2018年2月に見たい展覧会

寒い日が続いています。風邪が流行っていて、私も正月休み明けから少し体調を崩し、しばらく咳が取れない日が続きました。かなり回復しましたが、ひょっとすると喉が冷気にやられてしまったのかもしれません。皆さんは変わりなくお過ごしでしょうか。

1月に見た展覧会では、現代版画センターの活動を丹念に追った「版画の景色」(埼玉県立近代美術館)、チラシ表紙のアルチンボルドだけでなく、ルドルフ2世の好奇心を詳らかにするような「ルドルフ2世の驚異の世界」(Bunkamuraザ・ミュージアム)、さらにともに常設展示内の企画とは思えないほど充実していた「南方熊楠」(国立科学博物館)と「シュルレアリスムの美術と写真」(横浜美術館)が、特に印象に残りました。

まだ感想をまとめられていませんが、貴重な仏像の揃った「仁和寺と御室派のみほとけ」(東京国立博物館)も、壮観ではなかったでしょうか。また「小沢剛展」(千葉市美術館)も、思い切ったレイアウトで、美術家の創作なり世界観をうまく伝えていたのではないかと思います。

2月中に見たい展覧会をリストアップしてみました。

展覧会

・「絵画の現在」 府中市美術館(~2/25)
・「金川晋吾 長い間」 横浜市民ギャラリーあざみ野(~2/25)
・「第10回恵比寿映像祭 インヴィジブル」 東京都写真美術館(2/9~2/25)
・「運慶ー鎌倉幕府と霊験伝説」 神奈川県立金沢文庫(~3/11)
・「生誕130年 小村雪岱『雪岱調』のできるまで」 川越市立美術館(~3/11)
・「ヘレンド展ー皇妃エリザベートが愛したハンガリーの名窯」 パナソニック汐留ミュージアム(~3/21) 
・「谷川俊太郎展」 東京オペラシティ アートギャラリー(~3/25)
・「現代刀職展ー今に伝わる『いにしえの技』 刀剣博物館(~3/25)
・「歌川国貞展」 静嘉堂文庫美術館(~3/25)
・「FACE展2018 損保ジャパン日本興亜美術賞展」 東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館(2/24~3/30)
・「香合百花繚乱」 根津美術館(2/22~3/31)
・「ボストン美術館 パリジェンヌ展 時代を映す女性たち」 世田谷美術館(~4/1)
・「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」 東京都美術館(1/23~4/1)
・「三井家のおひなさま」 三井記念美術館(2/10~4/8)
・「寛永の雅 江戸の宮廷文化と遠州・仁清・探幽」 サントリー美術館(2/14~4/8)
・「第21回岡本太郎現代芸術賞(TARO賞)」 川崎市岡本太郎美術館(2/16~4/15)
・「サヴィニャック パリにかけたポスターの魔法」 練馬区立美術館(2/22~4/15)
・「東京⇆沖縄 池袋モンパルナスとニシムイ美術村」 板橋区立美術館(2/24〜4/15)
・「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」 国立新美術館(2/14~5/7)
・「ルドンー秘密の花園」 三菱一号館美術館(2/8~5/20)
・「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」 国立西洋美術館(2/24〜5/27)
・「写真都市展ーウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち」 21_21 DESIGN SIGHT(2/23〜6/10)

