都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「今、蘇るローマ開催・日本美術展」 日本橋三越本店ギャラリー
日本橋三越本店新館7階ギャラリー(中央区日本橋室町1-4-1)
「今、蘇るローマ開催・日本美術展 - 日本画を世界に 大観・玉堂・栖鳳・古径・青邨の挑戦 - 」
5/13-25
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/d8/7213de883391baf84d5bf3c6dae33926.jpg)
1930年、イタリアはローマにて開催された「日本美術展覧会」を再現します。日本橋三越で開催中の「今、蘇るローマ開催・日本美術展」へ行ってきました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/fe/c727bc1c0d03cc7b68cde0cfab41d178.jpg)
展示品は当時の展覧会に出された近代日本画(実際の20%強。一部例外あり。)ですが、出品リストを眺めても明らかなように、その9割ほどが大倉集古館の館蔵品で占められています。ようは「大倉集古館蔵、近代日本画展」です。大観の「夜桜」、観山の「不動尊」をはじめとする、同館自慢のコレクションが約40点ほど紹介されていました。ちなみに、集古館での近代日本画の企画展はここしばらく記憶にありません。まさにファン待望の展示とも言えそうです。
そもそもローマ展の団長を務めたのが大観だそうですが、やはり今回の展示でも彼の作品が際立っています。冒頭の水墨画、「山四趣」と「瀟湘八景」の計12点からして見応え満点です。ともに墨の濃淡にて山の稜線から水辺の広がり、それに雲の靡く様から場の湿り気までを表していますが、前者が日本的なこぢんまりとした自然を感じさせるのに対し、後者は遠近感の巧みな、大陸の景色の雄大さを見るような印象を与えています。また大観では、ローマ展に出された作品ではないもの、スケッチ風に花や木を描いた連作から「野菊」も印象に残りました。大きな余白を右上にとりながら、画面左下の野菊が風に吹かれてゆらゆらと揺れています。うっすらと橙色を帯びた花の色もまた魅力的でした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/59/8ee2854550abb48f048e0cd1c0b98086.jpg)
大観以外で挙げたいおすすめの作品は二点、観山の「維摩黙然」と栖鳳の「蹴合」です。前者の観山は、大乗仏教の理想的人物であるという維摩が泰然として座る様が描かれていますが、桃色やすみれ色をした衣服の装飾はもちろんのこと、脇に仕える女性の瑞々しい白い肌や瞳などの精緻な表現にも目が奪われます。この味わいはもはや近代日本画のロココです。また後者の栖鳳は、御舟と並び、近代日本画家の中でも卓越した技巧を見せる彼ならではの優品です。日本画にて羽毛の様子をこれほど立体的に、しかもそれでいてフワフワとした質感を伝えたものが他にあるでしょうか。大小、様々な太さのタッチを駆使して、黒を基調としながらも仄かに七色に光る軍鶏の毛を驚くほど写実的に仕上げています。これには舌を巻きました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/9c/4d884779ae962219e6ab082572f242a4.jpg)
その他、木菟をモチーフとした作品ではマイベストの古径「木菟図」、また色鮮やかな衣装に何故か女性の儚さをも思う深水の美人画「小雨」などにも惹かれました。お気に入りの一枚を見つけるのにさしたる労力はいりません。
今月25日までの開催です。近代日本画ファンの方には是非ともおすすめします。
「今、蘇るローマ開催・日本美術展 - 日本画を世界に 大観・玉堂・栖鳳・古径・青邨の挑戦 - 」
5/13-25
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1930年、イタリアはローマにて開催された「日本美術展覧会」を再現します。日本橋三越で開催中の「今、蘇るローマ開催・日本美術展」へ行ってきました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6d/fe/c727bc1c0d03cc7b68cde0cfab41d178.jpg)
展示品は当時の展覧会に出された近代日本画(実際の20%強。一部例外あり。)ですが、出品リストを眺めても明らかなように、その9割ほどが大倉集古館の館蔵品で占められています。ようは「大倉集古館蔵、近代日本画展」です。大観の「夜桜」、観山の「不動尊」をはじめとする、同館自慢のコレクションが約40点ほど紹介されていました。ちなみに、集古館での近代日本画の企画展はここしばらく記憶にありません。まさにファン待望の展示とも言えそうです。
