井伊影男の植物観察

植物の生き方の不思議さ、彼らのたくましさ、したたかさに触れる。しかし、観察者が井伊加減男だからなあ。

野菜も植物のうち

2010年08月31日 | 日記
野菜には「葉もの」「実もの」「根もの」など、主として食べる部分によって分けられたりする。
野菜たちの一生を知らないことも多いのだけれど、野菜も植物の一種で、どんな花を咲かせ、どんな実をつけるのかを見ていくと、中々面白いものがあります。



これは何でしょう?
トマトに似ていますが違います。トマトと同じナス科でジャガイモの実です。
ジャガイモが花をつけるのは誰でも知っていることですが、実はつけないものと決め込んでいる人が少なくありません。
落花しやすく実に成ることが少ないからですが、時に実をつけます。キタアカリとか北海コガネなどの品種が実をつけやすいようで、これは北海コガネです。
ナス科には食料として有用なものが多いのですが、有毒なものも少なくありません。ジャガイモもこの実だとか、芽に毒があるとされていて、料理のときにも若干気を使います。



これは何でしょう?
栽培経験のある人なら一発で分かることですが、これはアスパラガスです。
標準和名はオランダキジカクシといいます。実際に雉が隠れるかどうかは分かりませんが、見るからに雉が隠れそうな雰囲気です。



これは誰でもご存知のトウモロコシです。
トウモロコシには違いありませんが、実の先から垂れ下がっている赤っぽい毛は一体何でしょうか?
実になる部分は、当たり前のことですが雌花序で(雄花序は茎のてっぺんにあります。)、赤っぽい毛は雌しべの花柱です。中には50cm近くにもなるものあるという長い毛(花柱)の一本一本が子房につながっています。
実を包んでいる皮は、雌化序を保護している総苞です。
野菜も植物的に見ていくと中々面白いものがあります。
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ミヤマニガウリ、苦いものは良薬となるか

2010年08月30日 | 日記
植物が絶対に必要とする水と光、その光を求めて植物たちは激しい背伸び競争をしたりする。茎を伸ばして、ライバルより少しで上へ行こうとします。そのためには、茎を丈夫にする必要がある訳ですが、つる植物たちは茎を丈夫にする代わりに、他の植物などに絡みつき、寄りかかって上に伸びようとします。



ミヤマニガウリの群落です。
ウリ類では進化した種で、果実は小さいながら1~3個の種子を大事に育てます。種子散布に特別な仕掛けを持ちませんが、つるを盛んに伸ばして、その先に種子をこぼして群落を作っていきます。「つる散布」という言い方もあるようです。
絡みつかれた植物が参ってしまって、ミヤマニガウリがお互いに絡み合って、あたり一面を覆ってしまうこともあります。



ミヤマニガウリの雄花です。
ミヤマニガウリには雄花の株と両性花の株とがあって、雄花は総状花序をつくるといいます。
この写真では、花が一個しか見えませんから、これから花序を伸ばすのでしょう。
二股になる巻きひげは葉と対生してなんにでも絡みつき、両性花には長い柄があります。



ミヤマニガウリの若い果実です。
ウリ科ですから、それらしい匂いがあって結構苦いです。
ゴーヤとも呼ばれる苦瓜(ニガウリ)という野菜があります。同じウリ科ですが、ニガウリはツルレイシ属、ミヤマニガウリはミヤマニガウリ属です。
「良薬は口に苦し」という言葉があり、ニガキやキハダ、センブリなどはみんな生薬として使われています。
ニガウリやミヤマニガウリも生薬になるでしょうか。
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奥手稲山で見た花

2010年08月29日 | 日記
奥手稲山(949m)は、手稲山の西側に位置するので、札幌の街から見れば手稲山の奥というイメージだったのでしょう。奥手稲山で見た花といっても、最初の二つは登山口の手前で見たものです。
昔材を伐りだした林道だし、夏のこの時期ですから山の中では、特別変わった花にはあまり出会えません。



