「大英自然史博物館展」 国立科学博物館

国立科学博物館
「大英自然史博物館展」
3/18~6/11



国立科学博物館で開催中の「大英自然史博物館展」のプレスプレビューに参加してきました。

大英自然史博物館のコレクションが初めてまとまった形で日本へやって来ました。

中でも最大の目玉は始祖鳥です。今から1億4000万年前の化石。ダーウィンが種の起源を著した2年後の1861年、ドイツのバイエルン州より第1標本が発見されました。現在、確認されている最古の鳥の祖先と言われています。


「始祖鳥」 ドイツ ジュラ紀後期 1億4000万年前

発見当時は直ぐさま鳥類として分類されました。何故なら翼と羽を持つことが分かったからです。しかしその後、幾つか標本が発掘されると、顎や爪などに爬虫類的な特徴があることが判明。さらに近年、いわゆる「羽毛恐竜」の発見により、鳥類以前の恐竜にも羽毛があったことが確認されました。飛べたのか、飛べなかったのかも良く分かっていません。よって厳密には現在の鳥類と直接関係あったとは考えられていないそうです。実際、解説には「鳥類なのか、恐竜なのか?まだ答えは出ていない。」とありました。


「始祖鳥」 ドイツ ジュラ紀後期 1億4000万年前

もちろん日本初公開です。発見や研究の経緯を記したパネル、ないし骨格を復元した映像も用意されています。標本から始祖鳥の謎を考えるのも面白いかもしれません。

さて展示の構成が秀逸でした。というのも、コレクションの形成過程、ないし研究の歴史に関わったコレクターや科学者に焦点を当てているからです。


「ハンス・スローンの肖像画の模作(画家、ステファン・スローターによる)」 18世紀中頃
 
例えば18世紀のロンドンの医師であったハンス・スローンです。ともかく収集に熱心。数多くの自然史分野の標本をコレクションします。のちに一括して国へ遺贈され、大英自然史博物館の創設につながりました。


「リチャード・オーウェンの肖像画(画家、ヘンリーピッカースギルによる)」 イギリス 1844年

自然史博物館は大英博物館の一部門からはじまりました。独立した施設にするべく尽力したのがリチャード・オーウェンです。大英博物館の自然史部門の部門長を務めていました。彼は多く収蔵されていた自然史の標本や資料を収めるため、新たな博物館の建設を主張。国に認められます。その結果、いわゆる分館として現在の地に1881年に開設されました。名は「大英博物館(自然史)」でした。


「モア全身骨格」 ニュージーランド 完新世 約500年前

オーウェンは比較解剖学者でもありました。何百種類の動物の命名や記述を行います。科学において「恐竜」という言葉も発案しました。また絶滅したモアを飛べない鳥として学名を付けます。そのモアの巨大な全身骨格も登場。同じく彼の同定したサメの化石などとあわせて展示されています。


「ジョゼフ・バンクスのタカラガイコレクション」 ブラジル、タヒチ、ニュージーランド、オーストラリア

探検と冒険は大英自然史博物館に宝をもたらしました。一例が植物学者のジョゼフ・バンクスです。1768年、クック率いるエンデバー号に乗り、4年にも及ぶ探検航海で地球を一周します。数多くの植物や動物の標本を持ち帰りました。


「南極探検 氷点下の科学」展示風景

ディスカバリー号で南極点を目指したのがロバート・スコットです。現地で地形や地質に関する調査を行います。しかし帰途に悪天候で遭難。スコットは亡くなってしまいます。その遠征で集められた標本は、のちに妻の遺言を経て大英自然史博物館へと収められました。


「ニホンアシカ」 日本

日本に関する資料もありました。絶滅した「ニホンアシカ」です。また19世紀のチャレンジャー号が東京湾で採取したアンコウなどの海洋生物なども展示。佐賀県に落下した隕石も収集しています。20世紀においてはイギリス人と日本人の科学者による植物や菌類に関する共同研究も行われたそうです。


