【別れの曲】

【名前の名前】

郷里静岡に帰省してしずてつジャストラインバスに乗ると、なぜか車内放送でショパンの『別れの曲』が流れている。乗客が自分一人しかいない北街道線に乗っていると寂しい気分になる。

2022/10/30
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近所の蕎麦屋さんが閉店されていた。前者は聴覚的な『別れの曲』、後者は心理的な『別れの曲』が聴こえている。

 

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【名前の名前】

【名前の名前】

なにかの名前を覚えても、そのなにかの内容を理解したことにはならない。名前がそのなにかの内容に合致することはあるけれど、名前だけを覚えて唱えても内容があらわれでることはない。

2022/10/21
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仏教では名は体を表す、名体不二(みょうたいふに)というけれど、漢字6文字自体から功徳があらわれでることはないだろう。6文字自体から功徳があらわれでることなどないと知りつつ唱えることに全神経を集中し尽くすことにありがたい状態はありえる。ありえるけれど、そのありがたい状態に功徳などという名前はない。

 

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【高神覚昇と友松円諦】

【高神覚昇と友松円諦】

高神覚昇(たかがみ・かくしょう 1894-1948)とともに真理運動をおこした友松円諦(ともまつ・えんたい 1895-1973)を読んでみたいと思い、検索したら『般若心経講話』大法輪閣が「良い」の状態で1円(送料350円)だったので、「こんな値段でいいのかな…」と思いつつ注文した。

2022/10/21
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高神も友松も仏教僧でありながら西洋哲学を学んだ人。高神が西田幾多郎の教え子だったことを知って『般若心経講義』を読んだらたいへん良かったので無料の電子書籍版とは別に角川の文庫本も買った。そして友松のほうも読みたくなった。

 

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【南側の窓】

【南側の窓】

交差点近くで長いこと仕舞た屋(しもたや)になっていた古い商家が取り壊されて更地になった。かつては都電が交差する乗り換え地点として賑わい、斜向かいの角には岩崎家の土地に三菱銀行があった。

2022/10/30
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大通りに面して北向きに商店は建ち、東西と南に接してビルができてからはまったく日の当たらない家屋だったのだろう。大通り側から解体が進み左右と奥の壁だけを残す状態になったら、南に面した二階に大きな窓があって木製の手摺りが付いているのが見えた。

かつて店舗裏手には庭か平屋建ての隣家があって、日当たりの良い南面に大きく開口した窓のある、住み良い家だったのだろう。懐かしい最後の家並みが消えた。

 

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【朝の不正解】

【朝の不正解】

朝刊第一面のクイズに、江戸時代からある日本最古の地図記号は何かと書いてある。そりゃあ神社の鳥居か寺の️卍だろう、と思って答えを紙面に探したらなんと温泉マークだという。

この夏、『季刊清水』の取材で柏尾の光福寺を訪ねたら、江戸時代にあった梅ヶ谷村との水をめぐる争い(「川論」)に対する判決文として下された絵地図を見せていただいた。

2022/06/13 清水区柏尾にて
DATA : Nikon COOLPIX P7800

日本初の温泉マークは群馬県の村で起きた土地争いに対する評決文「上野国碓氷郡上磯部村と中野谷村就野論裁断之覚」に添えられた絵地図にある磯部温泉を示す絵記号であり、明治につくられた測量を元にした地形図以前のプリミティブな例が江戸時代にあるということだ。

初めて見る外国人観光客にはお好み焼き屋の所在を示しているように見えるかもしれない現在の温泉マークに比べて、プリミティブな最古のマークは湯気が長くて、深海に潜っていくクラゲのように見える。

 

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【認識の認識】

【認識の認識】

パソコンやスマホの新機能情報にはひどく疎くなっている。疎くても自分に必要な機能は使っているうちに自然に気づくだろう、それでいいやと思っている。そして自然に気づいて数年遅れでびっくりしている。

昨日も自分の日記【ペンギン辞典】に英英辞書のスクリーンキャプチャを貼り付け、ウェブブラウザの Safari で確認していたら、 PING 形式の画像データ内の文字がテキストとして選択できるようになっているので驚いた。