キクニガナです。キク科キクニガナ属。
キクニガナというより「チコリ」といった方が、「ああ、あれか。」と思い当たる人が多いでしょう。
明治時代に移入され、栽培されてきたものが畑から逃げ出した、エスケープと呼ばれる種です。
舌状花のみの花(タンポポの仲間)で、左側の花は雄性期、右側の花は雌性期、雄性先熟の花のようです。



アレチマツヨイグサです。アカバナ科マツヨイグサ属。
メマツヨイグサに良く似ていて、花弁の付け根の方が急に細くなって、花弁同士に隙間が出来ています。
唯、その隙間は、広いものから狭いものまでいろいろあって、メマツヨイグサとの区別が付けにくいものもあります。それで、メマツヨイグサの中の個体差だとして、両者を区別しない考え方もあります。
図鑑でも両者を区別するものと、しないものがあります。



エゾノキリンソウです。ベンケイソウ科マンネングサ属。
奥手稲山も、裾のほうでは帰化植物が目立ちますが、頂上付近になればエゾノキリンソウなどにも出会えます。
地下に走出枝があって、根を拡げて群落をつくります。
ジョウザンシジミの食草ですから、この花の咲いている所では、ジョウザンシジミに出会えると目を輝かすマニアもいるといいます。
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ナニワズ、冬眠だけでなく夏眠もする変わり者

2010年08月28日 | 日記
難波津(ナニワズ)と聞けば、大阪港の古い言い方だから、何か大阪と関係がありそうな感じがする。
ところが直接的な関係はなくて、昔の子供たちが習字の手本ととして使った「難波津の・・」という歌の文句から梅と間違って名づけられたといいます。



ナニワズの花です。ジンチョウゲ科ジンチョウゲ属。
雌雄異株と図鑑には書かれていますが、雌雄の見分けは中々難しいです。
花がない時期の見分けが難しいのは当然かもしれませんが、ナニワズの場合、花があっても素人には良く分かりません。



ナニワズの夏姿です。7月に入るあたりで葉を落としてしまいます。夏に枯れる(真夏の1.5~2ヶ月だけ)ので「ナツボウズ」の名前があります。
北国の木は、普通冬芽を用意して冬眠するわけですが、ナニワズは冬眠と夏眠の両方をやっています。
ですから用意した芽は、冬芽であり同時に夏芽でもあるわけです。



夏の終わりころ、ナニワズの開葉です。
ナニワズはジンチョウゲ科で、紙の原料に使われるミツマタやガンピは同じ仲間です。
紙の原料になるというのは内皮繊維が強いからで、鬼でも縛れるというので「オニシバリ」の別名もあります。
正確には、「オニシバリ」と呼ばれるのは同じ仲間の南方系(福島県以西に分布)のもので、それと区別する意味で北海道のナニワズは「エゾオニシバリ」といい、「ナツボウズ」についても「エゾナツボウズ」という言い方をします。
果実は有毒ということですから、鳥や動物たちに食べられることを期待せず、ただ落ちるだけの「重力散布」ということでしょうか。
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クサギ2、開花から結実へ

2010年08月27日 | 日記
クサギは変わった樹木、個性的な植物です。
葉や茎の臭気と花の香気とのアンバランスもそうですし、対生する葉の葉柄の長さのアンバランスもそうです。
花の咲き方、実のつけ方はどうでしょうか。



クサギの開花です。
長い花筒の先で白い花冠が5裂して開きます。
雄しべ先熟で、開花したては写真の左側に見られるように、雄しべはピンと立て、雌しべはたたんでいます。
これが雄性期です。やがて雌性期を迎え、今度は逆に雄しべをたたんで、雌しべをピンと立てます。(写真の右側に見られます。)



クサギの果実です。
花の時期にはピンク色を帯びて閉じていた萼が、果期には星状に開いて紅紫色に染まります。
中央の果実は青紫色に熟し、その色と萼の紅紫色とのコントラストで野鳥を誘います。
こういうのを「2色効果」といいます。



クサギの冬芽です。
クサギのクマツヅラ科というのはあまりなじみがありませんが、可愛い実をつけるムラサキシキブもクマツヅラ科です。クマツヅラ科の植物はもともと南国系のようで、ムラサキシキブもクサギも、冬芽は裸芽です。
クサギは冬芽も個性的で、一度見たら忘れないようです。
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