都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ルーヴル美術館展 - フランス宮廷の美 - 」 東京都美術館
東京都美術館(台東区上野公園8-36)
「ルーヴル美術館展 - フランス宮廷の美 - 」
1/24-4/6
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/64/0edb79d6cc5abaf70ae6cd2fd184bda9.jpg)
マリー・アントワネット(1755-1793)愛用の品など、主にルイ15世(在位1715-74)、16世(在位1774-92)周辺の装身具、または調度品が紹介されています。東京都美術館で開催中の「ルーヴル美術館展」へ行ってきました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/12/aab31c7d66c817f84c4c040f3415630d.jpg)
展示の内容は往々にしてチラシで推し量られるものがありますが、今回、目にするドキツいピンク色は、まさにそれを的確に示しているのかもしれません。ともかく展示されているのは、何もかもが金の細工に彩られた、豪華絢爛な装飾美術品の数々です。そこにこめられた美意識はおおよそ私の理解出来るものではありませんが、贅を凝らして作られた品に、当時の最先端のモードを肌で感じ取ることが出来ます。ちなみにちょうど同じ上野では、日本の宮廷美術を辿る「宮廷のみやび」展(東博)が開催されていますが、例えば青磁器一つをとっても、そこに見出される美のセンスは180度逆転どころか、別次元の世界にあると言えそうです。装飾の存在感が、青磁の元来に持つ美しさを完全に凌駕しています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/bd/b6a8dde45296a35402046407a50917c2.jpg)
ただし一口に豪華絢爛としても、ルイ15世と16世紀の治世の間では、その美術様式に相当の違いがあります。ルイ15世では、アラベスク様式より派生した装飾芸術、ロカイユ様式(ロココ的)が中心であったのに対し、16世の頃にはいわゆる新古典主義が台頭していました。実際、この展示でも、15世と16世における美術様式の相違を俯瞰する二部構成がとられていますが、例えばロカイユで頻出する貝や植物のモチーフから、ギリシャを思わせる直線的で比較的簡素な造形を見比べるのもまた面白いのではないでしょうか。そしてその二つの美術様式を宮廷内にて牽引したのが、それぞれ15世に愛されたポンパドゥール夫人(1721-1964)であり、また16世の妃、アントワネットでもあったわけです。展示の最後には、革命時、亡命を企てた彼女が携行したともされる、「旅行用携行品入れ」(1797-88)が登場します。ダイナミックに動く歴史の流れを示す品かもしれません。
興味深いのは、上でも触れた青磁のような、東洋との関係を示す作品です。「蒔絵水差し」や「蒔絵香入れ」など、日本製の漆器にフランスで飾りを施した小品にも見応えがありましたが、特に圧巻だったのは、大きな蒔絵をはめ込んで作られた家具、「ベルヴュー宮の王女たちのコーナー家具」(1780)でした。迫出す岩山や、鋭角的な線による木立など、狩野派を思わせる山水画風の蒔絵が、家具の側面にはめ込まれています。また直接、日本との繋がりはないかもしれませんが、ロカイユ様式の作である皿、「空色渦巻きのある『エーベル』の皿」(1755)も印象深い作品です。この空色は中国の青磁に由来するものだそうですが、その渦巻きがさながらグレートウェーブとも、はたまた琳派の絵師の描く波とも言えるような、とても図像的で力強い絵柄になっています。それにロカイユではもう一点、造形的に面白い「ソース入れ」(1756)もおすすめの一品です。花びらが開くような形をしていますが、側面からだと荒れ狂う波のようにも見えました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/2d/b2fda91f4dd36ab80c6d964bd2b5476f.jpg)
その他、アントワネット、ポンパドゥールの肖像画、または当時の髪型の流行を示す風刺画(エッチング)、さらにはタピスリーなども出ています。特に王の庇護も受けて制作されていたともいう、18世紀フランスのタピスリーをこれほどまとまって楽しむ機会はそうありません。
都美の大型展です。なるべく早めにと思い、東京が「大雪」に見舞われた日に行ってきましたが、館内は予想以上に混んでいました。それに工芸品の展示が多いので、動線はいつもより狭く、また入り組んでいます。(壁にかけられる絵画と異なり、ケースに展示されているため。)混雑すると身動きもとれなくなりそうです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/25/d3474fc92fd452b0bf7ba30b86977517.jpg)
4月6日までの開催です。
「ルーヴル美術館展 - フランス宮廷の美 - 」
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マリー・アントワネット(1755-1793)愛用の品など、主にルイ15世(在位1715-74)、16世(在位1774-92)周辺の装身具、または調度品が紹介されています。東京都美術館で開催中の「ルーヴル美術館展」へ行ってきました。
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![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/12/aab31c7d66c817f84c4c040f3415630d.jpg)
