描写を思わせる作品です。



工芸品では光悦や乾山の楽焼茶碗が印象に残りました。中でも光悦の「赤楽茶碗 銘雪峯」は圧倒的です。あたかも雪が積もるように白釉が口部に掛けられ、まるで稲光のように走る火割れが側面を飾っています。また火割れの部分に見る金粉も引き立っていました。楽焼に独特な重々しい静謐感が、この煌めく火割れによって一変しています。これは斬新です。

いわゆる乾山焼をやや苦手とする私ですが、「黒楽茶碗 銘武蔵野」には強く惹かれました。鈍く光る黒楽の胴の部分には、満月と大きく揺れるススキが美しく描かれています。その他、「結鉾香合」や、比較的絵柄の落ち着いた「銹絵染付笹文茶碗」にも魅力を感じます。共に白梅や笹が、素朴な風情で描かれた作品でした。

その他では、一見しただけでは彼のものとは分からないような其一の「曲水宴図」も興味深い作品です。南画を思わせる描写にて、宴の様子を細やかなタッチで表現しています。ここにはまだ、光琳より受け継ぐ、力強く斬新な造形の美は見られません。それがかえって新鮮にも感じました。

次回は、抱一の「十二ヶ月花鳥図」(畠山本)の展示される期間(4/17-5/6)に足を運びたいと思います。

6月10日までの開催です。(4/6鑑賞)

*関連エントリ
「畠山記念館で6年ぶりの琳派展」
コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
さすが! (るる)
2007-04-10 23:41:04
はろるど さんの文章を読むとあたかも目の前に広がる抱一から百合の香が漂うかの様な素晴らしさで感動します。

今週末に何としても行かなければ!

十二ヶ月も凄く楽しみですね
 
 
 
早! (Tak)
2007-04-10 23:50:57
流石、はるるどさん。
琳派、抱一となると行動早いですね。

「四季花木図屏風」観てみたいです。
これは見逃せませんね。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2007-04-12 22:02:45
@るるさん

こんばんは。早速のコメントをありがとうございます!

>はろるど さんの文章を読むとあたかも目の前に広がる抱一から百合の香が漂うかの様な素晴らしさで感動します。

お褒めの言葉をありがとうございます。
私には勿体ないくらいです…。

次回は十二ヶ月花鳥図を見に行きます!


@Takさん

こんばんは。

>琳派、抱一となると行動早いですね。

とりあえず畠山記念館の抱一は全てみたいなと思い、
会期早々に行ってきました。
結構入り組んだ場所にあるのですね…。
地図は必携かもしれません。
 
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