ギャラリー

・「鏡と穴ー彫刻と写真の界面 vol.7 野村在」 ギャラリーαM(2/17〜3/24)
・「グラフィズム断章:もうひとつのデザイン史」 クリエイションギャラリーG8(~2/22)
・「ヴァジコ・チャッキアーニ展」 SCAI THE BATHHOUSE(~2/24)
・「会田誠 GROUND NO PLAN」 青山クリスタルビル(2/10~2/24)
・「レアンドロ・エルリッヒ個展」 アートフロントギャラリー(~2/25)
・「アニマル・ワールド」 加島美術(2/3〜2/25)
・「マリメッコ・スプリットーマリメッコの暮らしぶり」 ギャラリーA4(~2/28)
・「グリーンランド 中谷芙二子+宇吉郎展」 メゾンエルメス(~3/4)
・「奈良美智 Drawings: 1988-2018 Last 30 Years」 カイカイキキギャラリー(2/9~3/8)
・「ヤン・フードン The Coloured Sky: New Women 2」 エスパス・ルイ・ヴィトン東京(~3/11)
・「束芋 | flow-wer arrangement」 ギャラリー小柳(2/10〜3/15)
・「平野甲賀と晶文社展」 ギンザ・グラフィック・ギャラリー(~3/17)
・「クサナギシンペイ どこへでもこの世の外なら」 タカ・イシイギャラリー東京(2/17〜3/17)
・「en[縁]:アート・オブ・ネクサス 第15回ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展 日本館帰国展」 TOTOギャラリー・間(~3/18)
・「ポーラ ミュージアム アネックス展2018」 ポーラ・ミュージアム・アネックス(2/23〜3/18)

この2月は、今年、何かと注目の西洋美術展のスタートラッシュと言っても良いかもしれません。まずは三菱一号館美術館にて、「ルドンー秘密の花園」展が開催されます。



「ルドンー秘密の花園」@三菱一号館美術館(2/8~5/20)

一号館のルドンとして思い起こすのは、コレクションとして人気の高い「グラン・ブーケ」です。ルドンが、ドムシー男爵の城館の食堂を飾るために描いた作品で、縦2メートル50センチにも及ぶ大画面に、青い花瓶に生けられた花束を、淡いパステルの色彩にて表現しました。

ただしルドンは、食堂の装飾画の制作に際し、「グラン・ブーケ」だけを描いたわけではありませんでした。彼は1年以上の歳月をかけ、16点の装飾画を制作し、城館へと運びました。いつしか壁画は城館に秘蔵され、一度、日本でも公開される機会があったものの、のちにフランス政府が取得し、オルセー美術館の所蔵品と化しました。そして「グラン・ブーケ」のみが、城館の食堂に取り残されました。取り外されたのは、2010年のことでした。


そのオルセー美術館所蔵の15点の装飾壁画が、全て一括して三菱一号館美術館へとやって来ます。さらに、花や植物をモチーフとした70点超の作品を交え、ルドンの画業を紹介していきます。なお植物に焦点を当てたルドン展は、史上初めてのことだそうです。さぞかし華やかな展覧会になるのではないでしょうか。

ドイツに生まれ、スイスに移住した実業家、エミール=ゲオルグ・ビュールレの絵画コレクションが、国立新美術館にて公開されます。



「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」@国立新美術館(2/14~5/7)

実業家として身を立てたビュールレは、1937年、一家とともに移り住んだチューリッヒの邸宅を飾るために、美術品の蒐集をはじめました。中でも良く知られるのは、ルノワールの「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢」や、セザンヌの「赤いチョッキの少年」で、印象派、ないしポスト印象派の充実したコレクションとして評価を得ました。


2008年、セザンヌの「赤いチョッキの少年」を含む4点の絵画が、盗難の被害にあってしまいました。その影響もあるのか、現在は一般の公開が規制され、2020年にはチューリッヒ美術館へコレクションが移設されることが決まりました。つまりプライベートとしてのビュールレのコレクションが、日本で公開される最後の機会と言えるかもしれません。なお日本でビュールレのコレクション展が行われるのは、おおよそ27年ぶりのことでもあるそうです。

春の上野の行列の展覧会になるかもしれません。国立西洋美術館で「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」がはじまります。



「プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光」@国立西洋美術館(2/24〜5/27)

国内でプラド美術館のコレクションを見る機会は必ずしも少なくなく、過去、「プラド美術館展ースペイン宮廷 美への情熱」(三菱一号館美術館、2015年)、「プラド美術館所蔵 ゴヤー光と影展」(国立西洋美術館、2011年)、さらには「プラド美術館展ースペインの誇り 巨匠たちの殿堂」(東京都美術館、2006年)などが開催されてきました。とりわけ、あえて「小さなサイズの作品に焦点を当てた」(美術館サイトより)、三菱一号館美術館のプラド展などはまだ記憶に新しいかもしれません。