2022/10/26
DATA : PENTAX Optio RZ10 1 : 1 format

なんと画像内の文字をテキストに変換して取り出せる OCR 機能がついていたのだ。試しに仕事の原稿を写真にとって Safari で開いてやったら日本語もちゃんと読み取れるのでびっくりした。季刊清水の表紙写真もこんなふうに選択できて「Quartely SHIMIZU 清水」とコピーできる。

「テキスト認識表示」という機能でだいぶ前から実装されていたらしい。「やや、これは便利だ!」といまさらながらに喜んでいる。

 

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【ペンギン辞典】

【ペンギン辞典】

いま読んでいる本の著者が『ペンギン心理学事典』や『ペンギン哲学事典』を引いている。たぶんペンギン・ブックス(Penguin Books)にそういう辞書シリーズがあり、米国で研修医をされていたので英語で書かれた辞書を難なく読みこなすのだろう。

2022/10/25
DATA : PENTAX Optio RZ18 1 : 1 format

舶来の学問には先人が苦労してつけた漢字訳がついていて、それが災いして意味不明や誤解のもとになっていることが多い。そういうとき英英辞書を引くと良いと高校時代に教わったのでときどきヨタヨタと引いている。

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【エビデンス】

【エビデンス】

レガシーというカタカナことばの使われ方にうんざりしている。レガシーには正と負、両方の意味がある。同じようにうんざりするカタカナことばであるエビデンスは高校時代「海老で(ん)すという証拠を示せ」などと覚えた。

2022/10/23
DATA : PENTAX Optio RZ18 1 : 1 format

医学におけるエビデンスの説明などご都合主義的なものなので騙されてはいけない。という主張を可視化したグラフデータで説いている本を読んだ。エビデンスによるエピデンス批判。なんだかなあである。そもそもことばで示せないことの証拠を示すもの、というエピデンスに無理がある。

海老ですと海老の絵を描くエビデンス

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【ケリをつける】

【ケリをつける】

昔の青春活劇などを観ると石原裕次郎や小林旭が
「今夜こそケリをつけてやるぜ!」
などと啖呵を切るシーンがある。

ちょっと年下の医師が書いた本を読んでいたら、健康長寿至上主義の人生観に「ケリをつけてもいい年齢」という表現があって上手いことを言うものだと思う。

2022/10/24
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このケリをつけるの「ケリ」って何だろうとふと思って辞書を引くと思いがけないことがこともなげに書いてある。こんなことは誰でも常識的に知ってるんだろうかと驚いたので
「ケリをつけるのケリって何だと思う?」
と妻に聞いたら
「一発蹴りを入れるの蹴り」
と言うので安心した。
デジタル大辞泉にはこう書かれていた。

けり[名]
《和歌・俳句などに助動詞「けり」で終わるものの多いところから》物事の終わり。結末。決着。

意表を突かれて驚きにけり。

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【午後三時の嘆息】

【午後三時の嘆息】

このところ肌寒いので、毎日午後三時が近づくと牛乳を使った甘いホットドリンクをつくっている。温かい飲み物が嬉しい季節になり、喉を通っていくとき「あ〜〜おいしい」と声が出る。

「今日は暖かい抹茶オレです」と言って妻の机脇にホット抹茶オレ置く。カップを取り上げてひと口飲んだので「あ〜〜おいしい」という声が聞けるかと思ったら、「あ〜〜むずかしい」と言う。いまやっている作業に夢中なのである

2022/10/24
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人は「あ〜〜」につづく感想として、「むずかしい」とか「どうしよう」とか「こまった」とか「かなしい」とか「はらがたつ」など自分のこころを満たしているその場の感情が「おいしい」という感謝のかわりに出る。

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【うわのそら】

【うわのそら】

文字を読む人間には「読む」と「読みながら考える」という異なる状態がある。「聴く」と「聴きながら考える」ともいえる。

聴き上手に向かって話すと相手に引き込まれそうな「空(くう)」を感じ、人の話を聴きながら今にも話し出しそうな相手には噴出してくる「色(しき)」を感じる。

「読む・聴く」と「考える(言う)」を切り分けて同時にふたつのことが生起しないようにする工夫がたいせつだ。同時にふたつあるから囚われが生じる。その囚われが「うわのそら」だ。

