都内近郊の美術館や博物館を巡り歩く週末。展覧会の感想などを書いています。
はろるど
「ルソーの見た夢、ルソーに見る夢」 世田谷美術館
世田谷美術館(世田谷区砧公園1-2)
「ルソーの見た夢、ルソーに見る夢」
10/7-12/10(会期終了)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/4a/269244d694fea0adb92438eb06c29085.jpg)
会期最終日に見てきました。アンリ・ルソーと素朴派、さらにはそれ以降ルソーにシンパシーを抱いていた日本人画家を紹介する展覧会です。作品展示数全150点のうちルソーが約20点と、ルソーだけを目当てにすると少々物足りない印象も受けましたが、展覧会自体は非常に良く出来ていました。
既に会期も終えているので、内容について細々と書くのは遠慮したいのですが、今回、ルソーや素朴派らの印象を吹き飛ばしてしまうほど衝撃的な画家に出会うことが出来ました。それが第3章、「ルソーに見る夢 日本近代美術家たちとルソー(1)洋画」にて紹介されていた松本竣介(1912-1948)です。主に1941年から44年までに制作された7点の絵画が展示されていましたが、どれも迸る才能を感じる、非の打ち所のない素晴らしい作品でした。天才の息吹すら感じます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7c/c5/59971acb174087dc134f959b00b7ead9.jpg)
松本の描く都市風景は、その物悲しさが雄弁に語り出す心象風景です。くすんだ色でありながらも丁寧に塗りこめられたマチエールに反して、描かれた光景はとても寂し気で、また荒んでいました。急坂を歩く一人の男が描かれた「並木道」(1943)は絶品です。背の高い並木道が画面を二分割し、幅広い道路と左奥へ延びる坂道が窮屈におさまっています。そして坂道に面する分厚い壁が、まるで男の行く手を阻むかのように狭まっていました。また男の足取りは幾分軽やかですが、全体のズシリとのしかかるような重々しい空気と、まるっきり人気のない場の寂寥感は並大抵のものではありません。戦中の時代の気配を伝えていると一言で片付けてしまうにはあまりにも勿体ない、時代と場を超えた、人の孤独な生き様とその儚さが普遍的に表現された作品かと思います。コンクリートの冷たい感触、凍り付いたような木々の揺らめき。この表現力は驚異的です。
数点のバージョンがあるとされる「Y市の橋」(1944)もまた強い魅力を放っている名品でした。「並木道」の坂の壁に似た重厚なコンクリート壁が橋を支え、その向こうには幾何学的なフォルムの鉄柱が立っています。画面全体を覆うセピア色の侘しさは極めて叙情的です。静かに流れ行く川を見やりながら、その欄干の上にしばし立ち止まってみたい作品でした。画中へ思わず吸い込まれそうになります。
「松本竣介/新潮社」
多くの展覧会へ行っても、心へ突き刺さるような印象深い作品にはなかなか出会えませんが、今回は久々に魂を揺さぶられるような感動を味わいました。ルソーの展覧会にて見た松本竣介の稀な才能。是非まとまった形で拝見したいです。(12/10鑑賞)
「ルソーの見た夢、ルソーに見る夢」
10/7-12/10(会期終了)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/4a/269244d694fea0adb92438eb06c29085.jpg)
会期最終日に見てきました。アンリ・ルソーと素朴派、さらにはそれ以降ルソーにシンパシーを抱いていた日本人画家を紹介する展覧会です。作品展示数全150点のうちルソーが約20点と、ルソーだけを目当てにすると少々物足りない印象も受けましたが、展覧会自体は非常に良く出来ていました。
既に会期も終えているので、内容について細々と書くのは遠慮したいのですが、今回、ルソーや素朴派らの印象を吹き飛ばしてしまうほど衝撃的な画家に出会うことが出来ました。それが第3章、「ルソーに見る夢 日本近代美術家たちとルソー(1)洋画」にて紹介されていた松本竣介(1912-1948)です。主に1941年から44年までに制作された7点の絵画が展示されていましたが、どれも迸る才能を感じる、非の打ち所のない素晴らしい作品でした。天才の息吹すら感じます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7c/c5/59971acb174087dc134f959b00b7ead9.jpg)
