夕焼けはやはりかなしみ 港裏墓山の墓碑に吹き続ける風
〈三月は〉とふ書きかけ紙片の数多ありき イースト・コーカーの古き屋敷に
詩人の詩稿には〈四月は残酷な月〉と書かれあり 三百四枚目の紙片の上に
詩人の手形はガラスケースの中にあり 長身で掌の大きなひと
時折ステッキ手に港辺りを歩きしとふ その老人の寂しき横顔
幾ら書いても戦争を止めさせられなかつた 言霊を深く信じてゐたも
為政者は結局私の詩を一篇すら読んでゐなかつた あるいは憲法すらも
しかしやはり願つてしまふのです 私の一篇の詩を為政者らが口遊む日を
今日4月1日は、父方曾祖父155歳の誕生日。命日が1929年3月6日で、今年は亡くなってから95年目に当たったから、改めて計算してみて、そうか、還暦60歳誕生日目前、その26日前に享年59歳で亡くなったのか、としみじみ思った。この曾祖父がいなかったら今の自分の命や存在はなかった。ひいおじいさん、お誕生日おめでとうございます!と心のうちで思い、空に向かって手を合わせた。