2022/10/22
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「読む・聴く」と「考える(言う)」を切り分けて別別にすることがたいせつだ。読むなら一心に読む、聴くなら一心に聴く、観るなら一心に観る、それから考えて言う。「うわのそら」になりがちな読書についてそんなことを考えた。

舎利子みよ空即是色花ざかり(小笠原長生)

としごとにさくや吉野のさくら花樹をわりてみよ花のありかを(一休)

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【思わぬ解説】

【思わぬ解説】

文庫本には巻末に「解説」がついていることが多い。読み終えたら意外な人の解説つきで驚くことがある。著名人の感想が聞けるとは思ってもみなかったので嬉しい。

思いがけない得をしたと喜んで読んでみたら、会って話したこともないこの著者とは歳も近いし研究分野も近いし考えも違うので、文庫化される前の原本出版当時に会って討論してみたかったと書いてある。

2022/10/22
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本の中身自体は真綿でやんわり包んで「あとがき」の文字数内に収まるようぎゅっと圧がかかっている。理系でも文系でも、学者が書くあとがきは提灯記事になっていない正直なものが偶にあり、依頼した出版社も載せないわけに行かないので思わぬ拾い物になっている。

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【石枕】

【石枕】

海辺でごろごろしながら考えた。
智に働けば腹が立つ。情に棹させば泥沼だ。意地を通せば居場所がない。高校時代は深夜に家を出て港の岸壁まで自転車を走らせ、コンクリートの防波堤の上で仰向けになって夜明けまで寝た。

清水区新港町(1971)

テトラポッドの間から聞こえるチャポンチャポンという波音が子守唄のようで気持ちいい。持って出たタオルを小さくたたんで後頭部の下に敷くと石の枕でも痛くないので便利だった。

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【抜苦与楽】

【抜苦与楽】

すべての人の苦しみを救いたいと願うこころを抜苦(ばっく)、すべての人にほんとうの楽しみを与えたいと願うきもちを与楽(よらく)という。人が悟りの智慧を得て利己を離れたとき、その先にある大きな利他的悲願について書かれたものを読んで、そうか、与楽ってそういうことかと田端の与楽寺を思い出した。

与楽寺は、東京都北区田端1丁目にある真言宗の寺で、寺伝によれば弘法大師空海によって創建され、本尊の地蔵菩薩は弘法大師作と伝えられている。

駒込駅北口から谷田川通りを東に歩き、矢田橋交差点を過ぎ、都民生協を右に見て東京毎日新聞店向かいあたりの路地を左に入ると与楽寺前の閑静な道に出る。その道を北上すると右手に与楽寺があり、そのまま進むと坂道となって坂の名を与楽寺坂という。

1986 年、矢田橋交差点にて

この坂下あたりに総理大臣若槻礼次郎や渋沢栄一が贔屓にした宮崎直次郎の会席料理天然自笑軒があった。この直次郎の娘が芥川龍之介の義弟に嫁ぎ、直次郎が芥川家に斡旋した坂上の土地が田端四三五番地で、あの芥川龍之介終焉の地になる。

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【虚往実帰】

【虚往実帰】

他人の家を訪問するときは腹を空かせて行く、そうすればどんなものでもうまい。虚(きょ)にして往(ゆ)いて実にして帰るという意味で虚往実帰(きょじゅうじっき)というのだそうだ。出典は荘子にあるらしいのだけれど味わうとこれは深い。

六義園正門前から丹沢越しに富士山が見える季節になった。
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本来は、師の教えを授かりたければ心を空っぽにして乞えということだという。だけど心を空っぽにしたってわからない教えは入らない。「たいしたものもありませんが」と言われて「おいしいです」と本心から言えるためには、こころがけ(空腹)によって本心をつくれと言っている。後者の解釈がいい。すぐに役立つ。

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