井伊影男の植物観察

植物の生き方の不思議さ、彼らのたくましさ、したたかさに触れる。しかし、観察者が井伊加減男だからなあ。

北海道の花・クシロワチガイソウ

2020年07月31日 | 日記

クシロワチガイソウ。ナデシコ科ワチガイソウ属。

湿原や山地の林縁~林内に生える多年草。個体数は少なく、大雪山や黄金山(浜増富士と呼ばれる)などで見られるが札幌周辺では見られない。クシロワチガイソウは「釧路輪違い草」と書き、釧路で発見されたワチガイソウの仲間ということ。昔、新種登録の是非をチェック中、無名であることのしるしとして「輪違い(2個のずれた輪)」の符号を鉢植えにつけ、それがそのままこの仲間の名前になったという。

標本は普通押し花にするが、鉢植えにしたこともあったらしい。

クシロワチガイソウの葉。

茎は細く、対生する葉は無柄で、葉身は線形~被針形で全縁、先は垂れがち。

草丈は15~30cmで、地下に芋状の塊根をもつ。

クシロワチガイソウの花。

花の径は8mmほど、萼片、花弁はともに5個、萼片は花弁よりずっと小さく、花弁の先は浅く2裂する。

その普通の花の他に、茎の下部の葉腋に閉鎖花もつける。ワチガイソウ属の学名はプソイドテラリア」で「偽のハコベ属」の意味で、閉鎖花をつける点がハコベ属と大きく異なるからだという。

この株はいずれも黄金山産。

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北海道の花・ハマハコベ

2020年07月30日 | 日記

ハマハコベの群落。ナデシコ科ハマハコベ属。

海岸の砂地に生える多年草、本州の日本海側にも分布するとされるが、個体数は少ないようで全国版の図鑑には載っていないケースが多い。本州ではハマツメクサの方が多いらしい。

地下茎を伸ばし群落をつくり、多くの場合丸い浮島のような形をつくる。

ハマハコベの葉。

葉は長楕円形で多肉質、全縁で先は尖る。

葉は十字状に対生し、左右の葉は基部で合生する。

ハマハコベの花。

花は頂生と腋生。花弁と萼片はそれぞれ5個、萼片は花弁よりも長い。花弁は白色で全縁(ハコベのように裂けない)。雄しべは10本で、長い雄しべ5本は萼片と対生し、短い雄しべ5本は花弁と対生する。

ハマハコベの性表現、雄花の株と両性花の株とがある「雄性両全性異種」とされてきたが、「日本の野生植物(平凡社)」の改定版では、「雌性両全性異種」としている。

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北海道の花・ハマツメクサ

2020年07月29日 | 日記

ハマツメクサの群落。ナデシコ科ツメクサ属。

海岸の礫地~日当たりのよい砂地に生える多年草、条件次第で1・2年草にもなるとされる。

茎は根元で分枝して地表を這うようにして広がり群落をつくる。

ハマツメクサの葉。

対生する葉は厚くやや肉質、左右の葉が連合した形になり、属を代表するツメクサに良く似る。

ツメクサは「爪草」と書く。葉の形を「鳥の爪」に見立てたという説と、「人の切った爪」に見立てたという説がある。根生葉はロゼット状になる。

ハマツメクサの花と果実。

萼片5個、花弁も5個、花弁はハコベのように裂けることはない。花柱は5個。

果実は蒴果で、熟すと普通5裂して濃い褐色の種子をこぼす。全体にツメクサに似るが、相違点は種子にあり、ハマツメクサの種子にはツメクの種子のような表皮の突点がない。

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北海道の花・ハコベいろいろ

2020年07月28日 | 日記

シコタンハコベ。ナデシコ科ハコベ属。

海岸~高山の砂礫地に生える多年草。北海道~千島、サハリンに分布するところから「色丹ハコベ」の名がつけられる。色丹はご存じ、北方4島の1島。

茎は根元で分枝して横に広がり群落をつくる。

花は茎頂と葉腋から出る長い柄のさきにつき、花弁は萼片の約2倍で深く2裂する。

この株はオホーツク沿岸の原生花園のもの。

シラオイハコベ。ナデシコ科ハコベ属。

山地~亜高山の針葉樹林の岩上に生える多年草。茎は上部で分枝してまばらに花をつける。軟弱なイメージがある。

対生する葉は被針形~広被針形で無柄。花弁は先の尖る萼片より短く、深く2裂する。

新種発見の標本が北海道・白老町であったことから「白老ハコベ」の名がつく。北海道に多いということで「エゾフスマ」の別名がある。

タチハコベ。ナデシコ科オオヤマフスマ属。

山地の谷沿いなど湿った林内に生える軟弱な1・2年草。「ハコベ」の名をもつがハコベ属ではなくオオヤマフスマ属。ハコベ属との違いは、種子に種枕(しゅちん:エライオソーム)がつく点。

オオヤマフスマの葉は無柄であるが、タチハコベの下部の葉には柄がある。シラオイハコベと同じ「エゾフスマ」の別名がある。軟弱なイメージが似ているからか。軟弱なイメージがありながら茎は寝ずに立っている。「立ちハコベ」の名はそこから。

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北海道の花・カラフトホソバハコベ

2020年07月27日 | 日記

カラフトホソバハコベ群落。ナデシコ科ハコベ属。

ナガバツメクサに似た特徴をもつカラフトホソバハコベだが、相違点もいろいろ。

ナガバツメクサは自然豊かな湿地や林縁の湿った所に生える在来種であるのに対して、カラフトホソバハコベはユーラシア原産の帰化種で、道端や空き地などの所謂「撹乱地」に生える。

カラフトホソバハコベの茎と葉。

ナガバツメクサに似て細い葉をもつ。ナガバツメクサの場合は細い葉を「爪草」と表したが、こちらは「細葉ハコベ」とストレートなネーミングになっている。

茎は両者とも四角で4個の稜角をもち、ナガバノツメクサの場合は茎の稜と葉の縁に小突起をもつが、カラフトホソバハコベの茎には小突起はつかない。

カラフトホソバハコベの花。

花はナガバツメクサに似るが、萼の先はナガバツメクサより先がとがる。

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