展示の内容は往々にしてチラシで推し量られるものがありますが、今回、目にするドキツいピンク色は、まさにそれを的確に示しているのかもしれません。ともかく展示されているのは、何もかもが金の細工に彩られた、豪華絢爛な装飾美術品の数々です。そこにこめられた美意識はおおよそ私の理解出来るものではありませんが、贅を凝らして作られた品に、当時の最先端のモードを肌で感じ取ることが出来ます。ちなみにちょうど同じ上野では、日本の宮廷美術を辿る「宮廷のみやび」展(東博)が開催されていますが、例えば青磁器一つをとっても、そこに見出される美のセンスは180度逆転どころか、別次元の世界にあると言えそうです。装飾の存在感が、青磁の元来に持つ美しさを完全に凌駕しています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/77/bd/b6a8dde45296a35402046407a50917c2.jpg)
ただし一口に豪華絢爛としても、ルイ15世と16世紀の治世の間では、その美術様式に相当の違いがあります。ルイ15世では、アラベスク様式より派生した装飾芸術、ロカイユ様式(ロココ的)が中心であったのに対し、16世の頃にはいわゆる新古典主義が台頭していました。実際、この展示でも、15世と16世における美術様式の相違を俯瞰する二部構成がとられていますが、例えばロカイユで頻出する貝や植物のモチーフから、ギリシャを思わせる直線的で比較的簡素な造形を見比べるのもまた面白いのではないでしょうか。そしてその二つの美術様式を宮廷内にて牽引したのが、それぞれ15世に愛されたポンパドゥール夫人(1721-1964)であり、また16世の妃、アントワネットでもあったわけです。展示の最後には、革命時、亡命を企てた彼女が携行したともされる、「旅行用携行品入れ」(1797-88)が登場します。ダイナミックに動く歴史の流れを示す品かもしれません。
興味深いのは、上でも触れた青磁のような、東洋との関係を示す作品です。「蒔絵水差し」や「蒔絵香入れ」など、日本製の漆器にフランスで飾りを施した小品にも見応えがありましたが、特に圧巻だったのは、大きな蒔絵をはめ込んで作られた家具、「ベルヴュー宮の王女たちのコーナー家具」(1780)でした。迫出す岩山や、鋭角的な線による木立など、狩野派を思わせる山水画風の蒔絵が、家具の側面にはめ込まれています。また直接、日本との繋がりはないかもしれませんが、ロカイユ様式の作である皿、「空色渦巻きのある『エーベル』の皿」(1755)も印象深い作品です。この空色は中国の青磁に由来するものだそうですが、その渦巻きがさながらグレートウェーブとも、はたまた琳派の絵師の描く波とも言えるような、とても図像的で力強い絵柄になっています。それにロカイユではもう一点、造形的に面白い「ソース入れ」(1756)もおすすめの一品です。花びらが開くような形をしていますが、側面からだと荒れ狂う波のようにも見えました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/2b/2d/b2fda91f4dd36ab80c6d964bd2b5476f.jpg)
その他、アントワネット、ポンパドゥールの肖像画、または当時の髪型の流行を示す風刺画(エッチング)、さらにはタピスリーなども出ています。特に王の庇護も受けて制作されていたともいう、18世紀フランスのタピスリーをこれほどまとまって楽しむ機会はそうありません。
都美の大型展です。なるべく早めにと思い、東京が「大雪」に見舞われた日に行ってきましたが、館内は予想以上に混んでいました。それに工芸品の展示が多いので、動線はいつもより狭く、また入り組んでいます。(壁にかけられる絵画と異なり、ケースに展示されているため。)混雑すると身動きもとれなくなりそうです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/25/d3474fc92fd452b0bf7ba30b86977517.jpg)
4月6日までの開催です。
コメント ( 8 ) | Trackback ( 0 )
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レビューは、はろるどさんのがはじめてです。おかげさまでだいたい感じがわかりました。
風刺画面白そうですね。
>おかげさまでだいたい感じがわかりました。
ありがとうございます。無心で楽しめる展覧会です。ともかく派手ですが…。
>風刺画面白そうですね。
これは思わず笑ってしまいました。ここまでやるのかという感じです。乞うご期待のほどを!
こんなことではフェルメールが六点以上来るという展覧会はどうなってしまうのでしょうか?
東京都美術館は去年のロシア絵画とかいかにも人が入らなそうな展覧会やったほうがいいのでは?
キャパシティを考えるとー。
さて予報では明日も雪、明日にでも行ってきましょうかね。
中の階段が大変なことにもなりそうです。
>さて予報では明日も雪、明日にでも行ってきましょうかね。
それはベストです。会期末にはきっと黒山の人だかりかと…。
混雑を考慮して作品解説をガラスケースの上部に表示したのは賢明ですが、嗅ぎ煙草容れなど小さな展示品が予想以上に多く疲れましたね。
はろるどさんが書いておられる髪形の風刺版画とか日本とのかかわりを示す漆器だの蒔絵のパネルだのは本当に面白かったです。
>髪形の風刺版画とか日本とのかかわりを示す漆器だの蒔絵のパネル
そうですね。
日本の文物がかの地の感性と融合して、我々にとっては殆ど奇異に感じる造形に変化していたのがとても面白く感じられました。蒔絵の作者などが分かるとさらにまた興味深くなりそうですね。どのような絵師が関与していたのでしょうか。
土曜日とあって20分待ち。
会場内は推して知るべし。
最近、ブーシュを観たいなーと
思っていた自分にはなんとか
妥協点見つけられる展覧会でした。
土曜20分待ちでしたか。都美の大型展なのでもう致し方ありませんね。
>妥協点見つけられる展覧会でした。
ご感想お待ちしております。相方はひたすら「ベルばら」に走っておりましたが…。