そもそもローマ展の団長を務めたのが大観だそうですが、やはり今回の展示でも彼の作品が際立っています。冒頭の水墨画、「山四趣」と「瀟湘八景」の計12点からして見応え満点です。ともに墨の濃淡にて山の稜線から水辺の広がり、それに雲の靡く様から場の湿り気までを表していますが、前者が日本的なこぢんまりとした自然を感じさせるのに対し、後者は遠近感の巧みな、大陸の景色の雄大さを見るような印象を与えています。また大観では、ローマ展に出された作品ではないもの、スケッチ風に花や木を描いた連作から「野菊」も印象に残りました。大きな余白を右上にとりながら、画面左下の野菊が風に吹かれてゆらゆらと揺れています。うっすらと橙色を帯びた花の色もまた魅力的でした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/59/8ee2854550abb48f048e0cd1c0b98086.jpg)
大観以外で挙げたいおすすめの作品は二点、観山の「維摩黙然」と栖鳳の「蹴合」です。前者の観山は、大乗仏教の理想的人物であるという維摩が泰然として座る様が描かれていますが、桃色やすみれ色をした衣服の装飾はもちろんのこと、脇に仕える女性の瑞々しい白い肌や瞳などの精緻な表現にも目が奪われます。この味わいはもはや近代日本画のロココです。また後者の栖鳳は、御舟と並び、近代日本画家の中でも卓越した技巧を見せる彼ならではの優品です。日本画にて羽毛の様子をこれほど立体的に、しかもそれでいてフワフワとした質感を伝えたものが他にあるでしょうか。大小、様々な太さのタッチを駆使して、黒を基調としながらも仄かに七色に光る軍鶏の毛を驚くほど写実的に仕上げています。これには舌を巻きました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/00/9c/4d884779ae962219e6ab082572f242a4.jpg)
その他、木菟をモチーフとした作品ではマイベストの古径「木菟図」、また色鮮やかな衣装に何故か女性の儚さをも思う深水の美人画「小雨」などにも惹かれました。お気に入りの一枚を見つけるのにさしたる労力はいりません。
今月25日までの開催です。近代日本画ファンの方には是非ともおすすめします。
コメント ( 10 ) | Trackback ( 0 )
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好き嫌いは別として
ほとんど同じ時に描かれた作品を
一度に見られる幸せ。
贅沢な展覧会ですよね。
イタリア側に贈呈された数点を除き、日本に戻った作品も所在不明のものが多いそうですね。本当に残念なことですが、それだけに大倉のコレクションは貴重ですね。
>お気に入りの一枚を見つけるのにさしたる労力はいりません。
日本画が好きなら何かしら好きな作品が見つかりますね。なかなか贅沢な展覧会でした。
栖鳳の蹴合の凄みは実物を見ないとなかなかわかりませんね。
およそ闘いとは無縁な程の美しい姿です
知らなかったのですが、この展示会の逸話は面白そうですね。
こういう「○○美術館所蔵展」ももっとやってほしいものです。
こんばんは。
>ほとんど同じ時に描かれた作品
その時代の雰囲気を生で感じることが出来ますよね。
なかなか壮観でした。
また遅れましたが、チケットをどうもありがとうございました。
おかげさまで佳い展示を楽しめました。
@キリルさん
こんばんは。
>日本に戻った作品も所在不明
やはり失われているものも少なくありませんか…。
今回の大倉の所蔵品はその中でも指折りのものなのでしょうね。
仰るように貴重です。
>栖鳳の蹴合の凄み
いつもながらに栖鳳の画力には至極感心させられます。
つい何年か前に開催された山種の回顧展を見逃したのが今更ながらに残念です。
@るるさん
こんばんは。
>こういう「○○美術館所蔵展」ももっとやってほしいもの
同感です。
この前の大丸の山寺の展示もそうでしたが、
まだまだ見知らぬ名画がたくさんあることが良く分かりました。
すでに見ているのですが、あそこにこれだけの
名品があることは知りませんでした。
私は維摩居士の横に控える女性の色っぽさに
見とれてしまいました。
>あそこにこれだけの名品があることは知りません
同感です。そもそも大倉は絵の展示の企画が少ないですよね。
まさかこれほどとは思いませんでした。
>維摩居士の横に控える女性の色っぽさ
そうでしたね。仏画にも関わらず世俗的なところがまた面白いなと思います。
開催時期(昭和前期)の世界情勢を思うに付け、かなり贅沢な展覧会だと思いました。
ローマでの展示風景は、床の間畳間を設え、生花を生けてある中に展示です。さぞかし贅沢な会場だったことでしょう。時代を超えて再現、贅沢な内容でした。
>いずれも柔らかな描きの作品
そうですね。もうこればっかりは好みの問題でして…。
特に大観は彩色よりも水墨の方が好きですね。
>開催時期(昭和前期)の世界情勢
ムッソリーニが絡んでいたりと、時代を考えれば国威発揚の面も大いにあったのでしょうね。その分、力が入っているように思えました。
>床の間畳間を設え、生花を生けてある中に展示
そこまで「和」のイメージを再現していたのですか。
ヨーロッパ人にとってのエキゾチックな部分がまた受けたのではないかなと感じます。
私も昨日行って参りました。
ローマ展の素晴らしさもうかがい知れましたが、大倉集古館には、これだけの名品があるんですね。
私が行った時は大混雑で、ゆっくりと鑑賞できなかったのが残念でした。
>大倉集古館には、これだけの名品がある
同感です。大倉の近代日本画をこれだけまとめてのは初めてでした。
あの空間では展示出来ないほどですよね。
(アートコレクションで出たそうですが…。)
>私が行った時は大混雑
夜は空いていました。
デパートですし、混雑は致し方ないかもしれませんね…。