井伊影男の植物観察

植物の生き方の不思議さ、彼らのたくましさ、したたかさに触れる。しかし、観察者が井伊加減男だからなあ。

北海道の花・エゾノクサイチゴ

2021年02月28日 | 日記

エゾノクサイチゴの葉。バラ科オランダイチゴ属。

栽培されるイチゴ、最初の輸入先がオランダだったのでオランダイチゴと呼ばれた。

エゾノクサイチゴの根出葉は3出複葉、小葉の側脈はきれいな平行線となる。

「エゾノ」を除いた「クサイチゴ」はオランダイチゴ属ではなくキイチゴ属。木本ながら丈が低く草のように見えるというので「草イチゴ」の名がある。エゾノクサイチゴ、名前は良く似ているが全くの別物である。

エゾノクサイチゴの花。

花の径は15mm前後、花弁の数は普通5枚(6枚もある)、近縁のノウゴウイチゴの場合は7~8枚。

そこで、両者を見分けるための呪文:「クサイチ5~6、ノウゴウ7~8」。

エゾノクサイチゴの果実。

果実は瘦果の集合果。食べられる部分は花托(花床ともいう)が花後に膨らんだもので、その表面に瘦果が散らばる。表面に散らばる粒粒の一つ一つが瘦果で、このような果実を「イチゴ状果」という。

イチゴ状果は子房ではなく花托が膨らんだもので真の果実ではないとして「偽果(ぎか)」と呼ぶ。

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北海道の花・シロバナヘビイチゴ 

2021年02月27日 | 日記

シロバナヘビイチゴの群落。バラ科オランダイチゴ属。

宮城県以南に分布するとされているが、植えれば北海道でも育つ。走出枝(ランナー)を伸ばして増える点は栽培種のオランダイチゴと同じ。

栽培されている野菜のイチゴはオランダイチゴでいろんな品種が作り出されている。ちなみに、野菜と果物の違い。草本の果実は「野菜」で、木本の果実は「果物」とされている(農水省)。したがって、イチゴやメロン、スイカなどは野菜ということになる。

シロバナヘビイチゴの花。

5弁の花でエゾノクサイチゴによく似るが、全体の草姿などはヘビイチゴに似るとされる。ヘビイチゴ(黄花)に似て白花なので「白花ヘビイチゴ」の名がついたという。ヘビイチゴの名をもつがヘビイチゴ属ではなくオランダイチゴ属。

シロバナヘビイチゴの果実。

果実は瘦果の集合果で膨らんだ花托の表面に散らばり、「イチゴ状果」と呼ばれる。

ヘビイチゴの果実もイチゴ状果だが、膨らんだ花托はシロバナヘビイチゴの場合はジューシーで甘酸っぱい味がするのに対して、ヘビイチゴの場合はジューシーさがなく味もほとんどしない。果実の点からすれば「ヘビイチゴ」の名は相応しくない。

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北海道の花・ヒメゴヨウイチゴ

2021年02月26日 | 日記

ヒメゴヨウイチゴの群落。バラ科キイチゴ属。

山地~亜高山帯の針葉樹林内に生える。小低木状の多年草とも草本状の小低木とも言われる。

木本か草本か、人間はどちらかに決めたがるが、植物にとってはどうでもいいことなのだろう。

葉は薄質で5小葉の掌状複葉。茎や葉柄には刺がなく、ゴヨウイチゴとの相違点で「トゲなしゴヨウイチゴ」の別名もある。

ヒメゴヨウイチゴの花。

萼片は7個あって反曲し、花弁も7個で平開せず直立する。よく似るゴヨウイチゴの花では花弁が退化して線状になり萼の方が目立つ。

ヒメゴヨウイチゴの学名(種名)は「プソイド・ジャポニカス」。プソイドは「偽の」とか「似ている」の意味だが、良く似た「ゴヨウイチゴ」の学名はイケノエンシスでジャポニカスはではない。

となると、「偽の」とか「似ている」が何を対象にしたものか分からない、ということになる。

ヒメゴヨウイチゴの果実。

果実は液質・小核果の集合果。

コガネイチゴと比べて、小核果の数は数倍あり、白色から赤く熟す。

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北海道の花・コガネイチゴ

2021年02月25日 | 日記

コガネイチゴの葉。バラ科キイチゴ属。

亜高山帯~高山帯のハイマツ樹林下など半日蔭地に生える多年草。つる性~匍匐性で低木状多年草とか草本状の小低木などとも呼ばれる。要は草本と木本の中間的存在ということ。

同属のホロムイイチゴの葉は単葉(複葉一歩手前とも言われるように深裂している)だが、コガネイチゴの葉は鳥足状複葉(5小葉)である。この株は夕張岳産。

コガネイチゴの花。

匍匐する茎から1~2葉をつける茎を立ち上げ、先に上向きに咲く1花をつける。

萼片は被針形で普通4個、花弁は白色でこちらも普通4個。本来は5数性の花であったものが1個退化したものと考えられている。ときに5個の萼片、花弁の花も見られる。この株は旭岳産。

コガネイチゴの果実。

果実は液質の小核果の集合果。雌しべが離生していてそれぞれが小核果をつくる。深紅色に熟し光沢がある。コガネイチゴは「小金苺」と書く。分果の形が小判形で光沢があることに由来するという語源説があるが、いまいち説得力に欠ける。この株も旭岳産。

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北海道の花・ホロムイイチゴ

2021年02月24日 | 日記

ホロムイイチゴの葉。バラ科キイチゴ属。

東北~北海道の泥炭湿原に生える多年草。

葉は腎心形で先は浅く3~5裂する。草本のイチゴ類(オランダイチゴ属、ヘビイチゴ属など)の葉は複葉(3~5小葉)になるが、キイチゴ属のホロムイイチゴの葉は単葉(木本のキイチゴ類には単葉、複葉、両方あり)。表面の葉脈はつよく凹む。

ホロムイイチゴの芽出し。

キイチゴは「木苺」と書く。木本のイチゴ類の意味だが、木本のキイチゴも茎は2年で枯れるので草本にかなり近いと言える。

草本のホロムイイチゴ、伸ばした地下茎が毎年新しい茎を立ち上げる。芽出しでも葉脈の凹みは目立ち、

しわしわのイメージになる。

ホロムイイチゴの花。

ホロムイイチゴは雌雄異株で、こちらは雄しべ多数で雌しべが退化した雄花。雌花は両性花の形。

ホロムイは「幌向」と書く。札幌の東、岩見沢の手前に広がっていた幌向湿原、現在は農地化、宅地化が進んでいて湿原の多くは消えてしまったが、かつては北大の植物調査の好適地で、多くの新種発見があり、「ホロムイ」の名が冠せられた花が6種知られている。「アポイ」とか「ハクサン」など山の名前の付く花が多いのは自然だが、「幌向」という平地の名がついた花が6種もあるというのは他にあまり例がない。ちなみに、この花は日本海側・サロベツ原野産。

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