フィギュアスケートのオフシーズンですが、選手はこの時期に基礎体力を向上させ、新たな振り付けによるプログラムを磨きます。ファンも新たなプログラムに期待しつつ、冬眠ならぬ夏眠を貪ります。でも寝ているだけでは寂しいので、フィギュアスケートの優雅さを分析して遊んでみましょう。
フィギュアスケートもスポーツですから、実際の選手は逞しいマッチョです。中学時代の真央ちゃんですら、肩幅が広くてウエイト・トレーニングをしていると分かります。僕は高校時代、何を血迷ったのか重量挙げ部(フライ級)にいたので、肩幅で鍛え方が分かるのです。重量挙げの選手は、実は垂直跳びが抜群で、僕でさえ80センチは楽に跳べました。フィギュアの三回転ジャンプを真似て床の上で跳んでいたのですが、スルツカヤさんも同じように床の上で跳んでトレーニングをしているんですよね。
高校までは力を入れるトレーニングをしていた僕ですが、芸大では反対に力を抜くことを教わりました。当時の芸大には、コンニャク体操で有名な野口三千三先生が居られ、一年生は全員コンニャク体操が課題だったのです。僕は、腰をグラインドさせる実技の時、余りに上手いので手本として指名されました。これは、中学の相撲と、高校の重量挙げの、腰を使うスポーツの成果なのです。それにしても、横綱貴乃花は腰の使い方が下手な力士でしたね。
それで、力を抜くことに興味を覚えた僕は、普段の歩き方も重心移動だけで歩くように訓練しました。ところが、この歩き方は江戸時代のナンバ歩きというものと、基本的に同じらしいのです。右手と右足を同時に前に出す、手足が同相になる歩き方です。一般の人の歩き方は、手足が反対に動く逆相の歩き方で、これはネジリ歩きと言うらしいですね。どうも、明治時代に軍隊の訓練で導入された歩き方が定着し、日本人の歩き方は180度変わってしまったのです。
ところで、コンニャク体操の時間には、手が三拍子、足が二拍子などという体操もやらされます。僕はコンニャク体操の応用で、二拍子と三拍子がクルクルと交差する独自の歩き方を開発しました。この歩き方は、人混みで縫うように歩くときに効果的です。ある時はナンバ歩き、またある時はネジリ歩き、これを瞬時に変えます。チャイコフスキーの五拍子のワルツ(交響曲第6番ロ短調作品74「悲愴」第2楽章)で踊る感じです。熟練すると、人にぶつかりそうな時は脚を交差するクロス・ステップで避けることも出来ます。このような歩き方は、端から見ると「(優雅に)揺れている」ように見えるそうです。
さて、僕の開発した「揺れる歩き方」は、実はフィギュア選手なら誰でも無意識で行っているものなのです。ただし、氷の上ではね。フィギュアスケートでも、スピードを乗せようとする時は、スピード・スケートの選手と同じように、手足が逆相になる一般的なスケーティングをします。けれど、複雑なステップの最中、回転に入る(出る)時、あるいはジャンプの前運動の瞬間などでは、手足が同相になる場面が多いのです。そして、手と足を同時に前に出す時、それは優雅で流れるようなポーズを獲得します。これが、フィギュアスケートがスポーツでありながら優雅でいられる秘密なのです。
フィギュアの世界では華奢に見える村主選手でさえ、バラエティ番組などで拝見するとスポーツ選手を感じさせます。そんなとき、普段から優雅な歩き方が出来たなら、氷上ではもっと優雅に見えるだろうなと思ってしまいます。氷上でのパフォーマンスは、実は日常という氷山の一角でしかないのです。さて、秋には新たなプログラムを披露してくれる選手たちの夢を見ながら、もう少し夏眠をしておきましょうか…。
エフライム工房 平御幸
フィギュアスケートもスポーツですから、実際の選手は逞しいマッチョです。中学時代の真央ちゃんですら、肩幅が広くてウエイト・トレーニングをしていると分かります。僕は高校時代、何を血迷ったのか重量挙げ部(フライ級)にいたので、肩幅で鍛え方が分かるのです。重量挙げの選手は、実は垂直跳びが抜群で、僕でさえ80センチは楽に跳べました。フィギュアの三回転ジャンプを真似て床の上で跳んでいたのですが、スルツカヤさんも同じように床の上で跳んでトレーニングをしているんですよね。
高校までは力を入れるトレーニングをしていた僕ですが、芸大では反対に力を抜くことを教わりました。当時の芸大には、コンニャク体操で有名な野口三千三先生が居られ、一年生は全員コンニャク体操が課題だったのです。僕は、腰をグラインドさせる実技の時、余りに上手いので手本として指名されました。これは、中学の相撲と、高校の重量挙げの、腰を使うスポーツの成果なのです。それにしても、横綱貴乃花は腰の使い方が下手な力士でしたね。
それで、力を抜くことに興味を覚えた僕は、普段の歩き方も重心移動だけで歩くように訓練しました。ところが、この歩き方は江戸時代のナンバ歩きというものと、基本的に同じらしいのです。右手と右足を同時に前に出す、手足が同相になる歩き方です。一般の人の歩き方は、手足が反対に動く逆相の歩き方で、これはネジリ歩きと言うらしいですね。どうも、明治時代に軍隊の訓練で導入された歩き方が定着し、日本人の歩き方は180度変わってしまったのです。
ところで、コンニャク体操の時間には、手が三拍子、足が二拍子などという体操もやらされます。僕はコンニャク体操の応用で、二拍子と三拍子がクルクルと交差する独自の歩き方を開発しました。この歩き方は、人混みで縫うように歩くときに効果的です。ある時はナンバ歩き、またある時はネジリ歩き、これを瞬時に変えます。チャイコフスキーの五拍子のワルツ(交響曲第6番ロ短調作品74「悲愴」第2楽章)で踊る感じです。熟練すると、人にぶつかりそうな時は脚を交差するクロス・ステップで避けることも出来ます。このような歩き方は、端から見ると「(優雅に)揺れている」ように見えるそうです。
さて、僕の開発した「揺れる歩き方」は、実はフィギュア選手なら誰でも無意識で行っているものなのです。ただし、氷の上ではね。フィギュアスケートでも、スピードを乗せようとする時は、スピード・スケートの選手と同じように、手足が逆相になる一般的なスケーティングをします。けれど、複雑なステップの最中、回転に入る(出る)時、あるいはジャンプの前運動の瞬間などでは、手足が同相になる場面が多いのです。そして、手と足を同時に前に出す時、それは優雅で流れるようなポーズを獲得します。これが、フィギュアスケートがスポーツでありながら優雅でいられる秘密なのです。
フィギュアの世界では華奢に見える村主選手でさえ、バラエティ番組などで拝見するとスポーツ選手を感じさせます。そんなとき、普段から優雅な歩き方が出来たなら、氷上ではもっと優雅に見えるだろうなと思ってしまいます。氷上でのパフォーマンスは、実は日常という氷山の一角でしかないのです。さて、秋には新たなプログラムを披露してくれる選手たちの夢を見ながら、もう少し夏眠をしておきましょうか…。
エフライム工房 平御幸