井伊影男の植物観察

植物の生き方の不思議さ、彼らのたくましさ、したたかさに触れる。しかし、観察者が井伊加減男だからなあ。

種子散布5・風散布4

2013年11月30日 | 日記
風散布最大の特徴は広い範囲に散布されることである。風散布にもいろいろあって一概にはいえないが、中には海を越えて散布されるケースもあるという。

風散布で風によって運ばれるものは種子に限らず、果実あり、プラスアルファありで、それらを「散布体」と呼ぶ。その散布体、より遠く運んで欲しければ何よりも軽くなければならない。
軽いということは種子が小さくなくてはならない事を意味し、芽生えから成長するための栄養が少なく、定着率が低くなってしまう。その代わり種子の数を多くすることが出来る。



写真はドロノキの種子。ヤナギ科の樹木の果の中に綿毛のついた種子を沢山入れて風散布になる。
初夏にヤナギの種子が風にのって飛ぶのを「柳絮(りゅうじょ)」というが、中国ではヤナギ科の全てが「柳」なのではなく、柳はシダレヤナギのように葉の狭いグループをいい、ポプラのように葉の広いグループのことは「揚」と呼ぶ。それで、ドロノキなどの種子が飛ぶ場合は「揚絮(ようじょ)」という。

風散布の植物の生育地は、山火事跡や森林の伐採跡地などいわゆる「撹乱地」が多い。ヤナギ科ように種子の寿命が短いものの場合は水辺が多くなる。水辺以外に落ちた種子は芽生えることが出来ず死んでしまうという。
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種子散布4・風散布3

2013年11月29日 | 日記


アカバナの果実は果。ガガイモの袋果は1心皮で出来ていながら10cmほどになるが、アカバナの果は半分程の大きさしかないが複数の心皮からなる。
熟すと果皮が縦に裂けて綿毛を付けた種子が多数飛び出す。この綿毛、ガガイモと同じ種髪である。



ヤナギランの果。
果と中に収める綿毛を付けた種子の基本形はアカバナと同じ。アカバナは林縁に多いがヤナギランは草原で大群落をつくる。山火事跡や野焼きの跡地に大群落をつくるのでFire Weed(山火事跡に生える雑草)の名がある。そういう所謂「撹乱地」で大群落を作るということは、風散布で種子を撒き散らすだけでなく、種子に発芽のチャンスを待つ休眠性があると考えられる。一般に「埋土種子」といわれる。



ガマの果実。
ガマはガマ科ガマ属の多年草。茎頂に円柱形の花穂をつけ、上部が雄花序で下部が雌花序となる。
果実はソーセージ状になるが、小さな種子についた毛が折り畳まれて状態で圧縮されて多数ついている。
熟したものに触れるとその刺激でムクムクと綿毛がわき出す。
ガマの黄色い花粉には止血作用があり、これが因幡の白兎の伝説につながっている。
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種子散布3・風散布2

2013年11月28日 | 日記
タンポポの冠毛は萼の変化したものとされるが、冠毛でなくても果実や種子に多くの毛をもって風散布になるものも多い。



ガガイモ。
ガガイモは1cm程の小さめの花から10cmにもなる袋果を付け熟すと裂開して綿毛を付けた多くの種子を吐き出す。
タンポポの冠毛は萼が変化したものだが、ガガイモの綿毛は種皮が変化したもので「種髪(しゅはつ)」と呼ぶ。呼び方も由来も違うが、風に乗せて種子を運ぶ目的は同じである。
ガガイモの綿毛、昔は印肉や裁縫の針山に使われていたという。



イケマ。ガガイモ科で属は違うがガガイモの仲間。
鋸歯のない葉が対生し、雄しべと雌しべが合着して「蕊柱(ずいちゅう)」をつくり、葉や茎から白い乳液を含むなど、ガガイモと共通の性質を示すが、イケマは散形花序に多数の花を球状につける。
果実はガガイモよりずっとスリムだが袋果の形や綿毛をつけた種子などよく似ている。



ワタスゲ。
ワタスゲはカヤツリグサ科の花。
綿のように見える果実でよく知られているが、花を知る人は意外に少ない。
花は他のカヤツリグサの仲間同様目立たない。花後花披が綿状に変化して存在を強く主張する。
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種子散布2・風散布1

2013年11月27日 | 日記
種子を運んで貰うのに風を選んだ植物たち、種子を風に乗せる形をどのようにするかが問題となる。その答えの一つが種子に綿毛をつけ、これを落下傘にして風にのせることである。



セイヨウタンポポ。
セイヨウタンポポはキク科の花で多くの舌状花で頭花をつくる。その小花一つ一つの子房が果実になり、萼が冠毛になる。
タンポポのように冠毛をつけて風散布となるものキク科に多いが、冠毛の形で4タイプに分けられる。タンポポは冠毛と果実をつなぐ柄(果嘴・かし)があるタイプ、「タンポポ型」という。



ヨツバヒヨドリ。
同じくキク科でこちらは筒状花だけの花。果実に冠毛がつくのはタンポポと一緒だが、タンポポのような柄(果嘴)はなく冠毛は直接果実につく。「ノゲシ型」と呼ぶ。



コウゾリナ。
同じくキク科でタンポポと同じ舌状花のみの花。冠毛が果実につくのはノゲシ型と同じだが、冠毛がタンポポ型やノゲシ型では1本の毛が真直ぐのびているがコウゾリナでは羽毛状になる。これを「アザミ型」という。
以上の3型の他に、羽毛状の冠毛をもち、冠毛と種子をつなぐ柄(果嘴)のあるタイプがあるが、日本産の植物にはないという。
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種子散布1

2013年11月26日 | 日記
植物好きが野山で観察する野草や樹木と、田や畑で栽培される野菜などと、花を咲かせ種子をつくるという基本的な性質は全く一緒である。
最大の相違点は種子散布。野菜などの栽培種では種さえつくれば、その種をいつ、どこに、どんな風に蒔くかはすべてお百姓さん任せでいい。
ところが自然の中の植物たちはそういう訳にいかない。母植物の足元ではなく望ましい場所に種子を運びたいが自らは動けない。そこでいろんなものを利用して種子を運ぼうとする。これを「種子散布」という。

野菜など作物の場合は人間の都合によって品種改良が進められるが、自然の中では種を維持し子孫の繁栄のために種子散布についても進化させてきた。

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