井伊影男の植物観察

植物の生き方の不思議さ、彼らのたくましさ、したたかさに触れる。しかし、観察者が井伊加減男だからなあ。

北海道の花・エゾトリカブト3

2018年10月31日 | 日記


エゾトリカブトの種子。キンポウゲ科トリカブト属。
果実は袋果。熟すと先が開き、風の強いときに果穂が揺すられて翼のついた種子を風に乗せて飛ばす。
このような風散布のタイプを「振り出し型」と呼ぶ。



エゾトリカブトの葉。
葉は3深裂し、側小葉は更に2裂する。3出複葉またはその一歩手前とも言われる。
葉にも毒成分は含まれるが、毒成分の一番多いのは根。
「疑似1年草」といい、地上部が枯れ死ぬのにあわせて根茎も消失する。代わりに子根ができ、世代交代する。母根のことを「烏頭(うず)」といい、子根のことを「附子(ぶし)」という。狂言に出てくる毒(ぶす)はこの附子(ぶし)からきたものという。



近縁種の葉。
エゾトリカブトの葉の裂け方にも個体差があるが、大きく裂けるものは「エゾノホソバトリカブト」という別種とされる。北海道でも高山地帯に分布する。
エゾノホソバトリカブトの葉は5深裂し、裂片は深く欠刻し欠刻片は線状被針形となる。

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北海道の花・エゾトリカブト2

2018年10月30日 | 日記


エゾトリカブト、雄性期の花。キンポウゲ科トリカブト属。
開花したばかりの花には40本程の雄しべが見えていて雌しべは見られない。
雄しべが花粉をだす、雄花の働きをする「雄性期の花」である。雄しべが雌しべより先に機能するようになる「雄性先熟(ゆうせいせんじゅく)」という。



エゾトリカブト、雌性期の花。
花粉を出し終えた雄しべは枯れしぼみ、代わりに雌しべが伸び出し、柱頭を3裂させて他の花から運ばれる花粉を待つ。雌花の働きをする雌性期の花である。



エゾトリカブトの果実。
エゾトリカブトの果実は袋果。キンポウゲ科の果実はいろんな形をとるが、袋果をつくるのはサラシナショウマ。形は似ているが、エゾトリカブトの袋果はサラシナショウマより長い。


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北海道の花・エゾトリカブト1

2018年10月29日 | 日記


エゾトリカブト。キンポウゲ科トリカブト属。
トリカブトは毒草の代表的存在。ドクウツギ、ドクゼリと並んで「日本の三大有毒植物」と言われる。
「エゾトリカブトは世界最強の毒性を持つ」という。(「山に咲く花」:山と渓谷社)
変異が大きく、地方の名を冠したトリカブトが多く、北海道の代表がエゾトリカブトである。



エゾトリカブトの芽出し。
エゾトリカブトの芽出しは多くの場合赤みを帯びる。幼い葉を紫外線から守るUV対策と言われる。
エゾトリカブトの若葉と山菜として食べるニリンソウの若葉と良く似ていて、山菜時には誤食に対する注意が呼びかけられる。
見分けるポイント、エゾトリカブトの葉の中心部に赤みが残ることがあり、ニリンソウには蕾を持つ事が多い点。



エゾトリカブトの花序。
エゾトリカブトの花序、総状~総状散房状。
5枚の花弁状のものは萼片、後方の1片が大きく袋状で、雅楽の演奏者(伶人)のかぶる鳳凰の頭をかたどった冠に似ているところから「鳥兜(とりかぶと)」と呼ばれるようになったという。



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北海道の花・サワギキョウ2

2018年10月28日 | 日記


サワギキョウ、雄性期の花。キキョウ科ミゾカクシ属。
キキョウ科の花は殆どが放射相称であるが、サワギキョウのミゾガクシ属は左右相称。他の仲間では葯が離生するが、サワギキョウでは合着して筒をつくる。
花冠は濃紫色で唇形、上唇は2深裂で下唇は3深裂する。
雄しべ5個は、葯と花糸の上半分は合着して雌しべを包み、筒状になってその中に花粉を充満させる。
雄しべの先端に毛があり、昆虫がその毛に触れると内部から花粉を吐き出し、昆虫のからだに花粉をつける。雄花の働きをする「雄性期の花」。



サワギキョウ、雌性期の花。
雄性期で花粉を出し切ると、雌しべが伸び出して柱頭を開いて他の花から運ばれる花粉を待つ。雌花の働きをする、「雌性期の花」となる。
ミゾカクシ属の学名は「ロベリア」、仲間から多くの園芸種がつくられている。



サワギキョウの果実。
果実は蒴果、上部に5個の萼片が残る。
種子は卵形で散布のための特別な仕掛けはない。無散布+水散布で、何れにしても水辺からあまり離れようとはしない。サワギキョウの葉は冬を前に「草紅葉」となる。
サワギキョウには「ロベリン」というアルカロイドが含まれ、横溝正史の「悪魔の手まり唄」の中で「お庄屋殺しに」にサワギキョウが使われている。
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ハナミズキの実、見っけ

2018年10月27日 | 日記


ミスターXさんからコメントを頂き、果実をつけたハナミズキの存在をしりました。
ハナミズキはミズキ科ミズキ属の樹でアメリカ産。大正時代に東京市長がアメリカに桜の苗木を送り、その返礼として日本に贈られたのがこのハナミズキ、「日米親善の木」として知られる。
札幌周辺でも見かけるのだが個体数は少なく、植物園にもないし、森林総研の樹木園には看板だけで樹は枯れてしまっている。
札幌の気候に合わないのか、以前見かけた樹もいつの間にか消えていたり、花は何とか咲かせていた樹も全体に元気がなく果実をつけなくなっていたりする。
そんな訳で、ハナミズキの写真が撮れないでいて、どこかに実をつけたハナミズキの樹がないか、いろいろ聞いてまわったりした。

今年もハナミズキの実の写真は撮れない、9分9厘あきらめていたところへミスターXさんから「どこそこに実をつけたハナミズキがあるよ」とお知らせ頂いて、すぐさま出掛けた。
ありました。写真も撮ってきました。

ハナミズキはミズキ科ミズキ属で、同じ仲間にヤマボウシやサンシュユという樹がある。
花はヤマボウシに似ているが、果実は全く似ていない。ヤマボウシの果実が核果の集合果であるのに対して、ハナミズキは単一の核果。果実の様子はサンシュユの方に似ている。サンシュユの果実には果柄がるが、ハナミズキのそれには柄がない。
図鑑などで分っていることでも、自分の撮った写真がないのは残念至極。
そこへミスターXさんからの情報で、やっとハナミズキの実の写真が撮れました。
果実のそばには花芽も見えていて、来春には花のいい写真も撮れるのではと期待しています。

ミスターXさん、有難うございました。
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