実に5回目のプラド展です。今回はベラスケス7点を中核に、主にスペイン、イタリア、フランドル絵画を展観します。ベラスケスの作品がまとめて7点出展されるのは、過去最多でもあるそうです。その意味では貴重な展覧会となりそうです。



また同じく上野では1月末より、東京都美術館で「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」もはじまりました。

「ブリューゲル展 画家一族 150年の系譜」@東京都美術館(1/23~4/1)

私はまだ見られていませんが、公式Twitterアカウントなどによれば、現時点ではさほど混雑していないそうです。なお会期当初、2月18日までは、一部の作品の撮影も可能です。ひょっとすると中盤以降は混み合うかもしれません。なるべく早く行きたいと思います。


ルドン、ビュールレ、プラド、ブリューゲルと、この4展を追うのだけでも大変かもしれませんが、2月も無理のないスペースで、色々な展覧会を見て回りたいと思います。

それではどうぞ宜しくお願いします。
コメント ( 7 ) | Trackback ( 0 )
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コメント
 
 
 
いつも拝見してます (もきち)
2018-02-03 04:04:32
はろろどさん
初めまして。
偶然、はろるどさんのブログに行き着いた後、いつも美術館&博物館巡りの参考にさせていただいております。埼玉在住です。
週末結構巡っているつもりなのですが、はろるどさんの1割~2割しか回れていません^_^;
ルドンはノーチェックだったので、はろるどさんのブログを拝見して、早速「夜のギャラリートーク」を申し込みました。
これからも、はろるどさんの書き込み、楽しみにしております(^^♪
 
 
 
Unknown (はろるど)
2018-02-03 19:06:40
@もきちさん

こちらこそ初めまして。いつもご覧下さり、どうもありがとうございます。

ルドンは今年の西洋美術展の中でも特に期待している展覧会です。
グラン・ブーケと同じ空間を飾った作品を一度に見られる機会など、そうありませんよね。

こちらこそ今後ともよろしくお願いします!
 
 
 
atelier (pinewood)
2018-02-23 18:03:46
絵画の現在展ー府中市美術館に行きました。常設の画家のatelier展や牛島画伯と立軌会展も興味深いです。
 
 
 
恵比寿映像祭 (pinewood)
2018-02-27 17:01:00
そして久しぶりに恵比寿の映像の祭典に行った。眼に見えない影の様な気配をヴィジュアル化すると言う困難な課題が本展のテーマだった!物の本質が見えにくい現代を捉えた究めて意識的な映像例えば3.11以後の見えざる放射能の恐怖もそんな主題の1つ、戦争後遺症の児童の表現も観られた…。色盲者を扱ったショートなドラマ仕立てのビデオアートも!何時もながら興味尽きない祭典だった。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2018-03-06 21:19:32
@pinewoodさん

こんばんは。
府中の絵画の現在と、恵比寿映像祭は見逃してしまいました。
府中は常設も確かに興味深いですよね。

恵比寿映像祭は毎年刺激的な作品もあるだけに、
なかなか面白いですよね、来年こそはと思います。
 
 
 
パリジェンヌ展 (pinewood)
2018-03-29 21:24:52
桜咲き満開の砧公園の世田谷美術館のパリジェンヌ展観て来ました。女性の視座で一貫して絵画表現を含む女性と時代との関りを、家庭と社会の文化生活を真摯に見詰めた印象的な展覧会でした…。目玉のマネやサージェントの女性のportraitの他にベルト・モリゾやメアリ・カサット等女流画家の作品も並びました。
 
 
 
Unknown (はろるど)
2018-05-08 20:01:27
@pinewoodさん

>パリジェンヌ

見そびれてしまいました。カサットやモリゾもあったのですね。なかなか切り口が面白そうです。

現在、開催中の高山展は必ず行かなくてはと思います。
 
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