「蕗谷虹児展」 郵政博物館

郵政博物館
「少女たちの憧れー蕗谷虹児展」
3/1~5/25



郵政博物館で開催中の「少女たちの憧れー蕗谷虹児展」を見て来ました。

主に大正から昭和にかけて少女雑誌の挿絵で人気を集めた蕗谷虹児。妖艶かつモダン。その美しき女性像は今も古びることはありません。

本展では蕗谷虹児の業績を紹介。出品は前後期あわせて全217点(一会期では約100~120点)です。デビュー作から晩年、戦後の絵本や童話の挿絵まで、ほぼ画業の全てを網羅しています。


「或る夜の夢 令女界第1巻第4号 表紙原画」 1922年 蕗谷虹児美術館

まずは大正期、一世を風靡した「令女界」から「或る夜の夢」ではどうでしょうか。同刊は若き20代の蕗谷が編集段階から参加した女性誌。エメラルドグリーンにも染まる星空を進み行く舟。可憐な女性が大きな扇をもっている。細かな装飾も美しい。ちなみに「令女界」の挿絵、展示でもいくつか出ていましたが、ともかく感心するのは蕗谷がかなり早い段階からアール・デコとも言うべき自らの画風を確立していたことです。

確かに後にパリへ渡り、タブローにも挑戦。それも評価されていますが、初期の挿絵原画からしてファッショナブルでかつ洗練されている。蕗谷類い稀なる才能を感じさせます。


「柘榴を持つ女」 1927年 個人蔵

何度見ても美しい作品は美しい。パリ時代の代表作とも言うべき「柘榴を持つ女」です。在巴里日本人美術家展への出品作。滑らかな線。そして点描を利用した色彩感覚。柘榴を持つ手の指先にはピンクのマニキュアが塗られている。青く澄んだ瞳に思わず吸い込まれそうになります。


「星からの音信 令女界第17巻第11号 口絵」(部分) 1938年 蒼の山荘 *前期展示

大戦期にはいわゆる戦争画的な作品も手がけた蕗谷。昭和13年の「令女界」口絵の「星からの通信」です。女性が想うのは夫なのか、銃を手に日の丸を持った兵士の姿。しかしながら女性の表情や雰囲気。何もかつて蕗谷が描いていた女性と大きく変わるものではない。若くして母を亡くしている画家です。その女性像は確固たるものがあったのかもしれません。

郵政博物館ならではの工夫ではないでしょうか。チラシ表紙を飾る「花嫁」(1968)です。ふるさと切手としてH9年にも発売された作品。切手と本画が並んで展示されています。花嫁衣装に身を纏った女性。目を細めては両手を差し出し、盃を口を前にする。本画の右目に注目です。何やら目元から白い筋が垂れているのが見える。涙でしょうか。もちろん切手ではまるで分かりません。

ちなみに切手(50円)の「花嫁」は併設のミュージアムショップで販売中です。切手ファンには見逃せないのではないでしょうか。


「睡蓮の夢」 1924年 個人蔵

ところで蕗谷虹児、実のところ私も大好きな画家。3年ほど前でしょうか。そごう美術館での回顧展にも足を運んだこともありました。

「魅惑のモダニスト 蕗谷虹児展」 そごう美術館(はろるど)

今回はそれ以来の展示。ただ出品作こそいくつか異なりますが、全体の構成など、似たような部分が多かったかもしれません。郵政博物館は手狭なスペース。規模としてはおそらくそごうの時を下回ります。ただそれでも久々に蕗谷の作品をまとめて見る喜び。まずは楽しめました。

さて会場の郵政博物館です。かつては大手町にあった逓信総合博物館が押上のスカイツリー内に移転。この3月のオープンしました。ようは蕗谷虹児展はこけら落としの展覧会でもあります。



館内は常設スペースと蕗谷展の企画展示ゾーンの二つ。常設では主に日本の郵便や通信に関する歴史は資料を紹介しています。日本最古の切手の自販機からお馴染みのポストに郵便バイクなども。体験型やデジタル機器を用いた展示があるのもポイントです。こちらは一部を除いて撮影が可能でした。



また特筆すべきは国内外の各種切手を集めた「切手の世界」(切手の撮影は不可)です。これが凄まじいまでの膨大なコレクション。何でも全部で33万種あるとか。もはや一日で見られるものではありません。



なお郵政博物館へは初めて行きましたが、スカイツリー内でのアクセス、必ずしも分かりやすいとは言えません。というのも博物館はソラマチの9階にありますが、建物自体はオフィス棟のイーストタワーです。そもそもソラマチ商店街から直通のエレベーターはなく、途中で一度、別のエレベーターに乗り換える必要があります。



スカイツリータウン・ソラマチのほぼ一番東側(押上駅側)、イーストヤード12番地のエレベーターが目印です。そこで一度、8階(千葉工大スカイツリーキャンパス)まであがった後、改めて裏手にある「ライフ&カルチャー用エレベーター」で9階へと進むと博物館があります。(階段でも可。)エレベーターの近い押上駅の利用をおすすめします。(スカイツリー駅からでは延々と歩きます。)

ミュージアムカフェマガジンの次回最新号が郵政博物館の特集だそうです。そちらにも期待しましょう。

「新装版 蕗谷虹児/らんぷの本/河出書房新社」

入館料は300円でした。5月25日まで開催されています。

「少女たちの憧れー蕗谷虹児展」 郵政博物館
会期:3月1日(土)~5月25日(日)
 *前期:3/1(土)~4/13(日)、後期:4/15(火)~5/25(日)
休館:3/17(月)、4/14(月)、5/7(水)
時間:10:00~17:30 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般300円、小中高生150円。
 *郵政博物館(常設展)への入館料を含む。
 *10名以上の団体は各50円引。
住所:墨田区押上1-1-2 東京スカイツリータウン・ソラマチ9階
交通:東武スカイツリーラインとうきょうスカイツリー駅、及び東武スカイツリーライン・東京メトロ半蔵門線・京成押上線・都営浅草線押上駅より直結。スカイツリータウン内。
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