東京シティ・フィル定期 「ハイドン:天地創造」 飯守泰次郎

東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 第226回定期演奏会

ハイドン オラトリオ「天地創造」(全3部)

ソプラノ 市原愛
テノール 望月哲也
バス 成田眞
合唱 東京シティ・フィル・コーア
お話 吉田進
管弦楽 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
指揮 飯守泰次郎

2009/2/20 19:00 東京オペラシティコンサートホール



上野時代は度々お世話になりましたが、初台へと本拠地を移してからの公演へ行ったのは初めてでした。東京シティの定期演奏会よりハイドンのオラトリオ「天地創造」を聴いてきました。

ミルトンの「失楽園」、及び旧約「創世記」などを元に構成された全110分にも及ぶ大曲を、ほぼ緊張感を削ぐことなく演奏し得たのは、やはり指揮の飯守に抜群の求心力があったからではないでしょうか。飯守というと、さもすればワーグナーの公演を挙げられるように、ロマン派音楽を勇壮に聴かせるエネルギッシュな指揮者のイメージを持っていますが、オーケストラの地力も露となるような、半ば『騙し』の利かない古典派音楽の魅力を素直に引き出すことにも十分に長けています。決して機能的とは言えない同オーケストラへ的確な指示を送り、「音による絵画」(解説冊子)にも興味深いハイドンのシンプルながらも凝った音楽を、時に逞しい合唱団の力を借りながら見事にまとめあげていました。流石の安定感です。

ピリオド楽器の奏法も公演を引き締めます。神の栄光を輝かしく讃える華麗な前半部の音楽は過度に装飾することなく清涼に響かせ、一方でのアダムとエヴァの邂逅を歌う第3部においては微笑ましく温かい愛の調べを小気味良く聴かせていました。また合唱、オケとも尻上がりに調子をあげていたのが印象的です。前半部はやや合わない部分もありましたが、特に休憩を挟んでの第3部は相当の水準に達していたのではないでしょうか。終結部の高らかな「アーメン」はホールいっぱいに瑞々しく響いていました。

歌手ではバスの成田が別格です。堂々とした歌唱で周囲を圧倒していました。次点ではソプラノの市原愛ではないでしょうか。可憐な歌声はエヴァ役にぴったりとはまっていました。

冒頭には、ハイドンとメイソンの関係を解説する作曲家の吉田進氏の『お話」がありました。もちろんこうした試みには拍手を送りたいところですが、充実した内容はともかくも、如何せん話し振りがやや硬すぎました。折角のライブなので、もう一歩アドリブをきかせた遊び心があっても良かったと思います。

会場は大入りでした。終演後、合唱団が退場するまで拍手が鳴り止まなかったことを付け加えておきます。
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