松本の描く都市風景は、その物悲しさが雄弁に語り出す心象風景です。くすんだ色でありながらも丁寧に塗りこめられたマチエールに反して、描かれた光景はとても寂し気で、また荒んでいました。急坂を歩く一人の男が描かれた「並木道」(1943)は絶品です。背の高い並木道が画面を二分割し、幅広い道路と左奥へ延びる坂道が窮屈におさまっています。そして坂道に面する分厚い壁が、まるで男の行く手を阻むかのように狭まっていました。また男の足取りは幾分軽やかですが、全体のズシリとのしかかるような重々しい空気と、まるっきり人気のない場の寂寥感は並大抵のものではありません。戦中の時代の気配を伝えていると一言で片付けてしまうにはあまりにも勿体ない、時代と場を超えた、人の孤独な生き様とその儚さが普遍的に表現された作品かと思います。コンクリートの冷たい感触、凍り付いたような木々の揺らめき。この表現力は驚異的です。
数点のバージョンがあるとされる「Y市の橋」(1944)もまた強い魅力を放っている名品でした。「並木道」の坂の壁に似た重厚なコンクリート壁が橋を支え、その向こうには幾何学的なフォルムの鉄柱が立っています。画面全体を覆うセピア色の侘しさは極めて叙情的です。静かに流れ行く川を見やりながら、その欄干の上にしばし立ち止まってみたい作品でした。画中へ思わず吸い込まれそうになります。
![](http://images-jp.amazon.com/images/P/410601565X.09.MZZZZZZZ.jpg)
多くの展覧会へ行っても、心へ突き刺さるような印象深い作品にはなかなか出会えませんが、今回は久々に魂を揺さぶられるような感動を味わいました。ルソーの展覧会にて見た松本竣介の稀な才能。是非まとまった形で拝見したいです。(12/10鑑賞)
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松本の作品は、岩手県美、宮城県美で多く所蔵しており、その作品は多彩です。あでやかな色彩を使った都会を感じさせる作品も魅力があります。
ところで今年は松本竣介との出会いの当たり年でした。森岡の岩手県立美術館↓、
http://cardiacsurgery.hp.infoseek.co.jp/JA061.htm#060412
そしてこのルソー展に出ていた神奈川県立美術館の《立てる像》に感激して、桐生の大川美術館に《街》を観にいってきました。
http://cardiacsurgery.hp.infoseek.co.jp/JA062.htm#061125
この美術館の入り口に「立てる像」のポスターが貼ってあったので、「今、世田谷に来てるよ」と言ったら、「よく貸し出しましたね」といって信じてくれませんでした。
松本氏の「立てる像」に描かれている
顔つきがとても気に入りました。
いい顔しています。
松本氏についてはwikiに大変詳しく
魅力的に書かれてあります。
回顧展やって欲しいですね!
こんばんは。コメントとTBをありがとうございます。
>松本の作品は、岩手県美、宮城県美で多く所蔵
東京生まれですが、岩手でお育ちになられたのですよね。
東北の美術館に作品があるのも納得です。
多様な作品があるとのことで、
そちらも是非拝見したいと思いました。
@とらさん
こんばんは。
>松本竣介との出会いの当たり年
そんなにあちこちに!
この展覧会で殆ど初めて見知った方なので、
これまでノーチェックでした…。
竹橋にもあったのに驚いたくらいです…。
>神奈川県立美術館の《立てる像》
目立っていましたよね。カッコいい作品でした。
ちょっと追っかけてみます。
@Takさん
こんばんは。
>顔つきがとても気に入りました。いい顔
そうですよね。めらめら燃えるような意思を感じるというのか、
ともかく力強かったです。
>松本氏についてはwikiに大変詳しく
魅力的
先ほど拝見しました。充実しておりますね。これだからwikiは侮れません。
>回顧展やって欲しい
お願いします!!!
私も松本竣介に世田谷で打たれました。
彼がルソーの影響を受けていることに
この展覧会を見てはじめて気づきました。
鎌倉までいつか、見に行こうと思っていた念願の
「立てる像」に出会えて、感無量でした。
>私も松本竣介に世田谷で打たれました。
彼がルソーの影響を受けていることに
この展覧会を見てはじめて気づきました。
同じです。
ルソーの影響とは全く予想もしませんでした。
それにしてもルソーを名を付けた展覧会で、
日本人画家の魅力に開眼するとは思いもよりません。
Takさんも仰っておりますが、
是非回顧展を拝見したいですね!