「にっぽんの客船 タイムトリップ展」 INAXギャラリー

INAXギャラリー1中央区京橋3-6-18 INAX:GINZA2階)
「にっぽんの客船 タイムトリップ展」
3/3-5/21



第二次大戦前の僅かな期間、世界を航海した大型客船の軌跡を辿ります。INAXギャラリー1で開催中の「にっぽんの客船 タイムトリップ展」へ行ってきました。

今でこそ世界各地への旅は飛行機が主流ですが、それ以前、とりわけ20世紀前半までは客船がその役割を担っていたことは言うまでもありません。

この展示ではそれらのうち日本の客船、特に1930年後半に作られた「あるぜんちな丸」と「橘丸」にスポットをあて、デザインや室内装飾、また航海の様子などを紹介しています。(出品リスト

客船建造の黎明期は海外の模倣からはじまりましたが、「動く国土」とも謳われたそれは次第に国の威信をかけたものとなり、昭和前期には日本独自の様式を持つ客船も誕生しました。それが今回の主役「あるぜんちな丸」(1939年竣工)に他なりません。


ブエノスアイレス港に寄港する『あるぜんちな丸』 写真:商船三井

「あるぜんちな丸」は神戸からシンガポール、さらにはケープタウンよりパナマ運河を経て、再び神戸を結んだ世界一周用の豪華客船です。その内装デザインにはかの建築家、村野藤吾も加わっていました。


あるぜんちな丸(大阪商船)一等食堂 村野藤吾

モダンで合理的なデザインを基調としながらも、和を取り入れた空間はかなり独特です。当時の運賃は当然ながらかなり高額で、乗る人々も外交官や富裕層などに限られたそうですが、写真パネルなどを見ていると、まさにホテルのような室内でくつろいだ彼らの様子も目に浮かび上がってきます。

また長旅ということもあり、重要視されたのはレクリエーション機能の他、食事の質でした。仏料理のフルコースが基本の中、日本の客船はオリジナリティを出すため、時にスキヤキパーティーなどをして客をもてなしていたそうです。また日本郵船の食事は評判がよく、チャップリンが好んで利用していたというエピソードも紹介されていました。

さて一番はじめに「僅かな期間」と記したのにはもちろん理由があります。大戦が勃発すると「あるぜんちな丸」は徴用、つまりは海軍に売却され、航空母艦として改装、さらには終戦後に解体されてしまいました。つまり「あるぜんちな丸」が客船として活躍していたのは1939年から1942年前、僅か3年程度に過ぎません。日本が総力をあげて建造した唯一無比の豪華客船は、戦争によりあっけなくも失われてしまいました。

「にっぽんの客船 タイムトリップ展」展示内容(既に終了した名古屋展の会場風景写真が掲載されています。)

展示では船の模型はもちろん、室内の写真、また村野直筆の設計図の他、航路図や渡航パンフレット、さらには空間を再現したCG映像までが用意されています。いつもながらの手狭な空間ではありますが、なかなか盛りだくさんでした。乗り物好きにはたまりません。

ギャラリー東京:3月3日(木)~5月21日(土)
ギャラリー大阪:6月4日(土)~8月18日(木)

「にっぽんの客船 タイムトリップ/INAX BOOKLET」

5月21日まで開催されています。

*開廊日時:月~土(日祝休) 10:00~18:00
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