井伊影男の植物観察

植物の生き方の不思議さ、彼らのたくましさ、したたかさに触れる。しかし、観察者が井伊加減男だからなあ。

北海道の樹木ウォッチング・ヤマグワ5

2021年07月31日 | 日記

ヤマグワの葉を食べるクワコ。クワ科クワ属。

クワと言えば養蚕を思い浮かべる。カイコはミツバチとともに人間が家畜化した昆虫。カイコは桑の葉(マグワ)を食べて繭をつくり、その繭から絹糸を採る。

クワコはカイコの原種と言われ北海道ではヤマグワの葉を食べる。カイコガ科の1種。

ヤマグワの擬態。

家畜化したカイコは成虫になっても飛べないが、野生のクワコは勿論飛べる。

飛ぶだけでなく、天敵から身を守るためにヤマグワの枝に化ける(擬態)。

クワコの繭。

北海道のクワコの幼虫はヤマグワの葉を食べて成長する。4齢~5齢で蛹になり繭をつくる。

野生なのでカイコのようなきれいな繭にはならない。

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北海道の樹木ウォッチング・ヤマグワ4

2021年07月30日 | 日記

ヤマグワの幼果実。クワ科クワ属。

両性花でも雌花(単性花)でも、花から果実への姿の変化は普通大きいものだが、ヤマグワの場合外形だけを見れば余り変化が感じられない。色は緑色。

ヤマグワの果実。

受粉後の雌花、子房を覆う花被片は肉質に膨らむ液果を作っていく。

多数の雌花の一つ一つが液果になって、液果の集合体をつくる。複数の花が複数の液果の塊りをつくるのを「くわ果」と呼ぶ。多数の花から一まとまりの果実になるので「多花果」ともいう。

キイチゴの場合は一つの花に多数の雌しべがあって、そこから多数の液果の集合体をつくる。これを「キイチゴ果」と呼ぶ。

ヤマグワのしいな。

受粉に失敗するなどして実の入らない果実となるのを「しいな(粃)」と呼ぶ。

雌雄異株というのは、自家受粉、近親交配を回避するという点ではより確実なシステムであるが、その代わり受粉に失敗するなど、種(子孫)を残せないリスクを負う。

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北海道の樹木ウォッチング・ヤマグワ3

2021年07月29日 | 日記

ヤマグワの芽ぶき。クワ科クワ属。

ヤマグワは芽ぶきと同時に開花する。雌雄異株でこちらは雄株。

ヤマグワには低木も多いが、低木には珍しい風媒花で、雄花の蕾が芽ぶきと同時に姿を見せる。

ヤマグワの雄花序。

新枝の葉腋から尾状花序を伸ばし、花粉を風に乗せて飛ばす。

ヤマグワの雌花序。

雌花序は球形~楕円形で裸数の雌花をつける。

一見、緑色の子房から先が2裂した花柱が伸び出しているように見えるが、緑色に見えているものは花被片で子房を包んでいる。花被片の間から花柱(先が2裂)を伸ばしている。

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北海道の樹木ウォッチング・ヤマグワ2

2021年07月28日 | 日記

ヤマグワの葉1。クワ科クワ属。

ヤマグワの葉、図鑑には「葉身は卵状広楕円形でしばしば深く3~5裂し、先は尾状に尖る」と紹介される。この写真の葉は裂け方が極端な方で、裂け方は様々である。

ただ、このような裂け方をする樹は北海道では他にないから、ヤマグワの裂けた葉を見て見誤る事は先ずない。

ヤマグワの葉2。

ヤマグワの葉にはこのように裂け目の入らないものもある。「ヤマグワの葉は裂け目がはいる」という先入観もあって、このような裂け目の入らない葉の場合、「さて何の葉だったっけ」と首を捻ることになり兼ねない。

ヤマグワの異形葉。

ヤマグワの葉には裂け目の入らないものから大きく裂け目のはいるものまで変異が大きい。

このように同一個体で形や大きさの異なる葉が生じるのを「異形葉性」という。

本州ではヒイラギやカクレミノ等の例があるが、北海道ではヤマグワの他にオヒョウ(ニレ科)がある。

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北海道の樹木ウォッチング・ヤマグワ1

2021年07月27日 | 日記

ヤマグワの冬芽。クワ科クワ属。

ヤマグワの冬芽は卵形~卵状楕円形で先はとがる。

芽鱗は托葉起源で栗褐色、縁は淡色になる。無毛で4枚が覆瓦状に重なる。葉痕は隆起して半円形、環状に並ぶ維管束痕が見える。

1年生枝は冬芽が2列互生についてジグザグになる。

ヤマグワの樹形。

樹高3~15mの落葉低木~高木と紹介される。環境に応じてサイズを変える友言える。

クワ科は亜熱帯~熱帯に多い樹、そんな中でヤマグワは耐寒性を獲得して最も北に進出した。

ヤマグワの樹皮。

ヤマグワの樹皮、平滑型から次第に縦筋が入るようになる。平滑型のときには褐色で横長の皮目が目立つ。本州にはイチジクや和紙の原料を採るコウゾなどのクワ科の仲間が見えられるが、北海道ではヤマグワのみ。ヤマグワも強い繊維をもっていて和紙の原料にもなるという。

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