「オオツノジカ頭骨」 アイルランド 更新世後期 約1万3000年前

絶滅した動物の骨格も見どころの一つです。堂々たるはオオツノジカの頭骨です。かつての陸上で最大の鹿でした。気候変動の影響を受け、約8000年前に絶滅します。標本を大英自然史博物館が分析したところ、現在のタマジカに近い種であることが分かりました。


「サーベルタイガー」 アメリカ 更新世 1万2000年前

獰猛なのがサーベルタイガーでした。1万2000年前に生息。マンモスなどを狩って食料としていたそうです。また成体で1500グラムにも及ぶオオナマケモノなども大きい。変わり種ではドードーの成体模型です。意外なことに完全な剥製が一体も存在しません。よって解剖学の見地から復元されました。


「三葉虫」 モロッコ カンブリア紀後期 約4億8700万年前

三葉虫の化石も面白い。たくさん群れていますが、これは集団で交尾していた最中に窒息死したと考えられているそうです。


「ガラスケースのハチドリ」 南アメリカ

会場内の標本資料は約370点。大英自然史博物館のコレクションは8000万点にも及びます。全体からすればごく僅かに過ぎませんが、内容は動植物、化石、鉱石と多岐に渡っていました。現地でも一般に公開されていない貴重な資料も少なくありません。

なお展覧会は大英自然史博物館史上初の世界巡回展です。その最初の開催地に国立科学博物館が選ばれました。



最後に混雑の情報です。初日から多くの方が詰めかけました。3月18日で70分、翌19日に至っては100分もの待ち時間が発生しました。実際、私が春分の日の夕方に博物館前を通った際も、30分待ちの案内が出ていました。

主催者側の対応は迅速でした。というのも、3月22日より入場を整理券方式に変更。入口で整理券を配布し、そこに記載された時間帯に入場出来るシステムに変わりました。 

以降、少なくとも長時間の行列は解消しました。待ち時間は科博館内で自由に過ごすことが出来ます。整理券の記載の時間の少し前に特別展入場口に向かえば良いわけです。

整理券の待ち時間が最も長いのは土日の朝です。最大で40~50分です。午後から時間が縮小し、夕方前には解消します。一方で最も空いているのは金曜、土曜の夜間開館です。待ち時間はありません。


整理券の配布状況については大英自然史博物館混雑情報のアカウント(@nhm_konzatsu)がこまめに情報を発信しています。そちらも参考になりそうです。


「深海への探索」展示風景

会場内は原則撮影が可能です。ただしフラッシュ、三脚を使っての撮影は出来ません。ご注意下さい。


「大英自然史博物館展」展示風景

6月11日まで開催されています。おすすめします。

「大英自然史博物館展」@treasures2017) 国立科学博物館
会期:3月18日(土)~6月11日(日)
休館:3月21日(火)、4月10日(月)、17日(月)、24日(月)、5月8日(月)、15日(月)、22日(月)、29日(月)
時間:9:00~17:00。
 *毎週金・土曜日は20時まで開館。
 *4月28日(金)、29日(土)、30日(日)、5月3日(水・祝)、4日(木・祝)、5日(金・祝)、6日(土)、7日(日)は21時まで開館。5月1日(月)、5月2日(火)は18時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
料金:一般・大学生1600円、小・中・高校生500円。
 *金曜限定ペア得ナイト券2000円。(2名同時入場。17時以降有効。)
住所:台東区上野公園7-20
交通:JR線上野駅公園口徒歩5分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成線京成上野駅徒歩10分。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
映像 (PineWood)
2017-06-09 18:51:21
本展示の特色の一つがビジュアル映像コーナーでした。1分半のナイト・ミュージアム風な再現が人気でした。目玉の始祖鳥の化石始め見応えのある生命進化と探究の歴史。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2017-06-20 20:15:16
@PineWoodさん

映像、確かにナイトミュージアム風でした。

盛りだくさんの展覧会でしたね。
会場内も雰囲気がありました。
 
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